第56回日本作業療法学会

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ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-1] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 1

Fri. Sep 16, 2022 12:00 PM - 1:00 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PK-1-1] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 1回復期リハビリテーション病棟における認知機能障害者のQOLに対する影響の仮説検証

青柳 翔太1泉 良太2 (1JA静岡厚生連 遠州病院,2聖隷クリストファー大学)

【はじめに】
認知症者のQOLにはADLやBPSDの重症化が影響を与えており,QOL向上にはその改善が求められている.意味ある作業への介入はQOL向上に効果があり(山田,2018),作業適応が良好であることは,その人らしい状態であるが,その人らしさの属性の一つである性格を含めた研究については殆ど報告がない.
【目的】
本研究の目的は「ADLや作業適応,性格が認知機能障害者のQOLに影響を与える」という仮説を検証することである.
【対象と方法】
対象は当院回復期リハ病棟に入院し,認知機能障害を認め,質問を理解できる者とした.調査項目は①認知機能はMMSEとNMスケール(得点範囲0-30)②QOL評価はJapanese Quality of life inventory for elderly with dementia(QOL-D:得点範囲0-4),日本語版Dementia Quality of life Instrument(DQOL:得点範囲0-5)③ADLは機能的自立度評価法(FIM)④作業適応は作業に関する自己評価・改訂版(OSA:有能性の得点範囲21-84,価値の得点範囲8-32)⑤性格はNEO-Five Factor Inventory(NEO-FFI:得点範囲0-48)を用いた.解析方法は「認知機能障害者のQOLに対して,ADL,作業適応,性格の各々が直接影響を与え,性格はADLと作業適応を通じて間接的にもQOLに影響を与える」という仮説モデルを立てた.構造方程式モデリングを用いて,モデル適合度は Comparative Fit Index(CFI)及びRoot Mean Squares Error of Approximation(RMSEA)を採用し,それぞれの標準化係数を算出し,直接効果と間接効果を比較した.統計ソフトはIBM SPSS Amos 24を使用し,有意水準は5%とした.倫理的配慮として当院の倫理委員会の審査で承認を得てから実施した.
【結果】
対象となった135名のうち,101名の研究参加が得られた(参加率74.8%).基本属性は女性74名(73.3%),年齢83.3歳,MMSE:22.9点,QOL-D:3.3点,DQOL:2.9点,FIM:98.8点,OSAは自己有能性:54.3点,自己価値:71.3点,環境有能性:22.7点,環境価値:28.1点,NEO-FFIは外向性24.7点,開放性23.8点,神経症傾向24.0,勤勉性29.7点,協調性が29.3点であった.パス解析の結果,最終モデル適合度はCFI=0.922,RMSEA=0.061と許容範囲であった.標準化係数は作業適応からQOLは0.78,ADLからQOLは0.54,認知機能から作業適応は0.53,認知機能からADLは0.66,性格から作業適応は0.41と有意であった.性格からQOLは0.24,認知機能からQOLは0.04,性格からADLは0.14とそれぞれ有意ではなかった.性格からQOLへの直接効果は0.24であったが,性格が作業適応を介してQOLに影響を与えるという間接効果は0.32と直接効果よりも高かった.
【考察】
認知症者のQOLに関連するメタアナリシス(Martyr A,2018)ではADLの向上や自己評価による健康の向上は中等度の影響があることからも本研究のADLと作業適応も同様の傾向を示した.仲間との交流や一人での活動を好むなど性格によって求める活動は違うため,本研究の性格は作業適応を介して間接的にQOLに影響を与えるという仮説が支持された可能性がある.今後は縦断的研究を行い,因果関係を明らかにすることで,意味ある作業を支援するために性格が介入の一助になるのではないかと考える.