[PK-5-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 5就労支援事業所における高次脳障害者1症例の経過報告
Self-awarenessの変化に着目して
<はじめに>
高次脳機能障害者の就労支援の関わりの多くは,医療機関から始まり地域の就労支援事業所(以下,事業所)へ流れていく.事業所では医療機関との連携を図り,情報交換や協力体制の構築を行い,利用者のスムーズな支援体制を整えている.事業所では利用者の能力やライフヒストリー,個別ニードに合わせた支援が行われ,その支援は多様性が高い.しかし,実際の就労現場では,就労している集団に合わせた社会交流技能や問題解決能力を就労者に求められることもある.今回,集団内におけるSelf-awarenessに焦点を当てた訓練(以下,集団訓練)を受けた高次脳機能障害者A氏について,その後の経過について報告する.
尚,本研究は関西福祉科学大学倫理委員会の承認を得て実施している(承認番号:20-33).
<目的>
Self-awareness獲得後,A氏の事業所での訓練の取り組みや過ごし方の変化を明らかにする.
<事例紹介>
A氏は50代で女性である.X年11月に仕事中に倒れ救急搬送され,脳出血と診断される.著明な運動麻痺は認められず,高次脳機能障害が残存し,リハビリを受ける.退院後,就労復帰されるも集中力・理解力・体力の低下によって以前のように仕事ができず就労継続が困難となる.相談機関を経てX+2年7月就労を目指し,まずは生活リズムの構築を目標に自立訓練を開始する.同年12月より,集団訓練を実施した.
<方法>
集団訓練は,認知行動療法に基づき個別面談と,集団ロールプレイにて構成される.期間は,週1回90分程度で,合計360分にて行われた.参加者の障害像は限定せず,就労に意欲のある者,継続して訓練に参加できる者とした.集団訓練参加後は,集団訓練前と同様の事業所の通常訓練を受けることとした.評価は訓練前3か月前のBaseLine(以下,BL),訓練開始前のPre,訓練終了直後のPostに加え,訓練後6か月間の本人の様子を事業所支援員に聞き取り調査を行った.
<結果>
集団訓練参加者は3名で,A氏に加え,療育手帳取得者2名であった.A氏は,BLのWAIS-ⅣはFSIQ54/VCI62/PRI68/WMI67/PSI60で,Self-awareness評価(以下,SRSI)は6/8/5(問題の気づき/戦略の気づき/変化の動機付け)だった.PreのSRSIは6.5/5/8だった.PostのSRSIは6/10/7.3だった.X+3年4月に集団訓練が終了し,PC打ち込み作業での傾眠傾向はあるものの,体を動かす軽作業や協働作業では改善がみられた.集団訓練以前は,なんとなく来所していたが,訓練以降は目標をもって作業に参加するようになり,意欲が上がっている様子だった.作業や指示のわからないことの発信が増え,職員への質問の頻度が増えている.寝坊や遅刻を繰り返していたが,頻度が少なくなり,生活リズムが整い始めてきた.X+4年を目途に就労継続支援への移行を新たな目標となった.
<考察>
集団訓練は,目標設定,戦略生成,振り返りの練習を繰り返した.また,集団訓練以降も他の作業へ意欲が広がり,維持されている.さらに,A氏は,病前より人との関わりを好み,責任感の強い性格であった.一日の目標をもって協働作業に参加し,誰かの役に立っていると感じることは,A氏の自己効力感を高め,生活リズムを整えることに影響しているのではないかと考える.
高次脳機能障害者の就労支援の関わりの多くは,医療機関から始まり地域の就労支援事業所(以下,事業所)へ流れていく.事業所では医療機関との連携を図り,情報交換や協力体制の構築を行い,利用者のスムーズな支援体制を整えている.事業所では利用者の能力やライフヒストリー,個別ニードに合わせた支援が行われ,その支援は多様性が高い.しかし,実際の就労現場では,就労している集団に合わせた社会交流技能や問題解決能力を就労者に求められることもある.今回,集団内におけるSelf-awarenessに焦点を当てた訓練(以下,集団訓練)を受けた高次脳機能障害者A氏について,その後の経過について報告する.
尚,本研究は関西福祉科学大学倫理委員会の承認を得て実施している(承認番号:20-33).
<目的>
Self-awareness獲得後,A氏の事業所での訓練の取り組みや過ごし方の変化を明らかにする.
<事例紹介>
A氏は50代で女性である.X年11月に仕事中に倒れ救急搬送され,脳出血と診断される.著明な運動麻痺は認められず,高次脳機能障害が残存し,リハビリを受ける.退院後,就労復帰されるも集中力・理解力・体力の低下によって以前のように仕事ができず就労継続が困難となる.相談機関を経てX+2年7月就労を目指し,まずは生活リズムの構築を目標に自立訓練を開始する.同年12月より,集団訓練を実施した.
<方法>
集団訓練は,認知行動療法に基づき個別面談と,集団ロールプレイにて構成される.期間は,週1回90分程度で,合計360分にて行われた.参加者の障害像は限定せず,就労に意欲のある者,継続して訓練に参加できる者とした.集団訓練参加後は,集団訓練前と同様の事業所の通常訓練を受けることとした.評価は訓練前3か月前のBaseLine(以下,BL),訓練開始前のPre,訓練終了直後のPostに加え,訓練後6か月間の本人の様子を事業所支援員に聞き取り調査を行った.
<結果>
集団訓練参加者は3名で,A氏に加え,療育手帳取得者2名であった.A氏は,BLのWAIS-ⅣはFSIQ54/VCI62/PRI68/WMI67/PSI60で,Self-awareness評価(以下,SRSI)は6/8/5(問題の気づき/戦略の気づき/変化の動機付け)だった.PreのSRSIは6.5/5/8だった.PostのSRSIは6/10/7.3だった.X+3年4月に集団訓練が終了し,PC打ち込み作業での傾眠傾向はあるものの,体を動かす軽作業や協働作業では改善がみられた.集団訓練以前は,なんとなく来所していたが,訓練以降は目標をもって作業に参加するようになり,意欲が上がっている様子だった.作業や指示のわからないことの発信が増え,職員への質問の頻度が増えている.寝坊や遅刻を繰り返していたが,頻度が少なくなり,生活リズムが整い始めてきた.X+4年を目途に就労継続支援への移行を新たな目標となった.
<考察>
集団訓練は,目標設定,戦略生成,振り返りの練習を繰り返した.また,集団訓練以降も他の作業へ意欲が広がり,維持されている.さらに,A氏は,病前より人との関わりを好み,責任感の強い性格であった.一日の目標をもって協働作業に参加し,誰かの役に立っていると感じることは,A氏の自己効力感を高め,生活リズムを整えることに影響しているのではないかと考える.