[PI-7-3] ポスター:発達障害 7筆記具の把持形態が書字や描画にもたらす影響に関する文献研究
【背景及び目的】
書字や描画は,筋骨格系や認知機能らを要する高度な作業であり,鉛筆などの道具を用いる技能も必要とされる.現在,書字や描画に関しては,読みやすさ,正確性,筆圧,速度などの評価指標が用いられ,多角的な視点から先行研究が蓄積されつつある.一方で,鉛筆などの持ち方においては,Dynamic tripod graspが最適な把持形態であるとされているが,近年は,Dynamic quadrupod graspなどの他の把持形態も同等の機能レベルを有しているとの主張が強められている.しかし,把持形態については,それぞれの段階に応じて変化させることで,筆記や描画パフォーマンスの向上に期待できるとされるも,把持形態ではなく,速度や文字形成に焦点を当てるべきであるとの見解もあり,整合性に欠けている部分がある.これらから,本研究は,筆記具の把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した知見を整理し,今後の作業療法場面における書字支援の際の一助として寄与することを目的とした.
【方法】
PubMedと医中誌Webを用いた.検索日時は2022年1月31日,検索期間は指定せず,キーワードは「handwriting OR drawing」「pen OR pencil」「grip OR grasp」を組み合わせて検索した.なお,医中誌Webでは,日本語訳したキーワードを用いた.選定条件は,把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した具体的な記載のある文献を抽出し.内容が不十分であると判断された文献,会議録,解説,特集等を含む文献は除外とした.
【結果】
PubMedでは67件,医中誌Webは29件が該当した.そのうち,選定条件を満たす計8件を分析対象とした.対象となった論文は全て海外論文であり,年代別では,2001年が1件,2003年が1件,2009年が1件,2012年が2件,2013年が1件,2021年が2件であり,職種で分類すると,作業療法士が5件と多かった.対象者においては,弱視児と定型発達児の比較が1件,脳性麻痺児と定型発達児の比較が1件,4年生の定型発達児が5件,大学生が1件であった.把持形態は,Dynamic tripod grasp ,Lateral tripod grasp,Dynamic quadrupod grasp,Lateral quadrupod graspの4種類から比較している研究が最も多かった.また,評価機器としては,ミネソタ書字動作評価(MHA),子どもの書字動作評価尺度(CHES)などが用いられつつ,タブレット等が使用されていた.把持形態別に関しては,診断問わず,読みやすさ,筆圧,速度の有意差はないとのことであった.しかし,大きな違いは見られなかったが,傾向として,最も読みやすかったのはDynamic tripod graspであり,次いで,Dynamic quadrupod graspとLateral tripod grasp,最後にLateral quadrupod graspの順であったとの報告があった.また,ストローク時間は,把持形態によって有意差がみられたとの報告があった.
【考察】
本研究では,文献研究から,筆記具の把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した.対象は全て海外論文であり,筆圧や速度は有意差がみられなかったものの,把持形態別によりストローク時間の相違を認め,Dynamic tripod graspが最も読みやすいとの傾向がみられた.これらは,作業療法士による書字支援の際に有用な知見であり,今後もさらに検討する必要性があると考える.また,把持形態に関しては,Dynamic tripod grasp ,Lateral tripod grasp,Dynamic quadrupod grasp,Lateral quadrupod graspの4種類の研究が多く,鉛筆の先端を持つ形態などの特異的な把持形態に関する研究は行われていなかった. 作業療法の臨床場面では,特異的な筆記具の持ち方が観察されることも多く,作業療法士は把持形態に対する指導も実践している.これらから,今後の課題としては,特異的な形態を含む把持形態の影響について実証研究が必要であると考える.
書字や描画は,筋骨格系や認知機能らを要する高度な作業であり,鉛筆などの道具を用いる技能も必要とされる.現在,書字や描画に関しては,読みやすさ,正確性,筆圧,速度などの評価指標が用いられ,多角的な視点から先行研究が蓄積されつつある.一方で,鉛筆などの持ち方においては,Dynamic tripod graspが最適な把持形態であるとされているが,近年は,Dynamic quadrupod graspなどの他の把持形態も同等の機能レベルを有しているとの主張が強められている.しかし,把持形態については,それぞれの段階に応じて変化させることで,筆記や描画パフォーマンスの向上に期待できるとされるも,把持形態ではなく,速度や文字形成に焦点を当てるべきであるとの見解もあり,整合性に欠けている部分がある.これらから,本研究は,筆記具の把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した知見を整理し,今後の作業療法場面における書字支援の際の一助として寄与することを目的とした.
【方法】
PubMedと医中誌Webを用いた.検索日時は2022年1月31日,検索期間は指定せず,キーワードは「handwriting OR drawing」「pen OR pencil」「grip OR grasp」を組み合わせて検索した.なお,医中誌Webでは,日本語訳したキーワードを用いた.選定条件は,把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した具体的な記載のある文献を抽出し.内容が不十分であると判断された文献,会議録,解説,特集等を含む文献は除外とした.
【結果】
PubMedでは67件,医中誌Webは29件が該当した.そのうち,選定条件を満たす計8件を分析対象とした.対象となった論文は全て海外論文であり,年代別では,2001年が1件,2003年が1件,2009年が1件,2012年が2件,2013年が1件,2021年が2件であり,職種で分類すると,作業療法士が5件と多かった.対象者においては,弱視児と定型発達児の比較が1件,脳性麻痺児と定型発達児の比較が1件,4年生の定型発達児が5件,大学生が1件であった.把持形態は,Dynamic tripod grasp ,Lateral tripod grasp,Dynamic quadrupod grasp,Lateral quadrupod graspの4種類から比較している研究が最も多かった.また,評価機器としては,ミネソタ書字動作評価(MHA),子どもの書字動作評価尺度(CHES)などが用いられつつ,タブレット等が使用されていた.把持形態別に関しては,診断問わず,読みやすさ,筆圧,速度の有意差はないとのことであった.しかし,大きな違いは見られなかったが,傾向として,最も読みやすかったのはDynamic tripod graspであり,次いで,Dynamic quadrupod graspとLateral tripod grasp,最後にLateral quadrupod graspの順であったとの報告があった.また,ストローク時間は,把持形態によって有意差がみられたとの報告があった.
【考察】
本研究では,文献研究から,筆記具の把持形態が手書きパフォーマンスへもたらす影響について検討した.対象は全て海外論文であり,筆圧や速度は有意差がみられなかったものの,把持形態別によりストローク時間の相違を認め,Dynamic tripod graspが最も読みやすいとの傾向がみられた.これらは,作業療法士による書字支援の際に有用な知見であり,今後もさらに検討する必要性があると考える.また,把持形態に関しては,Dynamic tripod grasp ,Lateral tripod grasp,Dynamic quadrupod grasp,Lateral quadrupod graspの4種類の研究が多く,鉛筆の先端を持つ形態などの特異的な把持形態に関する研究は行われていなかった. 作業療法の臨床場面では,特異的な筆記具の持ち方が観察されることも多く,作業療法士は把持形態に対する指導も実践している.これらから,今後の課題としては,特異的な形態を含む把持形態の影響について実証研究が必要であると考える.