[PJ-4-3] ポスター:高齢期 4高齢者の運転免許返納によるQOL 低下の要因の検討
【序論】
近年,高齢ドライバーによる事故が社会問題となっている.運転免許を自主返納する方が増えてきているが,このことが健康関連QOL(HRQOL)に与える影響が確認されてこなかった.われわれはこの点に着目して調査した結果,運転免許を返納した高齢者のHRQOLがもともと免許を保有していない高齢者に比べて低いことを確認し,先に論文として発表した(Asian J Occup Ther 18: 1−8, 202).
【目的】
本研究の目的は先の調査から,運転免許を返納した高齢者のHRQOL低下の要因をさらに検討することである.
【方法】
2020年12月にWebベースのアンケートを実施した.対象とした運転免許を持っていない高齢者1,200名のうち,免許を返納していた者は467名であった.本調査では,免許返納者に現在のHRQOLと運転免許を返納する前のHRQOLをたずねている.HRQOLの評価にはHealth Utilities Index Mark 3(HUI3)とSF-8を用いたが,本研究ではHUI3のスコアのみを解析の対象とした.HUI3は全体のグローバルスコアとともに視覚,聴覚,会話,移動,器用さ,感情,認知,痛みの8つの領域ごとのシングルスコアを解析できるためである.統計処理にはt検定と重回帰分析を用いた.
【結果】
運転免許を返納した高齢者の返納前のHUI3のグローバルスコアの平均は0.816±0.202,現在の平均は0.728±0.235であり有意に低下していた(p<0.001).シングルスコアの免許返納前後の比較では,視覚=0.937/0.888(diff=0.048),聴覚=0.966/0.927(diff=0.039),会話=0.953/0.936(diff=0.017),移動=0.970/0.956(diff=0.014),器用さ=0.983/0.974(diff=0.009),感情=0.909/0.891(diff=0.017),認知=0.947/0.906(diff=0.041),痛み=0.954/0.945(diff=0.029)となり,すべての領域で有意に低下していた.差分が大きくなった領域は視覚,認知,聴覚,痛みの順であった.またそれぞれの差分を従属変数,免許返納からの年数と大きな病気やケガの有無を独立変数とした重回帰分析の結果,返納からの経過年数に影響を受けたのは聴覚,会話,移動,感情,痛みの領域であり,大きな病気やケガの影響を受けた領域は,視覚,認知,痛みの領域であった.
【結論】
先に発表した論文では,運転免許を返納した高齢者のHRQOL低下の原因を特定できなかった.本研究で実施した追加の解析によって,運転免許を返納した高齢者は少なくとも返納後に罹患した身体機能の障害によってHRQOLが低下したわけではないことが示された.一方で,運転免許の返納自体が会話,移動,感情などの領域のHRQOL低下に影響した可能性が高いと推察された.
近年,高齢ドライバーによる事故が社会問題となっている.運転免許を自主返納する方が増えてきているが,このことが健康関連QOL(HRQOL)に与える影響が確認されてこなかった.われわれはこの点に着目して調査した結果,運転免許を返納した高齢者のHRQOLがもともと免許を保有していない高齢者に比べて低いことを確認し,先に論文として発表した(Asian J Occup Ther 18: 1−8, 202).
【目的】
本研究の目的は先の調査から,運転免許を返納した高齢者のHRQOL低下の要因をさらに検討することである.
【方法】
2020年12月にWebベースのアンケートを実施した.対象とした運転免許を持っていない高齢者1,200名のうち,免許を返納していた者は467名であった.本調査では,免許返納者に現在のHRQOLと運転免許を返納する前のHRQOLをたずねている.HRQOLの評価にはHealth Utilities Index Mark 3(HUI3)とSF-8を用いたが,本研究ではHUI3のスコアのみを解析の対象とした.HUI3は全体のグローバルスコアとともに視覚,聴覚,会話,移動,器用さ,感情,認知,痛みの8つの領域ごとのシングルスコアを解析できるためである.統計処理にはt検定と重回帰分析を用いた.
【結果】
運転免許を返納した高齢者の返納前のHUI3のグローバルスコアの平均は0.816±0.202,現在の平均は0.728±0.235であり有意に低下していた(p<0.001).シングルスコアの免許返納前後の比較では,視覚=0.937/0.888(diff=0.048),聴覚=0.966/0.927(diff=0.039),会話=0.953/0.936(diff=0.017),移動=0.970/0.956(diff=0.014),器用さ=0.983/0.974(diff=0.009),感情=0.909/0.891(diff=0.017),認知=0.947/0.906(diff=0.041),痛み=0.954/0.945(diff=0.029)となり,すべての領域で有意に低下していた.差分が大きくなった領域は視覚,認知,聴覚,痛みの順であった.またそれぞれの差分を従属変数,免許返納からの年数と大きな病気やケガの有無を独立変数とした重回帰分析の結果,返納からの経過年数に影響を受けたのは聴覚,会話,移動,感情,痛みの領域であり,大きな病気やケガの影響を受けた領域は,視覚,認知,痛みの領域であった.
【結論】
先に発表した論文では,運転免許を返納した高齢者のHRQOL低下の原因を特定できなかった.本研究で実施した追加の解析によって,運転免許を返納した高齢者は少なくとも返納後に罹患した身体機能の障害によってHRQOLが低下したわけではないことが示された.一方で,運転免許の返納自体が会話,移動,感情などの領域のHRQOL低下に影響した可能性が高いと推察された.