[PK-3-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 3傍腫瘍性辺縁系脳炎患者の家族に対する退院支援の実践
【はじめに】
傍腫瘍性辺縁系脳炎(以下PLE)は末梢臓器に悪性腫瘍を有する患者に大脳辺縁系の症状が出現する疾患である.PLEの臨床経過としては亜急性期ないしは慢性の経過を辿り進行性に増悪し2ヶ月以降は改善が困難な事例が多いとされ,その神経症状は一般的に免疫療法で改善する例が多い.しかし,一部では健忘が残存する場合なども報告されており,社会参加のためには家族などの支援が必要である.そこで問題になるのが介護負担である.介護負担とは「親族を介護した結果,介護者が情緒的,身体的健康,社会生活及び経済状態に関して被った被害の程度」とされている(Zarit SH, et al. 1980).これらのことから,患者とそれを支える家族への介入が充当と思われる.今回PLEにより意識障害,見当識障害,注意機能低下を呈した事例の家族に対して,日常生活における注意すべき場面の指導を行った結果,介護不安感が軽減し自宅退院につながった事例を経験したので報告する.今回の報告は,ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報保護に留意し事例に説明し,書面で同意を得た.
【事例紹介(入院日をX日とする)】
事例は70代前半の男性で,病前は妻と二人で暮らしていた.現病歴について,X-37日より意識障害,見当識障害,注意機能低下が出現し,さらに妻への暴力行為等が見られたため,精査目的で当院に入院した.
【初回評価】
X+6日より作業療法(OT)が開始された.日常生活動作(ADL)の評価ではFunctional Independence Measure(FIM)27点で全般的に介助が必要であった.また,病室では抑制帯が必要であった.行動観察ではスタッフへの暴力や暴言,短期記憶の低下,徘徊を認め,面談内容からも病識の欠如と理解力の低下が考えられた.
以上より,介入初期においては概日リズムの調整を目的に同じ時間に介入し,整容動作練習や外気浴等を中心に実施した.さらに精神科リエゾンチームと連携し薬剤調整の他に日中は極力抑制帯を減らす時間を設けた.免疫療法として,ステロイドパルス,免疫グロブリン,エンドキサンパルス療法が行われていた.
【介護者への介入】
X+90日において,ADLはFIM 116点まで改善が認められた.またMMSE -Jは28点で見当識障害の改善を認めた.一方,Trail Making Test Part B 189秒で年齢平均より遅く,行動観察においても同時課題における処理の困難さを認め,注意の分割と転換能力の低下が残存していた.事例の希望は「自宅で生活したい」であり,そのためには家族の協力が必須であった.X+106日に外出練習を行い,その前に妻に対してZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を使用して介護負担について評価したところ,77点で高い不安を認めた.不安の内容については,また暴力を振るわないかどうか,今後の介護に対する心配を述べていた.外泊練習前には,刃物等危険物の保管方法,浴槽の出入りの介助方法の指導,転倒リスクのある場面について指導した.計3回の外泊練習後にJ-ZBIで再評価し,52点で不安感の軽減を認め,自宅に退院となった.
【考察】
介護者は介護に対する身体的不安及び精神的負担が大きいと報告されており,介護者に対する介入が必要である.妻との初回面談時には介護に対する不安があったため,介助方法指導が必要と考えた.外泊のタイミングに合わせて,J-ZBIを使用し妻が感じる介護の不安を共有した.それに沿った介助方法を指導したことで,不安感の軽減に寄与したと思われる.
傍腫瘍性辺縁系脳炎(以下PLE)は末梢臓器に悪性腫瘍を有する患者に大脳辺縁系の症状が出現する疾患である.PLEの臨床経過としては亜急性期ないしは慢性の経過を辿り進行性に増悪し2ヶ月以降は改善が困難な事例が多いとされ,その神経症状は一般的に免疫療法で改善する例が多い.しかし,一部では健忘が残存する場合なども報告されており,社会参加のためには家族などの支援が必要である.そこで問題になるのが介護負担である.介護負担とは「親族を介護した結果,介護者が情緒的,身体的健康,社会生活及び経済状態に関して被った被害の程度」とされている(Zarit SH, et al. 1980).これらのことから,患者とそれを支える家族への介入が充当と思われる.今回PLEにより意識障害,見当識障害,注意機能低下を呈した事例の家族に対して,日常生活における注意すべき場面の指導を行った結果,介護不安感が軽減し自宅退院につながった事例を経験したので報告する.今回の報告は,ヘルシンキ宣言に基づき,個人情報保護に留意し事例に説明し,書面で同意を得た.
【事例紹介(入院日をX日とする)】
事例は70代前半の男性で,病前は妻と二人で暮らしていた.現病歴について,X-37日より意識障害,見当識障害,注意機能低下が出現し,さらに妻への暴力行為等が見られたため,精査目的で当院に入院した.
【初回評価】
X+6日より作業療法(OT)が開始された.日常生活動作(ADL)の評価ではFunctional Independence Measure(FIM)27点で全般的に介助が必要であった.また,病室では抑制帯が必要であった.行動観察ではスタッフへの暴力や暴言,短期記憶の低下,徘徊を認め,面談内容からも病識の欠如と理解力の低下が考えられた.
以上より,介入初期においては概日リズムの調整を目的に同じ時間に介入し,整容動作練習や外気浴等を中心に実施した.さらに精神科リエゾンチームと連携し薬剤調整の他に日中は極力抑制帯を減らす時間を設けた.免疫療法として,ステロイドパルス,免疫グロブリン,エンドキサンパルス療法が行われていた.
【介護者への介入】
X+90日において,ADLはFIM 116点まで改善が認められた.またMMSE -Jは28点で見当識障害の改善を認めた.一方,Trail Making Test Part B 189秒で年齢平均より遅く,行動観察においても同時課題における処理の困難さを認め,注意の分割と転換能力の低下が残存していた.事例の希望は「自宅で生活したい」であり,そのためには家族の協力が必須であった.X+106日に外出練習を行い,その前に妻に対してZarit介護負担尺度日本語版(J-ZBI)を使用して介護負担について評価したところ,77点で高い不安を認めた.不安の内容については,また暴力を振るわないかどうか,今後の介護に対する心配を述べていた.外泊練習前には,刃物等危険物の保管方法,浴槽の出入りの介助方法の指導,転倒リスクのある場面について指導した.計3回の外泊練習後にJ-ZBIで再評価し,52点で不安感の軽減を認め,自宅に退院となった.
【考察】
介護者は介護に対する身体的不安及び精神的負担が大きいと報告されており,介護者に対する介入が必要である.妻との初回面談時には介護に対する不安があったため,介助方法指導が必要と考えた.外泊のタイミングに合わせて,J-ZBIを使用し妻が感じる介護の不安を共有した.それに沿った介助方法を指導したことで,不安感の軽減に寄与したと思われる.