[PJ-5-1] ポスター:高齢期 5整形疾患のある高齢入院患者の入院期間中の認知機能変化に関連する因子の検討
【はじめに】
厚生労働省によると,総人口における高齢者数の割合が令和18年には33.3%になると報告している.また,高齢者の約5人に1人が認知症の有病者となる可能性も指摘している.こうした状況により,今後,認知症を有する高齢入院患者が更に増加することが予測される.しかし,高齢者の入院に伴う精神・認知・身体機能の低下が懸念されているものの,関連する要因の検討は極めて少ない.
【目的】
本研究の目的は,整形疾患のある高齢入院患者の認知機能が入退院時にどのように変化し,関連する因子について検討することである.
【方法】
後方視的観察研究とし,令和1年12月から令和3年7月の期間に,当院を退院した65歳以上の整形疾患患者45名(86.9±6.6歳,女性75.6%)を解析対象とした.電子カルテより,年齢,性別,在院日数,手術の有無,入院時のFunctional Independence Measure(FIM)及びMini Metal State Examination(MMSE)得点,退院時のFIM及びMMSE得点を調査した.入院時と退院時のMMSEの変化量は平均2.8±5.6点で,対応のあるT検定を用いて前後の比較を検討した.次に認知機能の変化にどのような要因が関連しているかを明らかにするため,入院時と退院時のMMSE得点の変化が3点以上の対象者を改善群(N=20),3点未満の対象者を維持・低下群(N=25)の2群に分け,他の因子との関連を対応のないT検定またはカイ二乗検定を用いて検討した.統計処理にはSPSS Statistics 27を用いた.本研究は,倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
改善群(84.3±2.3歳,女性75%)は,在院日数56.0±24.8日,手術の有無(有17人,無3人),FIM初回総合得点(介入時46.3±21.0,退院時51.0±28.9),MMSE初回12.3±4.5点,病前歩行(自立12名,非自立8名),同居家族(有14名,無6名)であった.また,維持・低下群(88.2±5.2歳,女性76%)は,在院日数59.5±18.3日,手術の有無(手術有17人,手術無8人),FIM初回総合得点(介入時79.0±15.5点,退院時93.2±21.0点),MMSE初回19.67±6.9点,病前歩行(自立21名,非自立4名),同居家族(有8名,無17名)であった.
解析対象者について,入院時から退院時の2時点におけるMMSE得点の変化において,平均2.8±5.6点の有意な向上が示された(P<0.01).また,認知機能の変化に関連する因子を検討したところ,同居家族の有無(P<0.01)が有意に関連していた.
【考察】
整形疾患のある高齢入院患者の入院期間中の認知機能変化に関連する因子を検討したところ,同居家族を有していた者ほど入院期間の認知機能の経過が良好である可能性が示された.同居家族を有する高齢入院患者は,入院中及び退院後の生活に対して家族からソーシャル・サポートを受けることができる安心感が働き,入院中の心理的負担を軽減し,主体的に治療に取り組むことで,結果的に認知機能の低下を予防出来たのではないかと考えられる.今後は,より客観的データを用いて更なる研究を行い,入院期間中の認知機能低下を防ぐための検討を重ねる必要がある.
厚生労働省によると,総人口における高齢者数の割合が令和18年には33.3%になると報告している.また,高齢者の約5人に1人が認知症の有病者となる可能性も指摘している.こうした状況により,今後,認知症を有する高齢入院患者が更に増加することが予測される.しかし,高齢者の入院に伴う精神・認知・身体機能の低下が懸念されているものの,関連する要因の検討は極めて少ない.
【目的】
本研究の目的は,整形疾患のある高齢入院患者の認知機能が入退院時にどのように変化し,関連する因子について検討することである.
【方法】
後方視的観察研究とし,令和1年12月から令和3年7月の期間に,当院を退院した65歳以上の整形疾患患者45名(86.9±6.6歳,女性75.6%)を解析対象とした.電子カルテより,年齢,性別,在院日数,手術の有無,入院時のFunctional Independence Measure(FIM)及びMini Metal State Examination(MMSE)得点,退院時のFIM及びMMSE得点を調査した.入院時と退院時のMMSEの変化量は平均2.8±5.6点で,対応のあるT検定を用いて前後の比較を検討した.次に認知機能の変化にどのような要因が関連しているかを明らかにするため,入院時と退院時のMMSE得点の変化が3点以上の対象者を改善群(N=20),3点未満の対象者を維持・低下群(N=25)の2群に分け,他の因子との関連を対応のないT検定またはカイ二乗検定を用いて検討した.統計処理にはSPSS Statistics 27を用いた.本研究は,倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
改善群(84.3±2.3歳,女性75%)は,在院日数56.0±24.8日,手術の有無(有17人,無3人),FIM初回総合得点(介入時46.3±21.0,退院時51.0±28.9),MMSE初回12.3±4.5点,病前歩行(自立12名,非自立8名),同居家族(有14名,無6名)であった.また,維持・低下群(88.2±5.2歳,女性76%)は,在院日数59.5±18.3日,手術の有無(手術有17人,手術無8人),FIM初回総合得点(介入時79.0±15.5点,退院時93.2±21.0点),MMSE初回19.67±6.9点,病前歩行(自立21名,非自立4名),同居家族(有8名,無17名)であった.
解析対象者について,入院時から退院時の2時点におけるMMSE得点の変化において,平均2.8±5.6点の有意な向上が示された(P<0.01).また,認知機能の変化に関連する因子を検討したところ,同居家族の有無(P<0.01)が有意に関連していた.
【考察】
整形疾患のある高齢入院患者の入院期間中の認知機能変化に関連する因子を検討したところ,同居家族を有していた者ほど入院期間の認知機能の経過が良好である可能性が示された.同居家族を有する高齢入院患者は,入院中及び退院後の生活に対して家族からソーシャル・サポートを受けることができる安心感が働き,入院中の心理的負担を軽減し,主体的に治療に取り組むことで,結果的に認知機能の低下を予防出来たのではないかと考えられる.今後は,より客観的データを用いて更なる研究を行い,入院期間中の認知機能低下を防ぐための検討を重ねる必要がある.