[PK-8-3] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 8半側空間失認とPusher現象を呈した一症例に,環境設定や段階的難易度設定を行い,トイレ動作介助量軽減に繋がった介入
【背景】 半側空間失認(以下,USN)及びPusher現象の回復に伴う,座位保持の改善報告は多数存在するが,日常生活動作(以下,ADL)改善の関連報告は少ない.今回,USN及びPusher現象,左片麻痺で,基本動作とADL動作全般に重度介助を生じた症例に対し,座圧分布測定システム(以下,座圧センサー)を利用した環境調整や座位保持練習の段階的難易度設定を行った.結果,USNとPusher現象の改善,トイレ動作介助量軽減に繋がった経過を報告する.報告にあたり,当院の倫理規定に基づき書面にて本人の同意を得ている.
【事例紹介】 70歳代,男性.自宅(県営住宅)で意識消失し,A病院へ救急搬送され,右被殻出血,左片麻痺と診断. 42病日目に状態が安定し,当院の回復期病棟へ転院.家族構成は妻と長女の3人暮らし.近隣に次女が在住.
【作業療法評価(43病日目)】身体所見は,左Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢手指Ⅰ下肢Ⅳ.表在,深部共に重度感覚鈍麻.神経心理学的所見では,MMSE16点.行動性無視検査(以下,BIT)は通常検査27点.Catherine Bergego Scale(以下,CBS)は主観15点,客観30点,身体失認及び近位,遠位空間の無視を認めた.基本動作は全て全介助.特に座位姿勢は右方向の崩れが著明であり,麻痺側へ修正を行うも,非麻痺側へ強く押し返していた.顔面も右へ向いていたが,声掛けを行うことで,視線のみ3秒は左へ向けることは可能. ADL動作は,FIM41点.食事や整容については,中央から30cm右の視野範囲であれば,自発的に探索して動作が行えた為,各4点.トイレ動作は,手摺把持しての座位保持が困難な為,2人全介助で1点.
【介入方針】 座圧センサーを月1回利用し,座位姿勢の状況把握を実施.それに伴い,座位姿勢保持安定を目的に,車椅子の検討と座位保持練習の難易度調整を行った.
【介入経過】(45病日~75病日目) 1回目の座圧センサー測定は,右坐骨へ最大200mmHgの圧がかかり,左坐骨は50mmHg前後で,非麻痺側に圧力が著明であった.その為,入院時から利用していた標準型車椅子を,高床モジュール型車椅子とウレタンクッションに変更し,車椅子座位保持の修正を行なった.練習内容では,ベッド端座位保持練習や車椅子座位上でボールを使った麻痺側臀部感覚入力練習を実施した.
(76病日~102病日目) 2回目の座圧センサー測定は,右坐骨へ最大163mmHg,左坐骨は100mmHgまで圧がかかり,座位保持の改善を認めた為,簡易モジュール型車椅子とウレタンクッションへ移行した.また,トイレ動作は,中等度1人介助で可能となったが,USNの影響で,注意が逸れて座位保持が不安定であった為,座位リーチ練習を重点的に行った.
(103病日~126病日目) 3回目の座圧センサー測定は,右坐骨の圧は最大143mmHg,左坐骨は最大124mmHgまで改善し,座位保持が行えた為,標準型車椅子とウレタンクッションの利用へ再移行した.トイレ動作は,手摺把持することで座位姿勢崩れは減少し, 1人軽介助で可能となった.
【結果】 計3回座圧センサー測定と難易度設定を行い,左BRS上肢手指Ⅱ,下肢Ⅴ. MMSE22点,BITは通常検査72点.CBS主観12点,客観15点.身体失認や近位,遠位空間の無視などの改善を認めた.ADL動作は,FIM54点.トイレ動作は,下衣操作の介助が必要で各4点に改善した.
