第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

認知障害(高次脳機能障害を含む)

[PK-8] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 8

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PK-8-5] ポスター:認知障害(高次脳機能障害を含む) 8左半側空間無視患者に対する四肢活性化の効果についての検討

菅原 光晴1前田 眞治2山本 潤3佐々木 智4高田 善栄5 (1清伸会ふじの温泉病院,2国際医療福祉大学大学院リハビリテーション学分野,3国際医療福祉大学小田原保健医療学部作業療法学科,4厚木市立病院リハビリテーション技術科,5総合南東北病院リハビリテーション科)

【はじめに】四肢活性化とは,日常生活や種々の課題において左空間で左上肢を積極的に動かすことが,左半側空間無視(USN)を軽減させるという仮説に基づいて,Robertsonらによって行なわれたアプローチである.しかし,先行研究においてUSNに対する四肢活性化の効果については,さまざまな報告があり,一定の見解が得られていない.今回我々は,視覚探索訓練における四肢活性化の効果について検討したので報告する.
【研究の目的】USNに対する四肢活性化の効果について検証することである.
【倫理的配慮およびCOI】ヘルシンキ宣言に基づき発表の主旨を対象者および家族に口頭および書面にて説明し同意を得た.また,開示すべきCOI関連にある企業はない.
【対象】発症より3ヵ月以上経過したUSNを有する右半球損傷患者15例を対象とした.対象者15例のUSNの重症度を考慮し,実験群8例と対象群7例の2群に分類した.
【方法】机上に左右に並べた複数の数字ブロックを,上肢のリーチ動作を利用して探索する視覚探索訓練を行った.実験群には,麻痺側上肢(左手)を用いてリーチし,机上の数字ブロックを探索する四肢活性化+視覚探索訓練を実施した.対照群には非麻痺側上肢(右手)を用いてリーチし,机上の数字ブロックを探索する視覚探索訓練を実施した.訓練は1日20分,週5回,3週にわたり実施した.訓練効果の指標は,BIT通常検査,Catherine Bergego Scale観察評価法(CBS)を指標とし,評価は1週目,2週目,3週目の終了時に実施した.
【結果】BIT通常検査では,3週目の得点において実験群,対照群ともに有意差は認めなかったが,1週目,2週目では有意差を認め,対照群よりも実験群の方が早期に改善する傾向を示した.CBSにおいては,両群ともに成績の向上を認めたが,対照群と比較して実験群において,“更衣の際に麻痺側上肢の袖通しがしやすくなった”“歩行時,左肩をぶるけることが少なくなった”などの身体空間の無視症状に関わる項目で改善を示した症例を認めた.
【考察】ヒトの生活行為の多くは,手のリーチと机上にある物の操作によって成り立っているため,手のリーチと空間の認識は密接な関係ある.そのため,左側に存在する麻痺側上肢(左手)を使用して探索することが,左空間への探索を容易にし,USNの早期の改善に結びついたと考えられた.また,麻痺側上肢(左手)を使用することによって,麻痺側上肢(左手)への認識が向上し,身体空間の無視症状においても改善を示したものと考えられた.
【作業療法研究の意義】今回の研究結果により,USNに対する四肢活性化は,①USN患者の左空間への探索を容易にし,USNの改善を示す可能性があること,②身体空間に関する無視症状に対して良好な影響を与える可能性があることが示唆された.