[PJ-5-3] ポスター:高齢期 5認知症入所高齢者のオンライン面会
【緒言】 COVID-19により,全世代での孤立が問題となった.一方,人々はWeb会議システムを使用して感染症による制約を補ってきた.医療や福祉施設でもWeb会議システムを利用してオンライン面会を実施している.しかし,現実には総てが面会出来てはいない.オンライン面会が出来ない理由の一つに,「認知症で理解できず,オンライン面会は難しい」と家族が考えることがある.孤独の解消も作業療法士の重要なテーマと考え,重度認知症高齢者のオンライン面会の様子を紹介し,その有用性について確認をしたい.
【対象と方法】 《オンライン面会の紹介》Web会議サービスZoomを利用し,入所者には15.6型のノートパソコンと対話支援スピーカーComuoon(ユニバーサル・サウンドデザイン製)を使用した.面会は15分以内とし,個室を準備し,家族には施設外から接続してもらった.
《対象とデータ収集の方法》2020年12月から2021年12月までの間に,家族から面会の申込があった特別養護老人ホーム入所者の重度認知症者6名が対象で,全員女性である.全員Mini Mental State Examinationは測定不可,ADLは全介助レベル,アイコンタクトはとれるが言葉による意思疎通は困難であった.面会時の様子を観察するとともに,家族には面会終了時にオンライン面会について次の4点の質問に5段階で回答を求めた.1.ビデオ通話の使いやすさへの満足度.2.ビデオ通話の使い心地への満足度.3.対面の面会を100点とした場合,オンライン面会は何点か.その理由はなにか.4.オンライン面会全般への感想.演者所属機関の倫理委員会の承認を得て,発表については紙面で同意を得ている.
【結果】 6名の面会回数の平均は5.2回(最低1―最高12回)で,使いやすさへの満足度は4.5点,使い心地への満足度は4.2点と家族の満足度は高かった.対面を100とした場合のビデオ通話での面会の評価は83.4点(最低40-最高100点)であった.
事例Aは面会後,一時的に食事量が増えたり覚醒が上がるなどの状態が見られた.事例Bは画面からの家族の呼びかけに反応することはなかったが,家族からは「母に会えるだけで,顔を見る事が出来て十分満足」との感想が毎回寄せられた.事例Cは面会時には閉眼したままだったが,「会話にならないけど,家族のわいわいした雰囲気を画面越しに感じてもらえたかな?」との家族の感想がきかれた.事例A,Bについては,回を重ねるごとに入所者もオンライン面会に慣れる様子が見受けられた.また,全事例とも家族は通信機器の操作には不慣れであった.
【考察】 6名の面会を通して,重度認知症高齢者のオンライン面会は有用と考える.身体を触る,全身を見る,好物を食べさせるなどはオンライン面会では出来ないが,それでも重度認知症高齢者の家族の満足度は非常に高かった.高齢者自身にも食事量が増える,覚醒が上がるなどよい面が観察された例もあった.そして回を重ねるごとに高齢者がオンライン面会に慣れる様子もあった.このことから,対面面会が出来ない場合などに,認知症高齢者にとってオンライン面会は家族や外部とつながる手段のひとつになると考えられる.今回,高性能のスピーカーを利用し,聞こえの問題を解消した.このことで高齢者は家族の呼びかけにかすかにうなづいたり,画面をチラリと見る様子が観察され,そこに重度認知症高齢者にとっての家族の声の重要性と環境設定における作業療法士の役割も認識した.
【対象と方法】 《オンライン面会の紹介》Web会議サービスZoomを利用し,入所者には15.6型のノートパソコンと対話支援スピーカーComuoon(ユニバーサル・サウンドデザイン製)を使用した.面会は15分以内とし,個室を準備し,家族には施設外から接続してもらった.
《対象とデータ収集の方法》2020年12月から2021年12月までの間に,家族から面会の申込があった特別養護老人ホーム入所者の重度認知症者6名が対象で,全員女性である.全員Mini Mental State Examinationは測定不可,ADLは全介助レベル,アイコンタクトはとれるが言葉による意思疎通は困難であった.面会時の様子を観察するとともに,家族には面会終了時にオンライン面会について次の4点の質問に5段階で回答を求めた.1.ビデオ通話の使いやすさへの満足度.2.ビデオ通話の使い心地への満足度.3.対面の面会を100点とした場合,オンライン面会は何点か.その理由はなにか.4.オンライン面会全般への感想.演者所属機関の倫理委員会の承認を得て,発表については紙面で同意を得ている.
【結果】 6名の面会回数の平均は5.2回(最低1―最高12回)で,使いやすさへの満足度は4.5点,使い心地への満足度は4.2点と家族の満足度は高かった.対面を100とした場合のビデオ通話での面会の評価は83.4点(最低40-最高100点)であった.
事例Aは面会後,一時的に食事量が増えたり覚醒が上がるなどの状態が見られた.事例Bは画面からの家族の呼びかけに反応することはなかったが,家族からは「母に会えるだけで,顔を見る事が出来て十分満足」との感想が毎回寄せられた.事例Cは面会時には閉眼したままだったが,「会話にならないけど,家族のわいわいした雰囲気を画面越しに感じてもらえたかな?」との家族の感想がきかれた.事例A,Bについては,回を重ねるごとに入所者もオンライン面会に慣れる様子が見受けられた.また,全事例とも家族は通信機器の操作には不慣れであった.
【考察】 6名の面会を通して,重度認知症高齢者のオンライン面会は有用と考える.身体を触る,全身を見る,好物を食べさせるなどはオンライン面会では出来ないが,それでも重度認知症高齢者の家族の満足度は非常に高かった.高齢者自身にも食事量が増える,覚醒が上がるなどよい面が観察された例もあった.そして回を重ねるごとに高齢者がオンライン面会に慣れる様子もあった.このことから,対面面会が出来ない場合などに,認知症高齢者にとってオンライン面会は家族や外部とつながる手段のひとつになると考えられる.今回,高性能のスピーカーを利用し,聞こえの問題を解消した.このことで高齢者は家族の呼びかけにかすかにうなづいたり,画面をチラリと見る様子が観察され,そこに重度認知症高齢者にとっての家族の声の重要性と環境設定における作業療法士の役割も認識した.