[PI-8] ポスター：発達障害 8

[PI-8-2] ポスター：発達障害 8日本の作業療法における発達障害者に対する就労支援に関する文献的検討

^○倉本 由伽¹井村 亘²大西 正裕²大森 大輔³ (1株式会社 三葉COMPASS発達支援センター 丸亀Link,2玉野総合医療専門学校作業療法学科,3医療法人紀典会　北川病院作業療法科)

【序論】近年，障害者の就労支援体制は，雇用施策や福祉施策ともに進展しており，障害者の民間企業への雇用率や就労系福祉サービスの利用率は，上昇傾向にある.また，発達障害も含まれる精神障害者の就労系福祉サービスの利用割合は，年々増加傾向にある．さらには，平成30年に就労移行支援における「福祉専門職員配置等加算」，令和3年に就労継続支援Ａ型,Ｂ型においても「福祉専門職員配置等加算」に算定される有資格者に,作業療法士が追加されるなど,発達障害者に対する就労支援に作業療法士の参入が期待されている．しかし，発達障害者の就労支援に対する作業療法の現状は明らかとなっておらず，今後取り組むべき課題も明確ではない．
【目的】本研究は，発達障害者の就労支援に関する今後の作業療法の取り組みに対する知見を得ることをねらいとし，文献的検討により,日本の作業療法における発達障害者の就労支援に関する現状と課題を明らかとすることを目的とした．
【方法】文献検索エンジンは，CiNii Articlesを用い，令和４年１月31日に実施した．検索語および演算子は，作業療法AND（発達障害　OR　自閉症スペクトラム　OR　注意欠陥多動性障害　OR　学習障害）AND（就労　OR　就労支援）とした．なお，網羅的に文献を検索する目的から,検索期間は設けなかった．文献の包含基準は，日本の作業療法に関する内容である，作業療法士が発達障害者の就労支援に関わっている文献である，学術誌か大学紀要に掲載されている文献であるの3つとした．文献の除外基準は，文献種が,解説，事例報告，会議録，特集であるとした．包含基準を満たし,除外基準に抵触していない文献が,採択基準を満たした文献とした．なお，本研究は文献的研究であり，人を対象とする研究には該当しない．開示すべきCOI 関係にある企業等はない．
【結果】CiNii Articles で選出された文献は,15件であったが,上記の採択基準を満たした文献は0件であった．除外理由の内訳としては，学術雑誌における特集が13件，事例報告が2件であった．
【考察】本研究の結果から，日本の作業療法における発達障害者に対する就労支援に関する研究論文は皆無であることが明らかとなった．この結果は，日本の作業療法における発達障害者に対する就労支援に関して，学術的な検討が十分に成されていないことを意味している．しかし，本研究における文献検索の除外理由の内訳をみると学術誌における特集が13件，事例報告が2件あり，作業療法の発達障害者に対する就労支援に関して，日本の作業療法士の関心が低くはないことを窺い知ることができる．今後は，発達障害者の就労支援に対する作業療法士の専門性の確立のために，作業療法の効果等の実証的な検討が重要であろう．