[PL-2-5] ポスター:援助機器 2ドライブレコーダーを備えたハンドル形電動車椅子のテストコーストライアル
高齢者と若年健常者の比較
【はじめに】ハンドル型電動車椅子(以下シニアカー)は, 自動車免許返納に伴う外出制限に対して注目される移動補助機器であるが,知識や技能の不足による衝突や転倒・転落等の事故も報告されている.安全な活用には生活環境で適切に使用できる介入が必要だが,研究や報告は少ない.シニアカーが外出補助手段として利活用されるには安全操作のための評価システムの確立が急務である.
【目的】シニアカーの安全利用の為の評価ツール開発を目指す研究の一環として,開発したドライブレコーダーで収集した操作ログ(以下ログ)と観察により,シニアカーの操作技能評価を行い,各々の評価結果から,高齢者と若年健常者(以下健常者)の操作技能の違いと,ログの運転評価における有用性を明らかにする.
【方法】対象はシニアカー操作経験のない高齢者7名(男性2名,女性5名,平均年齢78.7±7.3歳)と健常者11名(男性1名,女性10名,平均年齢20.5±0.5歳)である.最初に基本操作の説明を行い,操作方法が理解できたことを確認後,被験者はドライブレコーダーを備えたシニアカーに乗車し,Wheelchair Skills Test(WST)に基づき作成した25m直進,右折,左折,駐車,切り返し,通り抜けの6課題を含む屋内テストコースを3周した.その間,2名の作業療法士が同行し,コースの説明と観察評価を実施した.操作技能の観察評価ではWSTに基づき独自に作成した観察シートの基準を用いて,各課題を「成功」「困難を伴う成功」「失敗」の3段階で評価した.車体に設置した,ドライブレコーダーは,アクセルレバーに固定した3軸加速度センサーとデータロガーから成り,走行中のアクセル・ハンドル角度をログとして記録した.ログのデータは,縦軸をアクセル角度,横軸をハンドル角度とした二次元時間ヒストグラムに変換後,高速旋回,低速旋回,高速直進,低速直進の4つの操作状態に分類し,各被験者の運転操作における操作状態別の時間を算出した.本研究は倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】観察評価では,健常者を含む,全ての被験者で,「困難を伴う成功」または「失敗」が見られた.被験者ごとの全試行における「困難を伴う成功」と「失敗」を合わせた割合は,高齢者で6~56%,健常者で11~39%であった.課題別では,高齢者では右折・左折と切り返しで失敗が多く,健常者では右折・左折で失敗が多かった.最も失敗が多かった右折では,高齢者の全試行の71%,健常者の全試行の79%が,「困難を伴う成功」か「失敗」であった.高齢者2名と健常者1名においては切り返しまたは通り抜け課題遂行中にコースへの衝突が認められた.ログ分析では,高速で旋回していることを表す高速旋回の操作時間において,大きな違いがあった.コース走行中に衝突した3名はいずれも高速旋回の操作時間が長いという特徴を有していた.
【考察】操作技能評価の結果,観察評価では比較的年齢が若い健常者11名を含む被験者全員が,いずれかの課題で「困難をともなう成功」または「失敗」をしており,シニアカー操作には一定の評価や訓練が不可欠であることが示唆された.しかし,今回のテストコース及び観察テストでは,「右折」などにおいて7割以上が失敗するなど床効果様の状況が生じており,高リスク者を特定する手法としては限界があることが明らかになった. これに対し,ログ分析では,コース中で「衝突」した被験者に共有する特徴が見られ,ログ分析が高リスク者の特定に有益である可能性が示唆された.高リスク者を特定するためには,段差・坂道・通行人の有無など,実生活に近い内容のコース設定と,ログの活用が有益である可能性がある.
【目的】シニアカーの安全利用の為の評価ツール開発を目指す研究の一環として,開発したドライブレコーダーで収集した操作ログ(以下ログ)と観察により,シニアカーの操作技能評価を行い,各々の評価結果から,高齢者と若年健常者(以下健常者)の操作技能の違いと,ログの運転評価における有用性を明らかにする.
【方法】対象はシニアカー操作経験のない高齢者7名(男性2名,女性5名,平均年齢78.7±7.3歳)と健常者11名(男性1名,女性10名,平均年齢20.5±0.5歳)である.最初に基本操作の説明を行い,操作方法が理解できたことを確認後,被験者はドライブレコーダーを備えたシニアカーに乗車し,Wheelchair Skills Test(WST)に基づき作成した25m直進,右折,左折,駐車,切り返し,通り抜けの6課題を含む屋内テストコースを3周した.その間,2名の作業療法士が同行し,コースの説明と観察評価を実施した.操作技能の観察評価ではWSTに基づき独自に作成した観察シートの基準を用いて,各課題を「成功」「困難を伴う成功」「失敗」の3段階で評価した.車体に設置した,ドライブレコーダーは,アクセルレバーに固定した3軸加速度センサーとデータロガーから成り,走行中のアクセル・ハンドル角度をログとして記録した.ログのデータは,縦軸をアクセル角度,横軸をハンドル角度とした二次元時間ヒストグラムに変換後,高速旋回,低速旋回,高速直進,低速直進の4つの操作状態に分類し,各被験者の運転操作における操作状態別の時間を算出した.本研究は倫理審査委員会の承認を受けて実施した.
【結果】観察評価では,健常者を含む,全ての被験者で,「困難を伴う成功」または「失敗」が見られた.被験者ごとの全試行における「困難を伴う成功」と「失敗」を合わせた割合は,高齢者で6~56%,健常者で11~39%であった.課題別では,高齢者では右折・左折と切り返しで失敗が多く,健常者では右折・左折で失敗が多かった.最も失敗が多かった右折では,高齢者の全試行の71%,健常者の全試行の79%が,「困難を伴う成功」か「失敗」であった.高齢者2名と健常者1名においては切り返しまたは通り抜け課題遂行中にコースへの衝突が認められた.ログ分析では,高速で旋回していることを表す高速旋回の操作時間において,大きな違いがあった.コース走行中に衝突した3名はいずれも高速旋回の操作時間が長いという特徴を有していた.
【考察】操作技能評価の結果,観察評価では比較的年齢が若い健常者11名を含む被験者全員が,いずれかの課題で「困難をともなう成功」または「失敗」をしており,シニアカー操作には一定の評価や訓練が不可欠であることが示唆された.しかし,今回のテストコース及び観察テストでは,「右折」などにおいて7割以上が失敗するなど床効果様の状況が生じており,高リスク者を特定する手法としては限界があることが明らかになった. これに対し,ログ分析では,コース中で「衝突」した被験者に共有する特徴が見られ,ログ分析が高リスク者の特定に有益である可能性が示唆された.高リスク者を特定するためには,段差・坂道・通行人の有無など,実生活に近い内容のコース設定と,ログの活用が有益である可能性がある.