第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

高齢期

[PJ-4] ポスター:高齢期 4

2022年9月16日(金) 16:00 〜 17:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-4-2] ポスター:高齢期 4回復期リハビリテーション病棟における自宅でのIADL訓練前後の不安変化

中間 賢二1窪田 正大2八反丸 健二1 (1医療法人慈圭会 八反丸リハビリテーション病院,2鹿児島大学医学部保健学科)

【緒言】自宅での施設外訓練(院外IADL訓練)を実施し,退院後の生活準備を入院中に整えることは患者不安の軽減につながることが考えられる.しかし,院外IADL訓練実施前後での患者不安に関する検討は十分に行われていない.そこで今回の研究目的は,院外IADL訓練実施前後での患者不安の変化を調査することである.
【対象】当院に2019年6月~2020年12月の間の入院中,院外IADL訓練を実施し自宅退院となった患者53名(男性21名:平均75.7歳,女性32名:平均83.7歳)であった.また,MMSEが24点以上かつ質問紙法が実施可能な者とした.疾患の内訳は,脳血管疾患12名,運動器疾患41名であった.なお,本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施した.
【方法】
 不安の評価としてSTAIを用いた.STAIの状態不安・特性不安の両尺度とも20項目の質問について,4段階評定する同一形式であり,各項目の点数を合計し,総点数に応じて,Ⅰ~Ⅳの5段階に分けられる.しかし,今回は対象者数のことを鑑み,普通(Ⅲ)を中央に定め,それよりも低い(Ⅱ)・非常に低い(Ⅰ)を状態不安低群,高い(Ⅳ)・非常に高い(Ⅴ)を状態不安高群と便宜的に5段階を3群に分類し直した.なお,今回の研究において特性不安は院外IADL訓練実施前のみ実施し,状態不安は,院外IADL訓練実施前,実施後,退院前に実施した.分析内容は,1)院外IADL訓練実施前のSTAI特性不安と状態不安の相関関係,2)STAI状態不安とレベル分類,3)状態不安レベル分類別の院外IADL訓練実施前・実施後・退院前での状態不安の比較を行った.なお,統計は,Friedman検定および多重比較検定を用い,有意水準は5%とした.
【結果】
 1)院外IADL訓練実施前の特性不安と状態不安とは有意な正の相関関係を示した(rs=0.74,p<0.01).2)低群が13名(24%,男性2名:平均86.5歳,女性11名:平均79.8歳),普通群が19名(36%,男性6名:平均74.8歳,女性13名:平均83.4歳),高群が21名(40%,男性13名:平均74.3歳,女性8名:平均89.3歳)であった.3) 普通群と高群の状態不安では,Friedman検定で有意差を認めた(普通群p<0.0001,高群p=0.002).また,多重比較検定で,訓練実施後が実施前より有意に低値を示した(普通群p<0.01,高群p<0.05).さらに,退院前が訓練実施前より有意に低値を示した(普通群p<0.01,高群p<0.01).低群では,Friedman検定で有意差は認めなかった(p=0.6969).
【考察】
 今回院外IADL訓練実施前,実施後,退院前での状態不安を比較した結果,普通群と高群において,訓練実施後が実施前より有意に低値を示した.また,退院前が訓練実施前より有意に低値を示した.よって,院外IADL訓練は患者の状態不安を軽減させることが確認された.新城(2019)は,退院後に患者・家族が困らないよう入院中から家族への介護指導や外泊練習,家屋訪問など退院準備をすることが重要であると述べている.本研究においても,院外IADL訓練を通じ,家屋改修や福祉用具導入の検討機会にもなった.また介護項目を把握することで,退院後の介護サービスの検討機会にもなり,残りの入院期間中に「退院後の生活目標」が明確になり具体的な対応が可能となった.これらのことを入院中に実施することで,状況不安の軽減に繋がり,かつ退院前までそれらが維持したと考えられた.一方,状態不安レベル分類別の低群においては,院外IADL訓練実施前の状態不安と特性不安とは,正の相関関係を認めたことから,元々不安になりにくい性格傾向であり,比較的安定していたと推測できる.