[PJ-3-5] ポスター:高齢期 3回復期リハビリテーション病棟における集団作業活動の効果判定に関する中間報告
【はじめに】当院では,2014年より認知・精神機能に課題がある患者様を対象に作業療法士による集団作業活動(以下集団OT)を行い,認知機能やBPSD改善の一助になることを実績として上げている.2019年より集団OTの効果判定として,意欲と対人関係の評価尺度を付け加えた.その結果と考察を以下に報告する.尚,本研究と報告に際し,評価データの使用を本人・家族より書面にて承諾を得ている.
【調査方法】期間:2019年10月6日~2021年 8月30日.対象:調査の選定要件は集団OTに2回以上参加した者,介入前後の評価をしていた者とした.除外要件は体調不良等で転科になった者等とし,総参加者58名の中から41名を選出した.評価項目:年齢,疾患,認知症や精神疾患診断の有無,薬物療法の有無をカルテより調査した.評価尺度:FIM,HDS-R,MMSE,DBDS,VI ,NMSを用い,集団OT介入前後直近の値を収集した.
【集団OTの紹介】目的:認知・精神機能の改善,BPSD軽減.形態:3~6名の準閉鎖集団を1回60分で週1回実施.各参加者それぞれにOTが個別介入.内容:参加者の特性を考慮し,回想法,季節行事,集団・個別作業を組み合わせ実施.
【統計方法】評価尺度の前後比較としてWilcoxon順位和検定を用いた.有意水準は5%未満とし,統計解析にはExcel統計2012を用いた.
【結果1|評価項目・尺度】平均年齢:89.5歳.疾患・診断の有無:脳血管疾患9名,運動器疾患28名,廃用症候群4名.このうち認知症と診断された者は20名,精神障害者は4名であり,薬物療法を受けていた者は11名であった.評価尺度:FIM|運動 32.1→52.9,認知 17.0→21.2,HDS-R|14.1→16.3,MMSE|16.4→18.1,DBDS|12.2→8.5,VI|6.32→7.7,NMS|21.8→25.4 ※評価尺度全てにおいて,介入前後で有意な改善を認めた.
【結果2|VIとHDS-R,MMSEとの関連性】
介入前後でのVI低下者は4名,0~2点向上者は23名,3~5点向上者は14名であった.
VIの数値変化とHDS-R・MMSEの数値変化を比較すると,VIが低下していた4名はHDS-RとMMSEの一方もしくは両方低下していた.VIの点数変化が0点~5点であった37名に一貫性はなかった.
【結果3|NMSの下位項目】
下位項目すべてに改善がみられ「家事・身辺整理」「関心・意欲・交流」「会話」には有意差を認めた.一方で「記銘・記憶」「見当識」には有意差を認めなかった.
【考察】
2019年に追加したVIとNMSについて述べ,意欲と対人関係について考察する.意欲の評価としてVIを用い,有意な改善を認めたが,食事や排泄の評価項目は,意思だけではなく身体機能にも左右されるため,VIのみで意欲を評価することには限界があると思われた.NMS下位項目 「家事動作・身辺整理」が有意に改善した要因としては,身体機能改善に伴うADL自立度向上が背景にあると思われた.また,対人関係に必要な「関心・意欲・交流」「会話」にも有意な改善が認められた.福田ら(2012)によると対人関係は,幼少期の愛着形成と基本的信頼感を基盤に,他者から受け入れられ,守られ,受容や葛藤を繰り返す中で成熟する機能と述べている.しかし老年期は離別による孤立や生理的・心理的老化が生じ,特に疾病により入院生活が余儀なくされると,対人交流の機会に加え,手段も失われやすいことが考えられる.野村ら(2018)は対象者の意欲向上に向けたセラピストの関わりとして,対象者の「楽しみたい・役に立ちたい」等の本質的なニーズを満たす声がけや関わりが有効と報告している.このことから,集団OTに参加し,受容される体験や普遍的体験を重ねていくことは,本質的なニーズが充足し,意欲や対人関係の改善に繋がることが考えられる.
【調査方法】期間:2019年10月6日~2021年 8月30日.対象:調査の選定要件は集団OTに2回以上参加した者,介入前後の評価をしていた者とした.除外要件は体調不良等で転科になった者等とし,総参加者58名の中から41名を選出した.評価項目:年齢,疾患,認知症や精神疾患診断の有無,薬物療法の有無をカルテより調査した.評価尺度:FIM,HDS-R,MMSE,DBDS,VI ,NMSを用い,集団OT介入前後直近の値を収集した.
【集団OTの紹介】目的:認知・精神機能の改善,BPSD軽減.形態:3~6名の準閉鎖集団を1回60分で週1回実施.各参加者それぞれにOTが個別介入.内容:参加者の特性を考慮し,回想法,季節行事,集団・個別作業を組み合わせ実施.
【統計方法】評価尺度の前後比較としてWilcoxon順位和検定を用いた.有意水準は5%未満とし,統計解析にはExcel統計2012を用いた.
【結果1|評価項目・尺度】平均年齢:89.5歳.疾患・診断の有無:脳血管疾患9名,運動器疾患28名,廃用症候群4名.このうち認知症と診断された者は20名,精神障害者は4名であり,薬物療法を受けていた者は11名であった.評価尺度:FIM|運動 32.1→52.9,認知 17.0→21.2,HDS-R|14.1→16.3,MMSE|16.4→18.1,DBDS|12.2→8.5,VI|6.32→7.7,NMS|21.8→25.4 ※評価尺度全てにおいて,介入前後で有意な改善を認めた.
【結果2|VIとHDS-R,MMSEとの関連性】
介入前後でのVI低下者は4名,0~2点向上者は23名,3~5点向上者は14名であった.
VIの数値変化とHDS-R・MMSEの数値変化を比較すると,VIが低下していた4名はHDS-RとMMSEの一方もしくは両方低下していた.VIの点数変化が0点~5点であった37名に一貫性はなかった.
【結果3|NMSの下位項目】
下位項目すべてに改善がみられ「家事・身辺整理」「関心・意欲・交流」「会話」には有意差を認めた.一方で「記銘・記憶」「見当識」には有意差を認めなかった.
【考察】
2019年に追加したVIとNMSについて述べ,意欲と対人関係について考察する.意欲の評価としてVIを用い,有意な改善を認めたが,食事や排泄の評価項目は,意思だけではなく身体機能にも左右されるため,VIのみで意欲を評価することには限界があると思われた.NMS下位項目 「家事動作・身辺整理」が有意に改善した要因としては,身体機能改善に伴うADL自立度向上が背景にあると思われた.また,対人関係に必要な「関心・意欲・交流」「会話」にも有意な改善が認められた.福田ら(2012)によると対人関係は,幼少期の愛着形成と基本的信頼感を基盤に,他者から受け入れられ,守られ,受容や葛藤を繰り返す中で成熟する機能と述べている.しかし老年期は離別による孤立や生理的・心理的老化が生じ,特に疾病により入院生活が余儀なくされると,対人交流の機会に加え,手段も失われやすいことが考えられる.野村ら(2018)は対象者の意欲向上に向けたセラピストの関わりとして,対象者の「楽しみたい・役に立ちたい」等の本質的なニーズを満たす声がけや関わりが有効と報告している.このことから,集団OTに参加し,受容される体験や普遍的体験を重ねていくことは,本質的なニーズが充足し,意欲や対人関係の改善に繋がることが考えられる.