[PJ-5-2] ポスター:高齢期 5COVID-19下の社会的隔離における高齢者の認知機能への影響に関する文献研究
作業療法における今後の展望
【背景と目的】
COVID-19は高齢者では重症化するリスクが高いことから,他人との接触を控える措置が取られ,高齢者施設では外出禁止や面会禁止となっている.このような「社会的隔離」は高齢者の人的交流や社会的活動への参加を阻害することにより,高齢者の認知機能低下を惹起している可能性がある.高齢者施設の入所者にオンライン面会を行うことにより,COVID-19感染対策を講じた中で社会的交流を補完している報告もあり,認知機能低下への影響を最小限にとどめる努力も伺える.社会参加や他人との交流は,認知機能を維持する要件でもあり,これらは生活行為を高める手段として作業療法の中でも用いられる.本研究では,これまでの文献で示された社会的隔離における高齢者の認知機能への影響を明らかにし,COVID-19下における作業療法で有用な点を探求することを目的とする.
【方法】
文献検索は医中誌Web,CiNii,メディカルオンラインを用い,検索対象年を発行年~2022年2月とした.キーワードは,「社会的隔離」または「社会的孤立」,「高齢者」,「認知機能」とし,対象論文は社会的隔離に関連した認知機能への影響に関すると考えられた38件を分析対象とした.各文献は,1)身体機能,2)精神機能,3)人生の満足度,4)社会活動・社会環境にカテゴリー化して分析した.
【結果】
社会的隔離に関連した認知機能への影響として挙げられたものは,1)身体機能では,歩行速度低下,立位バランスの低下や転倒,サルコペニア,身体活動量やADLの低下,糖尿病,視聴覚機能低下や口腔機能の低下であった.2)精神機能では,うつ(抑うつ)による活動意欲低下,認知症(中核症状やBPSD:行動心理症状),不安,情報処理速度低下であった.3)人生の満足度では,孤独感や孤立等の社会的孤立,支援となる社会資源の認識,経済状況の悪化(低所得)であった.4)社会活動・社会環境では,居場所がなく閉じこもり,外出頻度の低下,交友関係の狭小化,余暇活動の低下,難聴者に対する支援の不十分であった.
【考察】
高齢者における認知機能は加齢と共に低下し,一定の水準を下回ると生活に様々な支障を生じる.認知機能の低下を予防して心身機能の健康を維持するためには,孤独や抑うつから解放され,人生の満足度が高い日常生活を送ること,社会活動が積極的に行われていることが必要であると考えられていた.一方,人生の満足を体験することが認知機能の維持に役立つこと,さらには社会参画し社会活動を続けることが認知機能の維持に重要であることも示された.身体的・精神的に良好な状態を基盤として,正常な認知機能,人生の満足(ウェルビーイング),社会活動・社会環境には相互の因果関係があり,必ずしも単純な階層構造ではなくお互いに影響していると考えられた.このことから,今回のCOVID-19対策として実施されている高齢者の社会的隔離は,社会活動・社会的生産性を奪うことにより高齢者の認知機能低下過程に悪影響を及ぼしている可能性が考えられる.今後は,社会的隔離となっている高齢者の心身機能,生活状態から社会的隔離の程度による認知機能低下の影響を経時的に評価し,COVID-19対策を講じた他人との交流・趣味などの社会的活動を作業療法で導入することで高齢者の認知機能維持に役立つ可能性を模索する必要がある.
COVID-19は高齢者では重症化するリスクが高いことから,他人との接触を控える措置が取られ,高齢者施設では外出禁止や面会禁止となっている.このような「社会的隔離」は高齢者の人的交流や社会的活動への参加を阻害することにより,高齢者の認知機能低下を惹起している可能性がある.高齢者施設の入所者にオンライン面会を行うことにより,COVID-19感染対策を講じた中で社会的交流を補完している報告もあり,認知機能低下への影響を最小限にとどめる努力も伺える.社会参加や他人との交流は,認知機能を維持する要件でもあり,これらは生活行為を高める手段として作業療法の中でも用いられる.本研究では,これまでの文献で示された社会的隔離における高齢者の認知機能への影響を明らかにし,COVID-19下における作業療法で有用な点を探求することを目的とする.
【方法】
文献検索は医中誌Web,CiNii,メディカルオンラインを用い,検索対象年を発行年~2022年2月とした.キーワードは,「社会的隔離」または「社会的孤立」,「高齢者」,「認知機能」とし,対象論文は社会的隔離に関連した認知機能への影響に関すると考えられた38件を分析対象とした.各文献は,1)身体機能,2)精神機能,3)人生の満足度,4)社会活動・社会環境にカテゴリー化して分析した.
【結果】
社会的隔離に関連した認知機能への影響として挙げられたものは,1)身体機能では,歩行速度低下,立位バランスの低下や転倒,サルコペニア,身体活動量やADLの低下,糖尿病,視聴覚機能低下や口腔機能の低下であった.2)精神機能では,うつ(抑うつ)による活動意欲低下,認知症(中核症状やBPSD:行動心理症状),不安,情報処理速度低下であった.3)人生の満足度では,孤独感や孤立等の社会的孤立,支援となる社会資源の認識,経済状況の悪化(低所得)であった.4)社会活動・社会環境では,居場所がなく閉じこもり,外出頻度の低下,交友関係の狭小化,余暇活動の低下,難聴者に対する支援の不十分であった.
【考察】
高齢者における認知機能は加齢と共に低下し,一定の水準を下回ると生活に様々な支障を生じる.認知機能の低下を予防して心身機能の健康を維持するためには,孤独や抑うつから解放され,人生の満足度が高い日常生活を送ること,社会活動が積極的に行われていることが必要であると考えられていた.一方,人生の満足を体験することが認知機能の維持に役立つこと,さらには社会参画し社会活動を続けることが認知機能の維持に重要であることも示された.身体的・精神的に良好な状態を基盤として,正常な認知機能,人生の満足(ウェルビーイング),社会活動・社会環境には相互の因果関係があり,必ずしも単純な階層構造ではなくお互いに影響していると考えられた.このことから,今回のCOVID-19対策として実施されている高齢者の社会的隔離は,社会活動・社会的生産性を奪うことにより高齢者の認知機能低下過程に悪影響を及ぼしている可能性が考えられる.今後は,社会的隔離となっている高齢者の心身機能,生活状態から社会的隔離の程度による認知機能低下の影響を経時的に評価し,COVID-19対策を講じた他人との交流・趣味などの社会的活動を作業療法で導入することで高齢者の認知機能維持に役立つ可能性を模索する必要がある.