第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-8] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PK-8-2] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 8脳損傷者への就労支援

作業療法士による疾病・障害・アウェアネスへの支援

栗原 良子12長尾 徹3種村 留美3 (1帝京平成大学健康メディカル学部,2神戸大学大学院保健学研究科博士後期課程,3神戸大学生命・医学系 保健学域)

【研究背景・目的】
脳血管障害や頭部外傷を労働年齢層で発症した場合,当事者の職業復帰はQOLや経済面から考えると重要なテーマである.作業療法士(以下OT)は,就労支援に適した職種であると考えられているが,その役割について共通理解の構築には至っていない.そこで本研究では,脳損傷者への就労支援を行っているOTに対し,質問紙および面接調査を実施することで,具体的な支援方法・内容および働きかけについて明らかにすることを目的とした.
【方法】
就労に向けた支援を行ったことのある,経験年数10年以上のOTへの質問紙および面接調査を実施した.対象者は,就労に関する学会での発表者や学術論文の投稿者,あるいは就労に携わっているOTとした.分析方法は事例-コードマトリックス(佐藤,2008)に準拠し,質的データ分析を行った.調査は,対象者の職場,対象者が指定する場所,或いはリモートにて質問紙への回答と個別での半構造化面接を実施した.実施期間は2020年2月~5月だった.質問紙調査では,実践したことのある脳損傷者に対する就労準備性支援の内容や,その中で特に重要視している内容について,実践したことのある雇用側への支援内容について,就労定着支援実践の有無とその実践内容について回答してもらい,その後,半構造化面接にて,質問紙で得られた回答を確認しながら,支援内容の詳細や具体的なエピソードについて個別に聴取した.本研究は,神戸大学大学院保健学研究科保健学倫理委員会より承認を得て実施した(承認番号:第710号).
【結果】
本研究での対象者は,医療機関(外来),地域活動支援センター,自立訓練事業所,就労移行支援事業所,就労継続支援事業所に勤務した経験のあるOT20名であった.OTが行っていた疾病・障害・アウェアネスへの支援として,「当事者の考えや状況を把握」「高次脳機能の意識化を促す」「フィードバックや説明の実施」「他職種(医師・訪問看護など)への支援依頼」が挙げられた.特に,「高次脳機能の意識化を促す」では,機能訓練,作業活動,体験活動やグループ活動を用いていた.また,疾病・障害・アウェアネスへの支援をする際の工夫点として,「時間をかけること・繰り返すこと」「就労に必要な経験を積み重ねること」「当事者の障害認識に応じて接すること」「受け入れやすい・安心できる環境を設定すること」を行っていた.
【考察】
OTは脳損傷者への就労支援の際,疾病・障害に関する説明・助言,身体・認知機能訓練,そして物事に対する気づき・認識(アウェアネス)への支援を行うことを重要視していることが明らかになった.また,支援を行う際には,当事者の個別性や環境に配慮し,時間をかけて根気よく支援しつづけていることが明らかになった.