[PJ-4-4] ポスター:高齢期 4我が国の作業療法領域における高齢者の生活時間調査に関するシステマティックレビュー
【はじめに】我が国は急速に高齢化が進み,2040年には高齢化率が35.3%になることが予測される(厚生労働省,2020).高齢者の生活時間は家事や仕事等の拘束行動が減少し,食事や睡眠等の必需行動,レジャー活動やマスメディア接触等の自由時間が増大する(NHK放送文化研究所,2020).この自由時間にやりたいと思っていたことを実現することや見つけることが充実した老年期につながる(小林法一,2008).作業療法(以下,OT)では時間配分だけでなく時間使用の質的側面を重視している(近藤敏・他,2009).そのため,高齢者が1日24時間にどのような作業を行っているのか,また,その作業に対してどのように認識しているかを理解することは重要であると思われる.生活の質的側面の検討を目的に,一定の時間の個人の行動を時刻の流れに即してどのように使用したかを記録する生活時間調査(近藤敏・他,2009)の報告は散見されるが,現状と課題は明らかとなっていない.
【目的】本邦におけるOT領域での高齢者の生活時間調査に関する知見を概観し傾向と課題を提示することである.
【方法】PRISMA声明に基づきシステマティックレビューを行った.①論文収集:医学中央雑誌,メディカルオンライン,CiNiiを使用し(検索日:2022年1月6日),検索語は「OT,高齢者,生活時間」「OT,高齢者,作業質問紙」とした.②適格基準:1)国内のOT領域かつ作業療法士の報告,2)対象は65歳以上,3)生活時間に関する内容を含む,4)全文が入手可能な事例報告を除く原著論文とした.③論文抽出:重複論文を除外後,表題・抄録の精査を行い明らかに適格基準外と判断した論文を除外した.その後,本文を精読し適格基準を満たした論文を抽出した.④データ抽出:論文に関する項目,内容,結論等の要点を抽出し共通点を分析した.
【結果】全107件が検索され,適格基準に従い抽出された7件を分析した.内容は,生活時間と主観的QOLとの検討が5件(内,閉じこもり高齢者の生活様式及び転帰調査が各1件),テレビ視聴時間とフレイルとの検討が1件,生活時間とADL及び知的能力との検討が1件であった.結論は,精神科入院者の生活体力は休息時間と健康関連QOLに負の相関を認めた,地域在住健常者の生活時間と健康関連QOLに関連を認めなかった,施設入所者の価値や興味の高い作業は時間の長さよりもその有無が生活満足度に影響した,閉じこもり者は1日の活動に対して否定的な認識を持っていた,1年後に健康状態が悪化した閉じこもり者は活動に対する興味と価値が有意に低かった,フレイルの有無とテレビ視聴時間に関連を認めなかった,在宅障害者は習慣的活動が無い者や活動範囲が狭いほど知的機能や生活自立度が低かった.主な共通点は,自己認識に基づく遂行領域別の内容が明記された4件で「ADL」「余暇」「休息」は類似していたが「仕事」は差異が大きく,主観的QOLとの検討を調査した5件中2件は「休息」と認識した時間と負の相関関係を認め,有能感・価値・興味を調査した3件中2件は活動低下群や健康状態悪化群は価値や興味の程度が有意に低下していた.
【考察】生活時間調査は心身機能や主観的QOL等の健康状態との関連を調査している傾向であった.自己認識に基づく「仕事」は,畑仕事,テレビ視聴,体操等が挙げられ個別性が高いと思われた.活動が低下している者は休息時間が長く,作業に対する価値や興味の低下,認知機能低下,生活自立度低下の傾向がある可能性が示唆された.しかし,作業や生活時間に対する個人の思いや考え等の質的側面,平日や週末等の複数日の調査はされておらず,多様な生活や認識面を明らかにするためには,今後はこれらの調査が必要と考える.
【目的】本邦におけるOT領域での高齢者の生活時間調査に関する知見を概観し傾向と課題を提示することである.
【方法】PRISMA声明に基づきシステマティックレビューを行った.①論文収集:医学中央雑誌,メディカルオンライン,CiNiiを使用し(検索日:2022年1月6日),検索語は「OT,高齢者,生活時間」「OT,高齢者,作業質問紙」とした.②適格基準:1)国内のOT領域かつ作業療法士の報告,2)対象は65歳以上,3)生活時間に関する内容を含む,4)全文が入手可能な事例報告を除く原著論文とした.③論文抽出:重複論文を除外後,表題・抄録の精査を行い明らかに適格基準外と判断した論文を除外した.その後,本文を精読し適格基準を満たした論文を抽出した.④データ抽出:論文に関する項目,内容,結論等の要点を抽出し共通点を分析した.
【結果】全107件が検索され,適格基準に従い抽出された7件を分析した.内容は,生活時間と主観的QOLとの検討が5件(内,閉じこもり高齢者の生活様式及び転帰調査が各1件),テレビ視聴時間とフレイルとの検討が1件,生活時間とADL及び知的能力との検討が1件であった.結論は,精神科入院者の生活体力は休息時間と健康関連QOLに負の相関を認めた,地域在住健常者の生活時間と健康関連QOLに関連を認めなかった,施設入所者の価値や興味の高い作業は時間の長さよりもその有無が生活満足度に影響した,閉じこもり者は1日の活動に対して否定的な認識を持っていた,1年後に健康状態が悪化した閉じこもり者は活動に対する興味と価値が有意に低かった,フレイルの有無とテレビ視聴時間に関連を認めなかった,在宅障害者は習慣的活動が無い者や活動範囲が狭いほど知的機能や生活自立度が低かった.主な共通点は,自己認識に基づく遂行領域別の内容が明記された4件で「ADL」「余暇」「休息」は類似していたが「仕事」は差異が大きく,主観的QOLとの検討を調査した5件中2件は「休息」と認識した時間と負の相関関係を認め,有能感・価値・興味を調査した3件中2件は活動低下群や健康状態悪化群は価値や興味の程度が有意に低下していた.
【考察】生活時間調査は心身機能や主観的QOL等の健康状態との関連を調査している傾向であった.自己認識に基づく「仕事」は,畑仕事,テレビ視聴,体操等が挙げられ個別性が高いと思われた.活動が低下している者は休息時間が長く,作業に対する価値や興味の低下,認知機能低下,生活自立度低下の傾向がある可能性が示唆された.しかし,作業や生活時間に対する個人の思いや考え等の質的側面,平日や週末等の複数日の調査はされておらず,多様な生活や認識面を明らかにするためには,今後はこれらの調査が必要と考える.