第56回日本作業療法学会

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ポスター

高齢期

[PJ-6] ポスター:高齢期 6

Sat. Sep 17, 2022 11:30 AM - 12:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PJ-6-1] ポスター:高齢期 6PSBの使用をきっかけに食事の自力摂取を獲得できた四肢麻痺,認知症を呈した高齢者

後藤 祐希1丹野 拓史1齊藤 雄一郎1 (1IMS(イムス)グループ 医療法人社団明生会 イムス札幌内科リハビリテーション病院リハビリテーション科)

【はじめに】今回,化膿性椎体炎,硬膜外腫瘍,頚椎症により四肢麻痺を呈し,日常生活動作(以下ADL)全介助となった事例を担当した.重度認知症があり,施設生活で介助が習慣化し作業剥奪を危惧し,少しでも自力で行える作業を作り,生活での作業数を減らさないためにポータブルスプリングバランサー(以下PSB)を使用した食事練習を行った.段階付けて介入していく中でPSBを離脱して,食事の自立が可能となり,更には整容や更衣などの活動も獲得できた.本報告の目的は,PSBを使用した食事介入の一助とすることである.
【事例紹介】80歳代女性.診断名:黄色ブドウ球菌(以下MSSA)血症後廃用,化膿性椎体炎,硬膜外腫瘍,頚椎症(C3-4,C7-8),糖尿病.Y月Z日自宅で転倒,頸部痛を自覚.Z+3日体動困難となり,救急搬送後に即日入院.血液培養からMSSA検出,頸部痛は化膿性椎体炎と硬膜外腫瘍の所見を認める.同時に転倒にて頚椎症増悪.病前独居,独歩,ADL自立,方向性は施設.尚,本報告に際し本人,家族に書面にて説明し同意を得た.
【作業療法評価】徒手筋力テスト(以下MMT)は三角筋前部繊維2/2+,上腕二頭筋2/3,上腕三頭筋2/2,橈側・尺側手根屈筋3/4,腹直筋2,握力は右0.5kg/左2.3kg,両上肢~手指にかけて痺れあり.起居動作や端座位で背部に疼痛あり.長谷川式認知機能検査(以下,HDS-R)8点.基本動作:全介助,車椅子姿勢:体幹の安定性低下もシーティングを行うことで姿勢崩れは軽減,食事:上肢の抗重力位保持困難,自力摂取をするには徒手的誘導が必要.スプーン把持をするも持続的に把持し続けられず,食事は全介助.疾患に加え,長期臥床による廃用により筋力低下も認めた.廃用や不全麻痺に対して改善の可能性を考え,少しでも自力で行える作業を作るため,「食事の自力摂取が出来ること」を目標に介入した.
【経過】端坐位練習や離床時間の設定を行う中で体幹の安定性向上を目指すとともに,上肢のコントロールを補助できるPSBを使用した食事練習を実施.前腕回内外や手関節の動作が不十分なため,肘の屈伸動作で食物をさす,口に運ぶことが可能なフォークの使用を選択.皿の位置の変更,食具の持ち直しなどは介助で行い,概ね半量近く自力摂取が可能となる.2週間程度続けていく中でリーチイン時の上肢と頚部・体幹の協調が可能となり,肩周囲や肘周囲の筋力向上を認め,特に左での抗重力位保持が可能となった.PSBでは前腕や手関節の動作のサポートは難しく,5週でPSBの使用は終了,徒手的誘導にて介入した.前腕の回内外や手関節の動作のサポートをする中で,皿からすくい,口元へ運ぶことが可能となり,8週目で嗜好によるが環境設定した中でスプーンでの全量自力摂取が可能となる.
【結果】MMT三角筋前部繊維3+/5,上腕二頭筋4/5,上腕三頭筋3+/4+,橈側・尺側手根屈筋3/4,腹直筋3+,握力は右0.5kg/左4.5kg,痺れは残存. HDS-R10点.起居動作:軽介助,移乗動作:中等度介助,食事:セッティング後自立,整容や上衣更衣が可能となる.離床中に新聞を読む,ボール投げや貼り絵のレクが可能となる.
【考察】動作上不十分な筋活動をPSBで適度に補うことで,必要な筋力の向上に加え,動作イメージの獲得に繋がったのではないかと考える.また,PSBでは補えない前腕や手関節の細かな動きに関しては,徒手的に介入するという段階に切り替えたことで,PSBを使用しない中での食事の自力摂取の獲得に繋がったと考える.これらの動作の獲得は,更に整容や更衣,離床中の余暇活動に繋がり,主体的な生活に近づくことが出来たと考える.