[PK-5-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 5環境調整が中核症状を呈する者の食事動作に与える影響
シングルシステムデザインを用いて
【序論】食事動作は,人が生きていく上で必要不可欠な動作であり,必要なセルフケア項目のひとつである.しかしHurleyVL(New York:Springer Publishing, pp48-67,1998)は,認知症高齢者は,脳機能の病態変化によって認知症前期には記憶障害,判断力の低下,失行のために摂食困難となりやすく,後半では神経・筋肉の状態の悪化により摂食困難になると述べており,介護負担感が高まる事が多い.その為,作業療法士には,食事動作の質の向上や介護負担の軽減を目指した適切な食事環境の選定が求められる.現在,認知症状を呈する高齢者への作業療法介入は報告されているものの,食事環境の選定が食事動作に与える影響についての報告は僅少であり,検討の余地が残されている.
【目的】本研究は,中核症状を呈する者の食事動作能力の質の向上に向けた作業療法介入方法の開発に資する知見を得る事を目的とし,中核症状を呈する高齢者の食事動作時における食事環境の調整が与える影響についてシングルシステムデザインを用いて検討した.
【方法】本研究は発表にあたり症例とご家族に説明の上,同意を得ている.対象は中核症状を呈する1症例とした.対象者の基本情報は左側頭葉梗塞を呈した症例であり,既往歴に硬膜下血種を認めていた.年齢は80歳後半,性別は女性,介護度は要介護4であった.作業療法評価はMMSE・SLTA実施困難だが,簡単な意思疎通は可能であった.Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia+Questionnaire(BPSD+Q)において重症度42/135,負担度45/135,日常生活自立度(寝たきり度)ランクB1,認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa,Functional Independence Measureにて食事3点であった.食事場面ではお皿の右側の食べ残しが見られたことから,おかずのかき集めに介助を必要とした.加えて誘導が無ければ右手を使おうとされない場面や食器の適切な使用が困難である場面が見られた.研究デザインは,シングルシステムデザインとした.アウトカム指標は,食事開始から食事終了時までの食事摂取時間とした.測定は担当作業療法士が昼食時の食器に手が触れた瞬間を食事開始とし,食器を置いた瞬間を終了時とし計測した.ベースライン期では,通常時の使用している対面式の16人掛けテーブルの中央の位置,食形態は刻み食,お盆上の食器の配置は統一せず実施した.介入期では16掛けテーブルの左端の席で統一し,お盆上の食器の位置は左寄りに統一,食形態は一口大へと変更した.研究期間は,ベースライン期を7日間,介入期を7日間とした.結果の判定は目視法にて確認した.
【結果】ベースライン期の平均値22分52秒(SD 52.8),介入期の平均値17分48秒(SD 71.3)であった.目視法にて,ベースライン期と比べて介入期にて水準の低下を認めた.
【考察】本研究結果から,食事の環境設定は中核症状を呈する者の食事動作時の食事摂取時間の軽減に貢献できる可能性が示唆された.今回,食事集中できる環境を調整したことで精神的な落ち着きを促し,食事摂取時間の短縮に繋がったと考える.本研究の限界と課題として,本研究結果は1症例であり,結果の一般化には限界がある.今後は多標本による検討が望まれると考える.
【目的】本研究は,中核症状を呈する者の食事動作能力の質の向上に向けた作業療法介入方法の開発に資する知見を得る事を目的とし,中核症状を呈する高齢者の食事動作時における食事環境の調整が与える影響についてシングルシステムデザインを用いて検討した.
【方法】本研究は発表にあたり症例とご家族に説明の上,同意を得ている.対象は中核症状を呈する1症例とした.対象者の基本情報は左側頭葉梗塞を呈した症例であり,既往歴に硬膜下血種を認めていた.年齢は80歳後半,性別は女性,介護度は要介護4であった.作業療法評価はMMSE・SLTA実施困難だが,簡単な意思疎通は可能であった.Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia+Questionnaire(BPSD+Q)において重症度42/135,負担度45/135,日常生活自立度(寝たきり度)ランクB1,認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲa,Functional Independence Measureにて食事3点であった.食事場面ではお皿の右側の食べ残しが見られたことから,おかずのかき集めに介助を必要とした.加えて誘導が無ければ右手を使おうとされない場面や食器の適切な使用が困難である場面が見られた.研究デザインは,シングルシステムデザインとした.アウトカム指標は,食事開始から食事終了時までの食事摂取時間とした.測定は担当作業療法士が昼食時の食器に手が触れた瞬間を食事開始とし,食器を置いた瞬間を終了時とし計測した.ベースライン期では,通常時の使用している対面式の16人掛けテーブルの中央の位置,食形態は刻み食,お盆上の食器の配置は統一せず実施した.介入期では16掛けテーブルの左端の席で統一し,お盆上の食器の位置は左寄りに統一,食形態は一口大へと変更した.研究期間は,ベースライン期を7日間,介入期を7日間とした.結果の判定は目視法にて確認した.
【結果】ベースライン期の平均値22分52秒(SD 52.8),介入期の平均値17分48秒(SD 71.3)であった.目視法にて,ベースライン期と比べて介入期にて水準の低下を認めた.
【考察】本研究結果から,食事の環境設定は中核症状を呈する者の食事動作時の食事摂取時間の軽減に貢献できる可能性が示唆された.今回,食事集中できる環境を調整したことで精神的な落ち着きを促し,食事摂取時間の短縮に繋がったと考える.本研究の限界と課題として,本研究結果は1症例であり,結果の一般化には限界がある.今後は多標本による検討が望まれると考える.