第56回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-7] ポスター:発達障害 7

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 2:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PI-7-4] ポスター:発達障害 7小学国語書写科で使用される教科書で示されている姿勢および鉛筆・毛筆の把持形態の特徴について

笹田 哲1 (1神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科)

【はじめに】
小学校通常学級に巡回訪問して,書字動作が苦手な児童について個別相談(字を書いているときの姿勢,鉛筆の持ち方の相談)や指導をしている.書字の学習の教科に,国語書写の教科が,小学校では全学年で指導されている.学習時には学年を問わず様々な学用品を使用する.発達性強調運動障害がある児童にとっては,不器用さから学習の意欲に影響を与える可能性がある.そこで本研究の目的は,小学書写教科書に焦点をあて,1年生から6年生まで,鉛筆・毛筆の持ち方についての指導,字を書くときに姿勢について,どのように教示されているのか,教科書によって差異があるのかなどを明らかにし,今後の通常学級担任教師に対する書字動作の支援について考慮すべき点を検討した.
【方法】
文部科学省の教科書検定に合格した教科書を対象とした.出版社は6社で,教育出版,学校図書,光村図書,東京書籍,日本文教出版,三省堂であった.1年生から6年生までの合計36冊であった.分析方法は,鉛筆の持ち方,姿勢,毛筆の持ち方,姿勢に焦点をあて,エクセルに入力し表にまとめ,その後各項目について特徴を分析した.
【結果】
出版社6社を対象に分析した結果,鉛筆(硬筆)の持ち方は,全社で統一されていなかった.姿勢についても同様の結果であり各社で独自で検討されていた.姿勢では,1,2年生の教科書では「よい姿勢のあいことば」と称し,全社で「ぐう」「ぺた」「ぴん」「とん」のようにオノマトペを活用して指導していた.姿勢に関する写真・イラストはすべてよい姿勢であり,誤った姿勢の提示や指摘はされておらず,見本の姿勢をとることの意義や必要性についても述べられている出版社はほとんどなかった.鉛筆の持ち方で,拇指と示指の間のウエブスペースには,全社で丸印が記載されていた.左利きの写真を示しているものはなかった.次に習字,毛筆での姿勢についても,硬筆同様,写真やイラストで示されていたが,統一された姿勢ではなかった.毛筆の持ち方も同様の結果であった.また床で書く場合の写真は全社で掲載されていたが,小さくて児童には見づらいサイズであった.全社で用具の使用説明と片付け方が「はじめの学習,準備,学習の前に」「用具の置き方」という文言で写真を用いて掲載があったが詳しい説明はなかった.
【考察】
文部科学省の教科書検定に合格した6社,小学書写科の教科書36冊(1年から6年まで)を対象に分析を行った.姿勢については,「よい姿勢」として,背筋を伸ばすことを強調していたが,よい姿勢がどうして必要なのか,説明はなかった.また持ち方についても,ウエブスペースの部分に丸印を強調した色彩で示していたが,これについても,何故なのか説明は見られなかった.小学校に訪問に授業参加するが,学習場面は教科書にもとに授業が行われている.教室の黒板等に,姿勢や持ち方の写真・イラストが掲示され,教師が児童にこれを見せて,姿勢や持ち方を指導している場面を見かける.教師との面談の際に,よい姿勢を保たなければならない理由や動的3指握りのメカニズムについても,可能な限り時間をかけて,教師が理解できるように解説することが必要である.担任教師だけでなく,校内全体に働きかけていく方法も今後検討していくことが必要ではないかと考えられた.