[PJ-1-3] ポスター:高齢期 1高齢者に対するVirtual Realityを用いた没入型回想法の副反応の検討
【はじめに】近年,Virtual Reality(VR)技術を用いた医学への応用が注目され,海外では認知症患者に対するVRを用いた没入型回想法が使用され始めており,記憶を刺激しポジティブな感情を与えるとされているが,その副反応についての検討は少ない.我が国でも,VRの効果として,認知機能面や精神機能面に対して効果を示す可能性を示唆する一方で,高齢者に対する副反応の検討が少ないのが現状である.
【目的】本研究は,高齢者2名に対してVRを用いた没入型回想法を実施した結果,重篤な副反応等が出現するかを検証することを目的とした.
【方法】当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,本研究への協力に本人もしくは家族の同意が得られた方に対して実施.使用機器はFacebook Technologiesが開発したHead Mounted DisplayであるOculus Quest2を使用.WANDERというストリートビューで世界中を旅することができるアプリを使用し,対象者の過去の思い出の景色を映し出しVR視聴を実施.視聴時間は10~20分程度で両者ともに2回実施.介入前後の血圧や脈拍,血中酸素飽和度,介入中と介入後に重篤な副反応(めまい,吐き気,頭痛,胃部不快感,頭重感等)について評価した.また,介入後にVR視聴に関する没入感や満足感,不快感等の8項目を0~10段階でアンケート調査を実施した.なお, 本研究は北海道文教大学倫理審査委員会の承認(承認番号03011)を得て実施し,対象者2名より研究協力および学会発表の同意を得ている.
【症例紹介1】90代前半女性.現病歴は腰部痛を自覚し整形外科受診,腰椎圧迫骨折の診断.第22病日にリハビリ目的で当院転院.話好きでデイケアに週3日行くことを楽しみにしていたが,現在はコロナ感染を避けるために中止.要介護1.MMSE29/30点.思い出の場所は,過去にご主人と旅行した湯布院や自身が卒業した学校周辺の視聴を希望された.
【症例紹介2】80代後半女性.現病歴は早朝起き上がった際に腰部痛が出現し体動困難なため救急搬送され,腰椎圧迫骨折の診断.第8病日にリハビリ目的で当院転院.最近は外出機会が減り,転倒骨折を繰り返していた.独居で生活しているが認知機能面も徐々に低下し,サービスや家族の協力が必要となってきていた.要介護1.MMSE18点.思い出の場所は若い頃に長期間働いていた職場周辺や通勤路の視聴を希望された.
【結果】対象患者2名ともに,介入中と介入後に重篤な副反応を示すことはなかった.介入前後のバイタルサインに著明な変動は認めなかった.アンケート調査に関しては殆ど全ての項目で良い反応を示していた.また,症例1では過去の出来事が鮮明に思い出され,介入後には涙を流して喜ばれていた.症例2においても「楽しかった」とポジティブな反応が得られた.
【考察】結果より,VRを用いた没入型回想法は,今回対象とした2名の高齢者に対して重篤な副反応を引き起こすことはなかった.検証した症例数は少ないものの,今後認知症高齢者を対象にVRを実施する上で,受け入れられやすいものであると考えられた.認知症疾患診療ガイドライン2017によると,認知症の行動・心理症状(BPSD)には非薬物療法を薬物療法より優先的に行うことを原則とすると示されている.しかし,その非薬物療法のエビデンスレベルはCに留まっており,今後益々のエビデンスの構築が必要である.本研究におけるVRを用いた没入型回想法は認知症患者に対する介入方法として今後の発展や多様性に期待できるものであると考えられる.
【目的】本研究は,高齢者2名に対してVRを用いた没入型回想法を実施した結果,重篤な副反応等が出現するかを検証することを目的とした.
【方法】当院回復期リハビリテーション病棟に入院し,本研究への協力に本人もしくは家族の同意が得られた方に対して実施.使用機器はFacebook Technologiesが開発したHead Mounted DisplayであるOculus Quest2を使用.WANDERというストリートビューで世界中を旅することができるアプリを使用し,対象者の過去の思い出の景色を映し出しVR視聴を実施.視聴時間は10~20分程度で両者ともに2回実施.介入前後の血圧や脈拍,血中酸素飽和度,介入中と介入後に重篤な副反応(めまい,吐き気,頭痛,胃部不快感,頭重感等)について評価した.また,介入後にVR視聴に関する没入感や満足感,不快感等の8項目を0~10段階でアンケート調査を実施した.なお, 本研究は北海道文教大学倫理審査委員会の承認(承認番号03011)を得て実施し,対象者2名より研究協力および学会発表の同意を得ている.
【症例紹介1】90代前半女性.現病歴は腰部痛を自覚し整形外科受診,腰椎圧迫骨折の診断.第22病日にリハビリ目的で当院転院.話好きでデイケアに週3日行くことを楽しみにしていたが,現在はコロナ感染を避けるために中止.要介護1.MMSE29/30点.思い出の場所は,過去にご主人と旅行した湯布院や自身が卒業した学校周辺の視聴を希望された.
【症例紹介2】80代後半女性.現病歴は早朝起き上がった際に腰部痛が出現し体動困難なため救急搬送され,腰椎圧迫骨折の診断.第8病日にリハビリ目的で当院転院.最近は外出機会が減り,転倒骨折を繰り返していた.独居で生活しているが認知機能面も徐々に低下し,サービスや家族の協力が必要となってきていた.要介護1.MMSE18点.思い出の場所は若い頃に長期間働いていた職場周辺や通勤路の視聴を希望された.
【結果】対象患者2名ともに,介入中と介入後に重篤な副反応を示すことはなかった.介入前後のバイタルサインに著明な変動は認めなかった.アンケート調査に関しては殆ど全ての項目で良い反応を示していた.また,症例1では過去の出来事が鮮明に思い出され,介入後には涙を流して喜ばれていた.症例2においても「楽しかった」とポジティブな反応が得られた.
【考察】結果より,VRを用いた没入型回想法は,今回対象とした2名の高齢者に対して重篤な副反応を引き起こすことはなかった.検証した症例数は少ないものの,今後認知症高齢者を対象にVRを実施する上で,受け入れられやすいものであると考えられた.認知症疾患診療ガイドライン2017によると,認知症の行動・心理症状(BPSD)には非薬物療法を薬物療法より優先的に行うことを原則とすると示されている.しかし,その非薬物療法のエビデンスレベルはCに留まっており,今後益々のエビデンスの構築が必要である.本研究におけるVRを用いた没入型回想法は認知症患者に対する介入方法として今後の発展や多様性に期待できるものであると考えられる.