[PI-8-6] ポスター:発達障害 8多施設連携により他害の減少が得られた自閉症スペクトラム症児の一事例
【序論】強度行動障害は健康への加害度が著しく(岩崎2016),地域生活継続の阻害因子となる(水流2014)ことから,その対応が重要視される.強度行動障害児者への支援は応用行動分析の有効性が報告される一方,単一施設への介入が多く多施設連携による報告は少ない.今回,昼夜逆転,他害の著しい自閉症スペクトラム障害(以下,ASD)児に対し,多施設で対応を共有し支援を行ったところ問題行動の改善を認めた.本報告では強度行動障害児に対する多施設連携の効果について考察を交え報告する.本報告は母の同意を得ている.
【事例】特別支援学校に所属する7歳8ヶ月男児.ASD.両親,祖母の4人暮らし.在胎41週,3066gで出生.1歳後半から通園利用.5歳9ヶ月時,転居に伴い当院受診.理学療法(以下,PT),作業療法(以下,OT),言語聴覚療法(以下,ST)開始.パズルや人との関わりが好き.会話は一方的で多弁.こだわり,多動傾向あり.新版K式発達検査:DQ42.
【初期評価】7歳8ヶ月時(X日)緊急事態宣言終了に伴い外来リハビリテーション再開.母より以下を聴取.週3,4日の頻度でAM1時頃に覚醒する.「遊ぼう」と述べ,夜通し母の髪を引っ張る,殴る,蹴る,父の目を突こうとする,放尿,弄便を繰り返す.朝まで寝ないこともある.構って欲しくてやっている.身体制止では止まらず母が児をつねり収める形になる.味に敏感で服薬しない,とのこと.涙を流し「強く叩いてしまいました」,「いつか殺してしまうという不安があります」と仰る.強度行動障害判定基準表:31点.週5回通学,放課後等デイサービス利用.母のストレスが著しく緊急性が高い状況.小児発達外来受診希望あり.多職種で情報共有し支援を進める形で合意.
【経過】医師:基本方針として暴力は笑顔で穏やかに制止する,楽しい時間を提供することを提案.PT:親子で関わる機会として一本橋渡りを提案.自宅で継続的に取り組む.ST:課題や予定の視覚提示,目に見える物が無くなり課題終了となる設定が理解に繋がることを評価.OT:課題の区切り毎にハイタッチをして褒める,拭き掃除等の手伝いを通して人と関わり,感謝される機会を設けることを提案.母より上記を学校,施設に伝達.学校へはOTからも情報提供した.平日帰宅後には児と母でパズルを行い,休日には家族で外出する様になった.サービス担当者会議にて,施設より,暴力へは基本方針に基づく対応を心がけていること,おやつや手洗い前の他児への声かけ,検温,拭き掃除等の手伝いを喜んで行っている,との報告あり.
【結果】X日+3ヶ月,母より,夜眠るようになった,週1回程祖母を軽く押すことがあるが単発で済む,優しく注意する効果を感じている,との話あり.強度行動障害判定基準表4点.カナダ作業遂行測定:暴力を振るわず夜眠ることができる(重要度10,遂行度8,満足度9).
【考察】問題行動の多くは,要求,注目,回避等の機能を有するとされ,また周囲との相互作用による学習結果であると考えられており,環境により増減する可能性が指摘されている(全日本手をつなぐ育成会2013).本児にとって夜間覚醒,他害は,母と共に過ごすという機能を有していたと考えられる.原因を推定し,成功例と共に具体的対応を共有したことが関係者の協力を促し,他者と楽しく遊びたいという児のニーズを満たす機会,適応行動の学習機会増加に繋がり,問題行動改善の一助になった.強度行動障害児支援における多施設連携は,原因の推定,対応の共有と併用することで問題行動改善の一助となる可能性が示唆された.
【事例】特別支援学校に所属する7歳8ヶ月男児.ASD.両親,祖母の4人暮らし.在胎41週,3066gで出生.1歳後半から通園利用.5歳9ヶ月時,転居に伴い当院受診.理学療法(以下,PT),作業療法(以下,OT),言語聴覚療法(以下,ST)開始.パズルや人との関わりが好き.会話は一方的で多弁.こだわり,多動傾向あり.新版K式発達検査:DQ42.
【初期評価】7歳8ヶ月時(X日)緊急事態宣言終了に伴い外来リハビリテーション再開.母より以下を聴取.週3,4日の頻度でAM1時頃に覚醒する.「遊ぼう」と述べ,夜通し母の髪を引っ張る,殴る,蹴る,父の目を突こうとする,放尿,弄便を繰り返す.朝まで寝ないこともある.構って欲しくてやっている.身体制止では止まらず母が児をつねり収める形になる.味に敏感で服薬しない,とのこと.涙を流し「強く叩いてしまいました」,「いつか殺してしまうという不安があります」と仰る.強度行動障害判定基準表:31点.週5回通学,放課後等デイサービス利用.母のストレスが著しく緊急性が高い状況.小児発達外来受診希望あり.多職種で情報共有し支援を進める形で合意.
【経過】医師:基本方針として暴力は笑顔で穏やかに制止する,楽しい時間を提供することを提案.PT:親子で関わる機会として一本橋渡りを提案.自宅で継続的に取り組む.ST:課題や予定の視覚提示,目に見える物が無くなり課題終了となる設定が理解に繋がることを評価.OT:課題の区切り毎にハイタッチをして褒める,拭き掃除等の手伝いを通して人と関わり,感謝される機会を設けることを提案.母より上記を学校,施設に伝達.学校へはOTからも情報提供した.平日帰宅後には児と母でパズルを行い,休日には家族で外出する様になった.サービス担当者会議にて,施設より,暴力へは基本方針に基づく対応を心がけていること,おやつや手洗い前の他児への声かけ,検温,拭き掃除等の手伝いを喜んで行っている,との報告あり.
【結果】X日+3ヶ月,母より,夜眠るようになった,週1回程祖母を軽く押すことがあるが単発で済む,優しく注意する効果を感じている,との話あり.強度行動障害判定基準表4点.カナダ作業遂行測定:暴力を振るわず夜眠ることができる(重要度10,遂行度8,満足度9).
【考察】問題行動の多くは,要求,注目,回避等の機能を有するとされ,また周囲との相互作用による学習結果であると考えられており,環境により増減する可能性が指摘されている(全日本手をつなぐ育成会2013).本児にとって夜間覚醒,他害は,母と共に過ごすという機能を有していたと考えられる.原因を推定し,成功例と共に具体的対応を共有したことが関係者の協力を促し,他者と楽しく遊びたいという児のニーズを満たす機会,適応行動の学習機会増加に繋がり,問題行動改善の一助になった.強度行動障害児支援における多施設連携は,原因の推定,対応の共有と併用することで問題行動改善の一助となる可能性が示唆された.