第56回日本作業療法学会

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ポスター

発達障害

[PI-8] ポスター:発達障害 8

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PI-8-4] ポスター:発達障害 8肢体不自由児の作業療法目標の質とその傾向

SMART-GEMを用いた後方視的調査

吉田 尚樹1三屋 邦明1強口 朋美1工藤 大弥1友利 幸之介2 (1千葉県千葉リハビリテーションセンターリハビリテーション治療局リハビリテーション治療部小児療法室作業療法科,2東京工科大学医療保健学部リハビリテーション学科作業療法学専攻)

【はじめに】近年,クライエント中心や作業に焦点を当てた実践といった個別性の高い作業療法実践が普及し,目標設定に対する注目度が高まりつつある.目標設定の質を評価するツールとして,Bowman らが2015年に開発したSMART-Goal Evaluation Method (SMART-GEM)がある.これはSMARTの頭文字(Specific: 具体的,Measurable: 測定可能,Activity-based: 活動ベース,Review: 再評価,Time-frame: 時間的枠組み)で構成される8項目,8点満点のスケールである.本研究では,肢体不自由児の作業療法目標の質と傾向を把握するために,SMART-GEMを用いて分析を試みたので報告する.なおSMART-GEMは原作者に許可を得て翻訳した.
【方法】本研究のデザインはカルテから情報収集する後方視的調査であり,当センターの倫理審査委員会の承認を得た上で実施した.対象は2020年4月~2021年10月に初回外来作業療法を受けた0歳~18歳以下の肢体不自由児とし,初回作業療法評価報告書に記載されている作業療法目標および対象者の年齢,性別,診断名,Barthel Index (BI) を収集した.作業療法目標は,SMART-GEMにて上記5領域の下位項目を「はい: 1点」か「いいえ: 0点」で評価し,合計点数に応じ「優れた目標: A」~「不十分な目標: D」の4段階で目標設定の質を評価した.また小児版ICF(ICF-CY)の分類に沿い,目標を第1レベルまで分類した.
【結果】対象者数95名,平均年齢4.46±3.60歳.男児47名,女児48名であった.主な疾患は脳性麻痺36名 (37.9%),運動発達遅滞21名 (22.1%),染色体異常13名 (13.7%),脳炎・急性脳症4名 (4.2%).BIは平均37.3±31.0点.総目標数は213件であり,SMART-GEMによるグレードは全てD判定であった.各項目の加点割合は,Specific (観察可能な視点: 24.4%,必要な条件: 39.0%,文脈や場所: 1.9%),Measurable (達成度の測定: 39.0%,具体性: 0.9%),Activity-based: 26.8%,Review: 1.4%,Time-frame: 100%,であった.ICY-CYの構成要素の分類は,心身機能21件 (9.9%),身体構造1件 (0.5%),活動と参加177件 (83.1%),環境因子8件 (3.8%),不明6件 (2.8%).第1レベル分類は,精神機能3件 (1.4%),感覚機能と痛み4件 (1.9%),音声と発話の機能 1件 (0.5%),消化器系・代謝系・内分泌系の機能 3件 (1.4%),神経筋骨格と運動に関連する機能9件 (4.2%),音声と発話に関わる横造1件 (0.5%),学習と知識の応用15件 (7.0%),一般的な課題と要求4件 (1.9%),コミュニケーション2件 (0.9%),運動・移動69件 (32.4%),セルフケア52件 (24.4%),主要な生活領域33件 (15.5%),製品と用具6件 (2.8%),サービス・制度・政策2件 (0,9%),不明9件 (4.2%)であった.
【考察】肢体不自由児の作業療法目標をSMART-GEMで評価した結果,全件でD判定 (不十分)となった.これは,どこで作業を行うのか場所や遂行文脈の特定,目標を数値化して測定可能にすること,目標再評価時の段階づけ,の項目が0.5〜2%と極めて低く,特に改善を要することが分かった.ICY-CYの分類では,活動と参加の目標が83%ではあったが,内訳は上肢操作や姿勢調整など運動・移動が32%を占めた.実際SMART-GEMでもActivity-basedが27%,Specificの2項目が24〜37%であり,作業療法目標の約70%程度は,具体的な作業レベルとは言い難い目標であったことが示唆される.また興味深い点として,Time-frameは100%記載があった.これは報告書の書式に目標達成の期限が組み込まれていたからであり,これはつまり他の項目でも書式を工夫することで意識付けを行い,目標設定の質を高められる可能性が示唆される.