【考察】 今回,早期から座圧センサーを使用し数値化することで,車椅子選定や段階的難易度設定が容易となり,USN及びPusher現象などやトイレ動作改善に繋がったと考える.また,座位でのパフォーマンス能力向上が,トイレ動作などのADL動作改善に関連している(江蓮ら,2010)ことが示されており,今回,USNなどを呈した症例においても,環境設定や難易度設定に重きを置いた座位動作練習を積極的に行うことで,更にADL改善に繋がるものと示唆された.
【事例紹介】 70歳代,男性.自宅(県営住宅)で意識消失し,A病院へ救急搬送され,右被殻出血,左片麻痺と診断. 42病日目に状態が安定し,当院の回復期病棟へ転院.家族構成は妻と長女の3人暮らし.近隣に次女が在住.
【作業療法評価(43病日目)】身体所見は,左Brunnstrom Recovery Stage(以下,BRS)上肢手指Ⅰ下肢Ⅳ.表在,深部共に重度感覚鈍麻.神経心理学的所見では,MMSE16点.行動性無視検査(以下,BIT)は通常検査27点.Catherine Bergego Scale(以下,CBS)は主観15点,客観30点,身体失認及び近位,遠位空間の無視を認めた.基本動作は全て全介助.特に座位姿勢は右方向の崩れが著明であり,麻痺側へ修正を行うも,非麻痺側へ強く押し返していた.顔面も右へ向いていたが,声掛けを行うことで,視線のみ3秒は左へ向けることは可能. ADL動作は,FIM41点.食事や整容については,中央から30cm右の視野範囲であれば,自発的に探索して動作が行えた為,各4点.トイレ動作は,手摺把持しての座位保持が困難な為,2人全介助で1点.
【介入方針】 座圧センサーを月1回利用し,座位姿勢の状況把握を実施.それに伴い,座位姿勢保持安定を目的に,車椅子の検討と座位保持練習の難易度調整を行った.
【介入経過】(45病日~75病日目) 1回目の座圧センサー測定は,右坐骨へ最大200mmHgの圧がかかり,左坐骨は50mmHg前後で,非麻痺側に圧力が著明であった.その為,入院時から利用していた標準型車椅子を,高床モジュール型車椅子とウレタンクッションに変更し,車椅子座位保持の修正を行なった.練習内容では,ベッド端座位保持練習や車椅子座位上でボールを使った麻痺側臀部感覚入力練習を実施した.
(76病日~102病日目) 2回目の座圧センサー測定は,右坐骨へ最大163mmHg,左坐骨は100mmHgまで圧がかかり,座位保持の改善を認めた為,簡易モジュール型車椅子とウレタンクッションへ移行した.また,トイレ動作は,中等度1人介助で可能となったが,USNの影響で,注意が逸れて座位保持が不安定であった為,座位リーチ練習を重点的に行った.
(103病日~126病日目) 3回目の座圧センサー測定は,右坐骨の圧は最大143mmHg,左坐骨は最大124mmHgまで改善し,座位保持が行えた為,標準型車椅子とウレタンクッションの利用へ再移行した.トイレ動作は,手摺把持することで座位姿勢崩れは減少し, 1人軽介助で可能となった.
【結果】 計3回座圧センサー測定と難易度設定を行い,左BRS上肢手指Ⅱ,下肢Ⅴ. MMSE22点,BITは通常検査72点.CBS主観12点,客観15点.身体失認や近位,遠位空間の無視などの改善を認めた.ADL動作は,FIM54点.トイレ動作は,下衣操作の介助が必要で各4点に改善した.
【考察】 今回,早期から座圧センサーを使用し数値化することで,車椅子選定や段階的難易度設定が容易となり,USN及びPusher現象などやトイレ動作改善に繋がったと考える.また,座位でのパフォーマンス能力向上が,トイレ動作などのADL動作改善に関連している(江蓮ら,2010)ことが示されており,今回,USNなどを呈した症例においても,環境設定や難易度設定に重きを置いた座位動作練習を積極的に行うことで,更にADL改善に繋がるものと示唆された.