[PK-5-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 5生活期の外傷性脳損傷者に対する通所リハビリテーションでの集団プログラム・個別対応の支援経過
【はじめに】 今回,離職を繰り返し,疲労や抑うつ感が生じていた外傷性脳損傷者を担当した.通所施設での集団プログラムと個別対応による支援を行った結果,障害認識の変化や,記憶の代償手段,疲労への対処行動を獲得し,抑うつ症状の改善を認めたため,以下に報告する.
【症例紹介】 40歳台後半の男性,妻と子の3人暮らし.ADLは自立.X年の中学在学中に暴行を受け入院し,水頭症と診断.X+3年に階段から転落し入院.専門学校卒業後に就職.X+21年にてんかん発作を生じ再入院.X+23年通勤中の事故で,硬膜下血種及び硬膜外血種を受傷.X+24年に就職するが,対人関係の悪化や体調不良などで休職・転職を繰り返していた.X+25年に結婚.X+31年に障害者就業・生活支援センターから紹介を受け,当施設の通所を開始.
【初期評価】身体機能は,左BRS-T上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅴで,歩行は自立していた.神経心理学的検査は,MMSE:23点,WAIS-Ⅲ:FIQ77,TMT-A:100秒,B:147秒,RBMTの標準プロフィール点:7点と,重度の記憶・注意障害を認めた.日常場面では,通所日を間違えることや,忘れ物が多くあった.メモを使用していたが様々な場所に記載し,内容もまとまりに欠けていた.本人の訴えは,長く続けられる仕事に就きたい,記憶が悪いから治したい,誰も自分を理解してくれないというものであった.また,欧州脳損傷質問票(以下,EBIQ)は,本人の総得点108点,家族の総得点96点で,項目別平均値では,特に抑うつ・疲労の項目で本人が家族よりも障害を重く受け止めており,乖離があった.
【支援経過】週5日間,1回50分の集団プログラムを一日平均3回,6ヶ月間実施した.プログラムは,スポーツなどの身体活動や,高次脳機能障害に対する知識や対処方法について学ぶ作業療法士による心理教育,記憶障害に対するメモリーノート活用訓練(以下,MN訓練),プリント課題などの認知機能訓練,パソコンや軽作業などの就労技能訓練とした.必要に応じ,作業療法士・心理士による個別対応や面接を実施した.通所2ヶ月頃,プログラム中休憩をとれず,てんかん発作を生じていた.そのため,職員から休憩を促す対応や症状の確認を行った.心理教育では,記憶障害の代償手段について助言を行い,動機付けを促した.MN訓練では,記載内容を統一することで端的に記載が可能となった.通所4ヶ月頃,「全く集中できないときがある」と疲労を自覚し始めた.MN訓練では,文字数が多くなる傾向にあり,心理士による個別対応で確認・修正を継続した.この頃,「このまま訓練を続けてもいいのか」と不安を表出することもあり,心理面の支援も継続した.
【結果】通所開始から6ヶ月時点で,身体機能や神経心理学的検査の結果に変化はなかった.メモリーノートや付箋などの活用が定着し,日常場面では忘れ物が無くなった.疲労は,十分な睡眠や休息を意識的にとるなど,事前の対処行動が可能となった.面接時には,「障害を理解してもらえることを知れた.自分以外にも悩んでいる人が沢山いる」「一般就労したいが,前と同じ仕事量は難しいかもしれない」と発言の変化を認めた.EBIQは,本人の総得点101点,家族の総得点90点,項目別平均値は抑うつ・疲労の項目で,家族との障害認識の差が縮まった.
【考察】高次脳機能障害は本人が脳損傷によって生じる変化に気づき,より理解できるように支援することが重要とされている(Trexler,2000).長期経過の症例に対しても,施設通所での集団プログラムや個別対応は障害認識を促し,対処方法の獲得や抑うつ症状の軽減につながることが考えられた.
【症例紹介】 40歳台後半の男性,妻と子の3人暮らし.ADLは自立.X年の中学在学中に暴行を受け入院し,水頭症と診断.X+3年に階段から転落し入院.専門学校卒業後に就職.X+21年にてんかん発作を生じ再入院.X+23年通勤中の事故で,硬膜下血種及び硬膜外血種を受傷.X+24年に就職するが,対人関係の悪化や体調不良などで休職・転職を繰り返していた.X+25年に結婚.X+31年に障害者就業・生活支援センターから紹介を受け,当施設の通所を開始.
【初期評価】身体機能は,左BRS-T上肢Ⅵ,手指Ⅵ,下肢Ⅴで,歩行は自立していた.神経心理学的検査は,MMSE:23点,WAIS-Ⅲ:FIQ77,TMT-A:100秒,B:147秒,RBMTの標準プロフィール点:7点と,重度の記憶・注意障害を認めた.日常場面では,通所日を間違えることや,忘れ物が多くあった.メモを使用していたが様々な場所に記載し,内容もまとまりに欠けていた.本人の訴えは,長く続けられる仕事に就きたい,記憶が悪いから治したい,誰も自分を理解してくれないというものであった.また,欧州脳損傷質問票(以下,EBIQ)は,本人の総得点108点,家族の総得点96点で,項目別平均値では,特に抑うつ・疲労の項目で本人が家族よりも障害を重く受け止めており,乖離があった.
【支援経過】週5日間,1回50分の集団プログラムを一日平均3回,6ヶ月間実施した.プログラムは,スポーツなどの身体活動や,高次脳機能障害に対する知識や対処方法について学ぶ作業療法士による心理教育,記憶障害に対するメモリーノート活用訓練(以下,MN訓練),プリント課題などの認知機能訓練,パソコンや軽作業などの就労技能訓練とした.必要に応じ,作業療法士・心理士による個別対応や面接を実施した.通所2ヶ月頃,プログラム中休憩をとれず,てんかん発作を生じていた.そのため,職員から休憩を促す対応や症状の確認を行った.心理教育では,記憶障害の代償手段について助言を行い,動機付けを促した.MN訓練では,記載内容を統一することで端的に記載が可能となった.通所4ヶ月頃,「全く集中できないときがある」と疲労を自覚し始めた.MN訓練では,文字数が多くなる傾向にあり,心理士による個別対応で確認・修正を継続した.この頃,「このまま訓練を続けてもいいのか」と不安を表出することもあり,心理面の支援も継続した.
【結果】通所開始から6ヶ月時点で,身体機能や神経心理学的検査の結果に変化はなかった.メモリーノートや付箋などの活用が定着し,日常場面では忘れ物が無くなった.疲労は,十分な睡眠や休息を意識的にとるなど,事前の対処行動が可能となった.面接時には,「障害を理解してもらえることを知れた.自分以外にも悩んでいる人が沢山いる」「一般就労したいが,前と同じ仕事量は難しいかもしれない」と発言の変化を認めた.EBIQは,本人の総得点101点,家族の総得点90点,項目別平均値は抑うつ・疲労の項目で,家族との障害認識の差が縮まった.
【考察】高次脳機能障害は本人が脳損傷によって生じる変化に気づき,より理解できるように支援することが重要とされている(Trexler,2000).長期経過の症例に対しても,施設通所での集団プログラムや個別対応は障害認識を促し,対処方法の獲得や抑うつ症状の軽減につながることが考えられた.