[PJ-3-3] ポスター:高齢期 3介護老人保健施設における日常生活活動の改善要因の検討
【はじめに】介護老人保健施設(以下,老健)においては,入所期間の長期化という問題点が顕在化しており,入所期間の短縮に資するようなリハビリテーション(以下,リハビリ)について検討する必要がある.入所を長期化させないためには,日常生活活動(以下,ADL)の改善も重要な要素であり,活動を治療対象とする作業療法が老健でのリハビリにおいて果たす役割は重要である.そこで,本報告では,入所期間の長期化という問題の改善に資するリハビリの指標作成の一助として,老健入所者のADLの改善に影響する要因について,心身機能の変化や訓練時間およびそれらの経時的変化を含めて検討した.
【方法】
<倫理的配慮>本研究の実施にあたり,筆頭演者の所属先倫理審査委員会の承認,および研究協力施設である老健の倫理審査委員会の承認を得ている.
<対象>研究協力施設入所者のうち,研究への同意が得られ,1年間の追跡調査が可能であった74名のうち,データの欠損があったものを除外した32名を対象とした.
<調査時点>入所直後,入所から3か月,6か月,9か月,12か月(1年後)までの各時点で調査を行った.
<調査方法>研究協力施設で入所時および3か月に一度作成しているリハビリ実施計画書および日々の診療録等から調査項目を抽出した.
<調査項目>対象者の基本情報として,入所時年齢,性別,入所時要介護度,入所時診断名を調査した.心身機能項目として,筋力低下,運動麻痺,感覚障害,関節可動域制限,嚥下障害,失語・構音障害,コミュニケーション障害の有無について調査した.認知機能については柄澤式老人知能の臨床的判定基準を用いた.ADLについては,寝返り,起き上がり,座位保持,立ち上がり,食事,移乗,トイレ,入浴,移動,更衣の遂行状況について調査した.リハビリの訓練時間数(以下リハビリ時間)とした.心身機能項目については,各項目における障害「無」を0点,障害「有」を1点とし,全項目の合計点をもって心身機能得点とした.ADLについては,各項目において全介助を0点,部分介助を1点,見守りを2点,自立を3点とし全項目の合計点をもってADL得点とした.リハビリ時間については各時点間の合計時間を算出した.
<解析方法>入所時と1年後の時点のADL得点を比較し,ADLが悪化したもの(悪化群),変化がないもの(維持群),改善があったもの(改善群),の3群に分類した.その後各項目について,3群間の比較を行った.統計解析にはSPSS28.0を用い,有意水準はp<0.05とした.
【結果】対象者の群分けは,悪化群9名,維持群10名,改善群13名であった.悪化群に比べ維持群・改善群では,全時点において認知機能障害の程度が軽度である(p<0.05),ADL能力が入所から3か月まで,3か月から6か月時点までは改善がある(p<0.05),といった特徴がみられた.そのほかの指標については,群間で有意な差異は認められなかった.
【考察】認知機能面の低下がリハビリに悪影響を及ぼすことはすでに報告されており,本研究も先行研究を支持するものであった.老健では,入所後3か月間は,短期集中リハビリ実施加算や認知症短期集中リハビリ実施加算といった加算が算定できる対象者もおり,リハビリを集中的に実施できる.しかし,3か月目以降はリハビリの実施時間が減少する.以上のことから,老健においては,認知機能の維持・向上に資するリハビリを提供すること,また,入所後3か月以降もリハビリを重点的に行うことで,ADLの維持・改善が可能であることが推察された.
【方法】
<倫理的配慮>本研究の実施にあたり,筆頭演者の所属先倫理審査委員会の承認,および研究協力施設である老健の倫理審査委員会の承認を得ている.
<対象>研究協力施設入所者のうち,研究への同意が得られ,1年間の追跡調査が可能であった74名のうち,データの欠損があったものを除外した32名を対象とした.
<調査時点>入所直後,入所から3か月,6か月,9か月,12か月(1年後)までの各時点で調査を行った.
<調査方法>研究協力施設で入所時および3か月に一度作成しているリハビリ実施計画書および日々の診療録等から調査項目を抽出した.
<調査項目>対象者の基本情報として,入所時年齢,性別,入所時要介護度,入所時診断名を調査した.心身機能項目として,筋力低下,運動麻痺,感覚障害,関節可動域制限,嚥下障害,失語・構音障害,コミュニケーション障害の有無について調査した.認知機能については柄澤式老人知能の臨床的判定基準を用いた.ADLについては,寝返り,起き上がり,座位保持,立ち上がり,食事,移乗,トイレ,入浴,移動,更衣の遂行状況について調査した.リハビリの訓練時間数(以下リハビリ時間)とした.心身機能項目については,各項目における障害「無」を0点,障害「有」を1点とし,全項目の合計点をもって心身機能得点とした.ADLについては,各項目において全介助を0点,部分介助を1点,見守りを2点,自立を3点とし全項目の合計点をもってADL得点とした.リハビリ時間については各時点間の合計時間を算出した.
<解析方法>入所時と1年後の時点のADL得点を比較し,ADLが悪化したもの(悪化群),変化がないもの(維持群),改善があったもの(改善群),の3群に分類した.その後各項目について,3群間の比較を行った.統計解析にはSPSS28.0を用い,有意水準はp<0.05とした.
【結果】対象者の群分けは,悪化群9名,維持群10名,改善群13名であった.悪化群に比べ維持群・改善群では,全時点において認知機能障害の程度が軽度である(p<0.05),ADL能力が入所から3か月まで,3か月から6か月時点までは改善がある(p<0.05),といった特徴がみられた.そのほかの指標については,群間で有意な差異は認められなかった.
【考察】認知機能面の低下がリハビリに悪影響を及ぼすことはすでに報告されており,本研究も先行研究を支持するものであった.老健では,入所後3か月間は,短期集中リハビリ実施加算や認知症短期集中リハビリ実施加算といった加算が算定できる対象者もおり,リハビリを集中的に実施できる.しかし,3か月目以降はリハビリの実施時間が減少する.以上のことから,老健においては,認知機能の維持・向上に資するリハビリを提供すること,また,入所後3か月以降もリハビリを重点的に行うことで,ADLの維持・改善が可能であることが推察された.