[PJ-5-4] ポスター:高齢期 5急性期病棟における高齢入院患者の身体拘束とテープ付き紙おむつ使用状況の調査
はじめに
急性期病棟において,身体拘束やテープ付き紙おむつが入院中使用される高齢者は多く,高齢者の日常生活活動の阻害因子となる.しかしながら,身体拘束やテープ付き紙おむつの使用状況の変化は十分に検討されていない.本研究の目的は,高齢入院患者の身体拘束とテープ付き紙おむつの使用状況を調査することである.
方法
後方視的前後比較研究を実施した.令和2年8月1日~令和3年3月31日までに入院した患者のうち,作業療法を処方され,介入時に行動・心理症状(Behavioral and Psychological symptoms of dementia;BPSD)が認められた患者を対象とした.重篤な意識障害で従命が困難な患者,入院前の生活場所が自宅以外であった患者,終末期がん患者は対象より除外した.入院時と退院前の2時点の身体拘束の有無と種類,テープ付き紙おむつ使用の有無,精神状態短時間検査改訂日本版(Mini Mental State Examination-Japanese;MMSE-J),機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM)を調査した.身体拘束は,物理的に患者本人の自発的な動きを制限するものと定義して,抑制着,手関節拘束帯,車椅子ベルト,ミトン型手袋,4点柵,ベッドの壁寄せとした.入院時,退院前の身体拘束とテープ付き紙おむつ使用率はMcNemar検定を用い比較した.入院時,退院時のMMSE-J,FIMはWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した.本研究は,研究実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
結果
対象者36名のうち,除外基準16名を除く20名を解析した.(年齢の中央値83.5歳,男性10名女性10名,運動器16名,脳血管2名,呼吸器1名,廃用症候群1名).在院日数の中央値は24.5日であった,BPSDの種類と延べ人数はそれぞれ,活動亢進が関わる症状(興奮,易刺激性,異常行動)が15名,精神病様症状(幻覚)が4名,感情障害が関わる症状(不安・抑うつ)が4名,アパシーが関わる症状(意欲低下)が2名であった.身体拘束のうち,ミトン型手袋,4点柵,ベッドの壁寄せは退院前に全例解除され,抑制着は入院時9名から退院前は2名に減少した.しかしながら,車椅子ベルトは入院時,退院前ともに7名であり変化を認めなかった(p=0.07).テープ付き紙おむつは入院時18名から退院前3名に減少し,統計学的な有意差が見られた(p<0.001).FIMはTotal,Motor,Cognitiveすべてにおいて向上が見られ,それぞれ43.5点から76.0点,25.5点から53.5点,19.0点から23.5点に改善した(p<0.001).MMSE-Jは入院時15.5点から退院前20.0点に向上が見られたが,統計学的な有意差は認めなかった(p=0.087)
考察
テープ付き紙おむつの使用は軽減したことから,テープ付き紙おむつの着用を減らしてトイレでの排泄を促すことは,入院中にBPSDを認めた高齢患者でも実現可能なことが示された.一方,身体拘束の使用は顕著な軽減を認めなかった.特に車椅子ベルトは退院前に最も多く使用されており,認知機能が低下した高齢入院患者が車椅子に乗車した後の転倒予防対策が,身体拘束に頼っていることが考えられる.これらの知見より,急性期において身体拘束はテープ付き紙おむつより中止終了が難しく,身体拘束に頼らない車椅子乗車後の転倒予防対策が課題となることが示唆された.
急性期病棟において,身体拘束やテープ付き紙おむつが入院中使用される高齢者は多く,高齢者の日常生活活動の阻害因子となる.しかしながら,身体拘束やテープ付き紙おむつの使用状況の変化は十分に検討されていない.本研究の目的は,高齢入院患者の身体拘束とテープ付き紙おむつの使用状況を調査することである.
方法
後方視的前後比較研究を実施した.令和2年8月1日~令和3年3月31日までに入院した患者のうち,作業療法を処方され,介入時に行動・心理症状(Behavioral and Psychological symptoms of dementia;BPSD)が認められた患者を対象とした.重篤な意識障害で従命が困難な患者,入院前の生活場所が自宅以外であった患者,終末期がん患者は対象より除外した.入院時と退院前の2時点の身体拘束の有無と種類,テープ付き紙おむつ使用の有無,精神状態短時間検査改訂日本版(Mini Mental State Examination-Japanese;MMSE-J),機能的自立度評価法(Functional Independence Measure;FIM)を調査した.身体拘束は,物理的に患者本人の自発的な動きを制限するものと定義して,抑制着,手関節拘束帯,車椅子ベルト,ミトン型手袋,4点柵,ベッドの壁寄せとした.入院時,退院前の身体拘束とテープ付き紙おむつ使用率はMcNemar検定を用い比較した.入院時,退院時のMMSE-J,FIMはWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した.本研究は,研究実施施設の倫理委員会の承認を得て実施した.
結果
対象者36名のうち,除外基準16名を除く20名を解析した.(年齢の中央値83.5歳,男性10名女性10名,運動器16名,脳血管2名,呼吸器1名,廃用症候群1名).在院日数の中央値は24.5日であった,BPSDの種類と延べ人数はそれぞれ,活動亢進が関わる症状(興奮,易刺激性,異常行動)が15名,精神病様症状(幻覚)が4名,感情障害が関わる症状(不安・抑うつ)が4名,アパシーが関わる症状(意欲低下)が2名であった.身体拘束のうち,ミトン型手袋,4点柵,ベッドの壁寄せは退院前に全例解除され,抑制着は入院時9名から退院前は2名に減少した.しかしながら,車椅子ベルトは入院時,退院前ともに7名であり変化を認めなかった(p=0.07).テープ付き紙おむつは入院時18名から退院前3名に減少し,統計学的な有意差が見られた(p<0.001).FIMはTotal,Motor,Cognitiveすべてにおいて向上が見られ,それぞれ43.5点から76.0点,25.5点から53.5点,19.0点から23.5点に改善した(p<0.001).MMSE-Jは入院時15.5点から退院前20.0点に向上が見られたが,統計学的な有意差は認めなかった(p=0.087)
考察
テープ付き紙おむつの使用は軽減したことから,テープ付き紙おむつの着用を減らしてトイレでの排泄を促すことは,入院中にBPSDを認めた高齢患者でも実現可能なことが示された.一方,身体拘束の使用は顕著な軽減を認めなかった.特に車椅子ベルトは退院前に最も多く使用されており,認知機能が低下した高齢入院患者が車椅子に乗車した後の転倒予防対策が,身体拘束に頼っていることが考えられる.これらの知見より,急性期において身体拘束はテープ付き紙おむつより中止終了が難しく,身体拘束に頼らない車椅子乗車後の転倒予防対策が課題となることが示唆された.