[PJ-9-1] ポスター:高齢期 9重度認知症高齢者における非言語的なサインのセラピストによる評価の検討
絵カードを用いた作業療法評価の一事例を通して
【はじめに】認知症者の作業ニーズやその背景を明らかにすることは作業療法介入の基本として取り組まれている.しかし,重度認知症者ではその病態や進行度により面接での聞き取りは困難となる場合が多く,評価者は残存したコミュニケーション手段を見極め,作業ニーズを模索していく必要がある.ところで,認知症高齢者の作業ニーズを捉えるのに有効な手段として利用されるツールの一つに「認知症高齢者の絵カード評価法(以下,APCD)」がある.この評価ツールは作業内容の理解と視覚処理がしやすいよう,線画によるイラストと作業名が記載された70枚の絵カードから構成されている.「認知症高齢者の絵カード評価法(APCD)使用者手引書」では,語りが聞きだせないクライエントに対しては,非言語的なサインを見逃さずに観察する必要があるとしている.また,臨床でも幅広く使用されており,非言語的な表出を手掛かりに作業を抽出した事例などが報告されている.筆頭演者自身もクライエントの語りを聴取する以外に「注視時間」や「絵カードの把持時間」,「評価者に向ける視線」などの意思表示を読み取ることが大事だと感じている.しかし,評価者が絵カードに対して重度認知症高齢者が表出する非言語的なサインをどのように読み取っているのかの詳細は不明であり,また評価者によってサインの解釈に違いがある可能性も考えられる.そこで今回は,APCD実施中に表出されたある重度認知症高齢者の反応(サイン)における評価者間の解釈についての一致状況を検討することにした.
【目的】重度認知症高齢者の絵カードに対する反応(サイン)を複数のセラピストで観察し,その解釈の一致度を明らかにする.
【方法】対象はA病院の急性期病棟に入院している認知症高齢者1名(90代後半,女性,アルツハイマー型認知症,肺炎,HDS-R実施困難,CDR3,FIM認知項目7/35点)である.評価者はA病院に勤務する5名のセラピスト(OT3名,PT1名,ST1名,女性5名,平均経験年数4.60年)である.まず対象者が APCD による評価を受けているシーンの録画記録の中から,絵カードに対し何らかの反応(サイン)を示している場面を全27シーン(絵カード27枚分)切り出した.次に評価者5名に各シーンを観察させ,「絵カードに関心を示す反応の有無」を5段階(1:反応がない,2:反応した可能性が低い,3:判断に迷う,4:反応した可能性が高い,5:反応あり) で回答するよう求めた.分析においては,4または5の回答を「関心あり」の解釈,1または2の回答を「関心なし」の解釈とし,評価者5名の解釈の一致率をシーン毎に求めた.なお本研究は家族への同意を得ており,研究協力施設で倫理審査委員会の承認を受けた(承認番号:21004).
【結果】評価者5名の解釈の一致状況は,100%一致が4シーン(「関心あり3,なし1」),80%一致が8シーン(「関心あり7,なし1」),60%一致が9シーン(「関心あり5,なし4」)であった.全体としては,全27シーン中12シーンで,80%以上の解釈の一致がみられた.
【考察】本研究の結果から重度認知症高齢者におけるAPCDで評価者間の解釈が100%一致する絵カードへの反応(サイン)があることがわかった.このことからクライエントの興味や関心のある作業を探るための評価法であるAPCDは重度認知症高齢者の表出する絵カードへの反応(サイン)から興味や関心のある作業を抽出できる可能性があり,重度認知症高齢者の作業ニーズを捉える有用な評価法であることが示唆された.今後,対象人数を増やして検討を重ね,重度認知症高齢者においてセラピストが非言語的なサインをどのように読み取っているのか明らかにしたいと考える.
【目的】重度認知症高齢者の絵カードに対する反応(サイン)を複数のセラピストで観察し,その解釈の一致度を明らかにする.
【方法】対象はA病院の急性期病棟に入院している認知症高齢者1名(90代後半,女性,アルツハイマー型認知症,肺炎,HDS-R実施困難,CDR3,FIM認知項目7/35点)である.評価者はA病院に勤務する5名のセラピスト(OT3名,PT1名,ST1名,女性5名,平均経験年数4.60年)である.まず対象者が APCD による評価を受けているシーンの録画記録の中から,絵カードに対し何らかの反応(サイン)を示している場面を全27シーン(絵カード27枚分)切り出した.次に評価者5名に各シーンを観察させ,「絵カードに関心を示す反応の有無」を5段階(1:反応がない,2:反応した可能性が低い,3:判断に迷う,4:反応した可能性が高い,5:反応あり) で回答するよう求めた.分析においては,4または5の回答を「関心あり」の解釈,1または2の回答を「関心なし」の解釈とし,評価者5名の解釈の一致率をシーン毎に求めた.なお本研究は家族への同意を得ており,研究協力施設で倫理審査委員会の承認を受けた(承認番号:21004).
【結果】評価者5名の解釈の一致状況は,100%一致が4シーン(「関心あり3,なし1」),80%一致が8シーン(「関心あり7,なし1」),60%一致が9シーン(「関心あり5,なし4」)であった.全体としては,全27シーン中12シーンで,80%以上の解釈の一致がみられた.
【考察】本研究の結果から重度認知症高齢者におけるAPCDで評価者間の解釈が100%一致する絵カードへの反応(サイン)があることがわかった.このことからクライエントの興味や関心のある作業を探るための評価法であるAPCDは重度認知症高齢者の表出する絵カードへの反応(サイン)から興味や関心のある作業を抽出できる可能性があり,重度認知症高齢者の作業ニーズを捉える有用な評価法であることが示唆された.今後,対象人数を増やして検討を重ね,重度認知症高齢者においてセラピストが非言語的なサインをどのように読み取っているのか明らかにしたいと考える.