第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-6] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 6

2022年9月17日(土) 11:30 〜 12:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PK-6-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 6色カルタを用いた集団活動中に見られる参加者同士の会話の特徴

木村 夏実12小林 法一3 (1福島県立医科大学保健科学部作業療法学科,2東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法科学域博士後期課程,3東京都立大学大学院人間健康科学研究科作業療法学科学域)

【はじめに】色カルタは認知症高齢者向けに開発された,色にまつわる話題を通して自己を表現しながら他者との会話を楽しむアクティビティである.筆者はこれまで,色カルタを用いた集団活動には参加者同士の交流を促進させる特徴を持つのではないかと考え,回復期病棟入院中の認知機能の低下した高齢者を対象に週2回4週間,計8回色カルタを用いた集団活動を実施し,参加者の交流に関して検討してきた.その結果,回数を重ねるごとに参加者の発言回数が増加し,参加者同士の会話を促進させる可能性を明らかにしている.しかし参加者同士の会話が見られた場面の詳細は明らかにしておらず,その際の会話の特徴についても検討していない.そこで今回,参加者同士の会話が見られた場面を抽出し,その特徴について検討することにした.
【目的】色カルタを用いた集団活動中の参加者同士の会話の特徴について検討する.
【方法】関東近郊の回復期病棟に入院中の認知機能の低下を認め,同意の得られた3名(女性)を対象に,通常の個別リハビリテーションに加え,色カルタを用いた集団活動を週2回4週間,計8回実施した.実施時間は1回30~40分程度とした.色カルタ中の様子を撮影し,録画記録より参加者同士の会話が見られる場面を抽出し会話分析を行った.本研究における会話とは,参加者間で言語的・非言語的なやり取りが2回以上継続した場面と操作定義した.本研究は所属機関の倫理審査委員会および所属大学院の研究倫理委員会の承認を得ている(承認番号:2021-206, 20033).またJSPS科研費(JP15K08811, 21K20191)の助成を受けて行った.
【結果】全8回中,2・5・7回目を分析対象とした.参加者同士の会話が見られた場面は全25場面あり,各回ごとの場面数は,8場面,5場面,12場面であった.参加者同士の会話には,〔3つの局面〕と<9の会話の特徴>が見出された.〔参加者が自ら他の参加者に対してアクションを起こす〕(19場面)には<参加者が他の参加者へ同意・同調を求める形で話しかけるとともに,顔を見るなどの働きかけを行う>,<参加者が他の参加者に話しかける>,<参加者が他の参加者に質問をする>,<参加者が他の参加者に助けを求める>,<参加者が他の参加者の代弁をする>,〔リーダーと参加者の会話に他の参加者が参加する〕(4)には,<参加者は同意・同調を示す形で会話に参加する>,<参加者は自主的に発言することで会話に参加する>,〔リーダーが参加者間の会話を中継する〕(2)には,<リーダーが参加者の思いを他の参加者に伝える>の特徴があった.会話以外の交流としては,〔歌による交流〕(3)が見出された.
【考察】〔参加者が自ら他の参加者に対してアクションを起こす〕局面において最も多くの会話(19場面)が見られた.色カルタを用いた集団活動は参加者が自ら積極的に他の参加者との会話をする機会を生み出しやすい特徴を持つ可能性があると考えられる.参加者同士の会話がみられた場面は7回目が最も多く,また<参加者が他の参加者に質問をする>,<参加者が他の参加者に助けを求める>,<参加者が他の参加者の代弁する>といった相手の背景を踏まえた会話は7回目のみで見られた.このことから,色カルタを用いた集団活動は,少なくとも7回以上回数を重ねることで参加者同士の会話を促進させるだけでなく,参加者同士の関係性に良好な変化をもたらす可能性があると考える.