[PK-7-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 7作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援の概括
日本作業療法士協会事例報告集による調査研究
【はじめに】
昨年の第55回日本作業療法学会のポスター発表で日本作業療法士協会事例報告集より重度認知症高齢者への環境支援内容をProfessional Environmental Assessment Professional日本版3(以下,PEAP)の視点から分析し,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援の実状を概括的に明らかにした.PEAPは下垣ら(2002)がWeismanら(1996)の「専門的な環境アセスメント計画」を日本の実情に合わせて改定したもので,物的環境支援だけでなく幅広い文脈を包括した環境支援評価である.今回さらに検索範囲を広げ,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援をPEAPで示し考察する. また昨年に見当たらなかった自己選択への支援を示すことで重度認知症高齢者のQOL向上に寄与できると考える.
【方法】
対象:日本作業療法士協会事例報告集の疾患コードを「認知症」として検索しヒットした236件より,HDS-R,MMSEが10点以下と記載のあった76事例中,結果もHDS-R,MMSEが10点以下と記載のあった37事例を対象とした.
方法:対象事例より環境支援を抽出し,それらの支援内容をPEAPにおける8つの環境づくりのポイントに分類し,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援の実状をPEAPから概括的に明らかにする.
【結果】
37事例でみられたPEAPの環境支援項目は506項目みられた.これらをPEAPで分類すると①見当識への支援:2項目,②機能的な能力への支援:176項目,③環境における刺激の質と調整:16項目,④安全と安心への支援:24項目,⑤生活の継続性への支援:223項目,⑥ 自己選択への支援:12項目,⑦プライバシーの確保:0項目,⑧ふれあいの促進:53項目となった.作業療法士は重度認知症高齢者に対して⑤生活の継続性への支援,②機能的な能力への支援の順に多かった.⑥自己選択への支援が12項目があがった.例として徘徊が途中で始まっても無理に引き戻さず,本人が徘徊で輪投げの場所に戻ってきたときに参加を促した支援や本人の好きな音楽や民謡を媒介に自発性の向上を試みた支援等がみられた.
【考察】
結果より作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援は,②機能的な能力への支援や⑤生活の継続性への支援を中心に行っている.これは昨年と同様の結果となった.また昨年見当たらなかった⑥自己選択への支援は,例のように個人の思いに合わせて柔軟に対応し自発性を促した支援があがった.下垣ら(2002)によると自己選択への支援は,変化するニーズへ対応できる「融通性」が重視され,その個人の「自由さ」,行動の「柔軟性」が当然の権利であるという理念が背景にあるとしている.つまり自己選択への支援は当事者や家族等との関わりのなかで感じた当事者の思いや考えを尊重した支援であるといえる.また渡辺(2011)において重度認知症高齢者の尊厳に配慮した看護介入が自己決定する力を引き出せたとあるように,自己選択への支援は自発性を促す支援といえる.今後,自己選択への支援をはじめPEAP項目の少なかった支援にも目を向けることで包括的な環境支援となり,重度認知症高齢者のQOL向上に寄与できると考える.また小川(2021)は住環境を考える際にAlzheimer’s Disease International(ADI)認知症のデザイン原則が参考になると示している.
昨年の第55回日本作業療法学会のポスター発表で日本作業療法士協会事例報告集より重度認知症高齢者への環境支援内容をProfessional Environmental Assessment Professional日本版3(以下,PEAP)の視点から分析し,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援の実状を概括的に明らかにした.PEAPは下垣ら(2002)がWeismanら(1996)の「専門的な環境アセスメント計画」を日本の実情に合わせて改定したもので,物的環境支援だけでなく幅広い文脈を包括した環境支援評価である.今回さらに検索範囲を広げ,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援をPEAPで示し考察する. また昨年に見当たらなかった自己選択への支援を示すことで重度認知症高齢者のQOL向上に寄与できると考える.
【方法】
対象:日本作業療法士協会事例報告集の疾患コードを「認知症」として検索しヒットした236件より,HDS-R,MMSEが10点以下と記載のあった76事例中,結果もHDS-R,MMSEが10点以下と記載のあった37事例を対象とした.
方法:対象事例より環境支援を抽出し,それらの支援内容をPEAPにおける8つの環境づくりのポイントに分類し,作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援の実状をPEAPから概括的に明らかにする.
【結果】
37事例でみられたPEAPの環境支援項目は506項目みられた.これらをPEAPで分類すると①見当識への支援:2項目,②機能的な能力への支援:176項目,③環境における刺激の質と調整:16項目,④安全と安心への支援:24項目,⑤生活の継続性への支援:223項目,⑥ 自己選択への支援:12項目,⑦プライバシーの確保:0項目,⑧ふれあいの促進:53項目となった.作業療法士は重度認知症高齢者に対して⑤生活の継続性への支援,②機能的な能力への支援の順に多かった.⑥自己選択への支援が12項目があがった.例として徘徊が途中で始まっても無理に引き戻さず,本人が徘徊で輪投げの場所に戻ってきたときに参加を促した支援や本人の好きな音楽や民謡を媒介に自発性の向上を試みた支援等がみられた.
【考察】
結果より作業療法士による重度認知症高齢者への環境支援は,②機能的な能力への支援や⑤生活の継続性への支援を中心に行っている.これは昨年と同様の結果となった.また昨年見当たらなかった⑥自己選択への支援は,例のように個人の思いに合わせて柔軟に対応し自発性を促した支援があがった.下垣ら(2002)によると自己選択への支援は,変化するニーズへ対応できる「融通性」が重視され,その個人の「自由さ」,行動の「柔軟性」が当然の権利であるという理念が背景にあるとしている.つまり自己選択への支援は当事者や家族等との関わりのなかで感じた当事者の思いや考えを尊重した支援であるといえる.また渡辺(2011)において重度認知症高齢者の尊厳に配慮した看護介入が自己決定する力を引き出せたとあるように,自己選択への支援は自発性を促す支援といえる.今後,自己選択への支援をはじめPEAP項目の少なかった支援にも目を向けることで包括的な環境支援となり,重度認知症高齢者のQOL向上に寄与できると考える.また小川(2021)は住環境を考える際にAlzheimer’s Disease International(ADI)認知症のデザイン原則が参考になると示している.