第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PK-2-1] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 2自動車運転再開評価における神経心理学的検査項目の再検討のための実態調査

榊原 望1今井 卓也1小澤 貴明1長谷川 智1山浦 卓哉1 (1富岡地域医療企業団 公立七日市病院リハビリテーション部リハビリテーション技術科)

【はじめに】 
 当院での自動車運転再開評価における神経心理学的検査は,類似項目も含み評価に時間を要し,患者や検者に負担が生じていた.そこで検査項目再検討のための一助として,実態把握調査を実施したので報告する.本研究は院内倫理審査委員会の審査で承認を得て実施した.
【目的】 
 神経心理学的検査結果と院内評価による運転再開可否判定との関連性を明らかにする.
【方法】
 平成27年12月~令和2年2月に自動車運転再開評価を行った脳損傷者91名(男性66名,女性25名),平均年齢66.73±11.0歳である.ただし,視野欠損のあった者は除外した.
 年齢,性別,MMSE,TMT-A/B,レイ複雑図形検査(以下ROCF)の模写/再生,かな拾い検査の無意味文,コース立方体組み合わせテスト(以下KBDT),三宅式記銘力検査の無関係3回目,前頭葉機能検査(以下FAB),標準注意検査法(以下CAT)のDigit Span (以下DS) 順唱/逆唱,Tapping Span (以下TS)順唱/逆唱,Visual Cancellation(以下VC) 3 所要時間/正答率,VCか 所要時間/正答率,Auditory Detection (以下AD)正答率/的中率,Symbol Digit Modalities Test(以下SDMT),Memory Updating (以下MU)3/ 4,Paced auditory serial addition(PASAT) 2秒条件/1秒条件,Position Stroop(以下PS) 所要時間/正答率,行動性無視検査日本版(以下BIT)の通常検査,カンファレンスでの運転再開可否の結果より運転再開可能群・運転再開不可群の判定を情報収集した.
 抽出データをもとに27項目の神経心理学的検査結果(点数,所要時間)と運転再開の可否(ダミー変数として運転再開可能群を1,運転再開不可群を0)を,Spearmanの順位相関係数を用いて分析した.有意水準は5%未満とした.
【結果】
 MMSE(r=0.501,p<0.01),TMT-A(r=-0.519,p<0.01),TMT-B(r=-0.636,p<0.01),ROCF模写(r=0.487,p<0.01),かな拾い検査(r=0.420,p<0.01),KBDT(r=0.574,p<0.01),三宅式記銘力検査(r=0.520,p<0.01),FAB(r=0.575,p<0.01),DS逆唱(r=0.461,p<0.01),VC-3所要時間(r=-0.482,p<0.01),VC-か所要時間(r=-0.451,p<0.01),SDMT(r=0.559,p<0.01),MU4(r=0.444,p<0.01),PASAT2秒(r=0.434,p<0.01),PS所要時間(r=-0.591,p<0.01)は中等度の相関を認めた.ROCF再生(r=0.372,p<0.01), DS順唱(r=0.283,p<0.01), TS順唱(r=0.308,p<0.01),TS逆唱(r=0.291,p<0.01), VC-3正答率(r=0.305,p<0.01), VC-か正答率(r=0.353,p<0.01),AD的中率(r=0.257,p<0.05),MU3(r=0.387,p<0.01), PASAT1秒(r=0.335,p<0.01),PS正答率(r=0.368,p<0.01),BIT(r=0.250,p<0.05)は弱い相関を認めた.AD正答率(r=0.170,p>0.05)は相関を認めなかった.
【考察】
 今回,視覚性注意課題のTMT-A,TMT-B,VC-3とVC-かの所要時間は運転可否と中等度の関連を認めた.一方で,聴覚性注意課題のAD正答率は関連を認めなかった.渡邉(2016)は,運転時に受容する感覚形式の90%は視覚であると述べている.運転時の情報処理過程に関わる認知機能と対応する検査は,視覚探索の過程で視覚性注意,情報の短期保存で視覚性短期記憶,予測において視空間認知能力,判断に遂行機能などの関与が考えられていることから,聴覚よりも視覚に関する項目で相関が高くなったと考える.加藤ら(2006)は,CATのサブテストは加齢に伴い注意検査の成績が低下すると述べている.本研究でも,加齢変化の影響があった可能性があると考えられる.