[PL-2-1] ポスター:援助機器 2作業療法士の視点からみた生活支援におけるコミュニケーションロボットの対象者に対する影響に関する質的研究
【序論】2021年11月現在,日本国内における65歳以上の高齢者人口は29.1%に達している.経済産業省と厚生労働省は,「コミュニケーションロボット技術の介護利用における重点分野」の2017年の改訂で,新たに介護業務支援等を追加し,ロボットの医療・福祉場面での活用を推進している.
【目的】本研究は,生活支援の一助としてコミュニケーションロボットを使用した時に,対象者に与える影響について作業療法士の視点から明らかにすることを目的とした.
【方法】国立研究開発法人日本医療開発機構の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」に参加した施設に電話をかけ依頼した.依頼時に研究協力の同意が得られかつコミュニケーションロボットの使用経験を有する作業療法士2名を研究対象とした.対象者には口頭にて説明を行い書面にて同意を得た.調査方法は半構造化面接を個人インタビュー形式で行うこととし,先行研究を参考に作成したインタビューガイドに基づき,オンライン(Zoom)で実施した.研究対象者の了承を得てZoomの録音機能を用いて録音した.インタビューの回数は1回で,実施後研究対象者にインタビュー記録の内容を電子メールで送信し確認した.データの分析は,テーマティック・アナリシス法の帰納的分析手法を用いて行った.本研究は,筆頭研究者所属の研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認:20095).
【結果】研究対象者の施設で使用されていたコミュニケーションロボットは環境・操作反応型のPARO(株式会社知能システム)であった.PAROは,タテゴトアザラシの赤ちゃんがモデルのメンタルコミットロボットであり,瞬きをしたりすることで顔の表情に変化があり,頭や手足が動くことで,驚いたり,喜んだり,あたかも心や感情があるように振舞う自律型ロボットである1).分析結果より,作業療法士は対象者の障害像を把握したうえで,PAROの使用に適した方を選定しており,使用する目的としてナラティブの聴取や,気持ちの補完などを挙げ,使用目的も明確にしていた.その結果,PARO使用中の対象者の反応として,表情の変化(主に笑顔)や感情の表出などの様々な反応が出現し,心理的安定が促進される直接的な影響がみられた.その他,職員のみならず他患との関りやコミュニケーションが増加し,本人主体の活動場面が増えるなど,間接的な影響も挙げられた.また,作業療法士はPAROを生活支援の一助としながらも,作業療法のアプローチが困難な方への介入手段の選択肢のひとつと捉え,対象者の新たな一面が発見でき,評価や関わりなどの支援手段となるツールとして,活用していた.
【考察】作業療法士は,対象者を評価することで,効果が期待できる対象者を抽出し,明確な目的をもってPAROを治療的に活用していることがわかった.作業療法士は,この強みを活かして高齢者に対するコミュニケーションロボットの有効な活用に貢献することができると考える.
【引用文献】
1) 株式会社知能システム アザラシ型メンタルコミットロボットパロ(2021.11.21 accessed)
http://paro.jp/?page_id=293
【目的】本研究は,生活支援の一助としてコミュニケーションロボットを使用した時に,対象者に与える影響について作業療法士の視点から明らかにすることを目的とした.
【方法】国立研究開発法人日本医療開発機構の「ロボット介護機器開発・導入促進事業」に参加した施設に電話をかけ依頼した.依頼時に研究協力の同意が得られかつコミュニケーションロボットの使用経験を有する作業療法士2名を研究対象とした.対象者には口頭にて説明を行い書面にて同意を得た.調査方法は半構造化面接を個人インタビュー形式で行うこととし,先行研究を参考に作成したインタビューガイドに基づき,オンライン(Zoom)で実施した.研究対象者の了承を得てZoomの録音機能を用いて録音した.インタビューの回数は1回で,実施後研究対象者にインタビュー記録の内容を電子メールで送信し確認した.データの分析は,テーマティック・アナリシス法の帰納的分析手法を用いて行った.本研究は,筆頭研究者所属の研究倫理審査委員会の承認を得て実施された(承認:20095).
【結果】研究対象者の施設で使用されていたコミュニケーションロボットは環境・操作反応型のPARO(株式会社知能システム)であった.PAROは,タテゴトアザラシの赤ちゃんがモデルのメンタルコミットロボットであり,瞬きをしたりすることで顔の表情に変化があり,頭や手足が動くことで,驚いたり,喜んだり,あたかも心や感情があるように振舞う自律型ロボットである1).分析結果より,作業療法士は対象者の障害像を把握したうえで,PAROの使用に適した方を選定しており,使用する目的としてナラティブの聴取や,気持ちの補完などを挙げ,使用目的も明確にしていた.その結果,PARO使用中の対象者の反応として,表情の変化(主に笑顔)や感情の表出などの様々な反応が出現し,心理的安定が促進される直接的な影響がみられた.その他,職員のみならず他患との関りやコミュニケーションが増加し,本人主体の活動場面が増えるなど,間接的な影響も挙げられた.また,作業療法士はPAROを生活支援の一助としながらも,作業療法のアプローチが困難な方への介入手段の選択肢のひとつと捉え,対象者の新たな一面が発見でき,評価や関わりなどの支援手段となるツールとして,活用していた.
【考察】作業療法士は,対象者を評価することで,効果が期待できる対象者を抽出し,明確な目的をもってPAROを治療的に活用していることがわかった.作業療法士は,この強みを活かして高齢者に対するコミュニケーションロボットの有効な活用に貢献することができると考える.
【引用文献】
1) 株式会社知能システム アザラシ型メンタルコミットロボットパロ(2021.11.21 accessed)
http://paro.jp/?page_id=293