第56回日本作業療法学会

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ポスター

援助機器

[PL-3] ポスター:援助機器 3

Sat. Sep 17, 2022 10:30 AM - 11:30 AM ポスター会場 (イベントホール)

[PL-3-1] ポスター:援助機器 3転倒予防のロボットを用いたゲームの活用

新ゲームの提案と印象調査から

鈴木 健太郎1片野 結2北越 大輔2山下 晃弘2鈴木 雅人2 (1杏林大学保健学部,2東京工業高等専門学校情報工学科)

【はじめに・目的】超高齢社会に突入した近年,介護予防の取組が地域・福祉・保健領域他で盛んに行なわれている.著者らのグループではこれまで転倒予防への貢献を目指し,ロボットと対戦することで転倒予防に効果的と考えられる運動を促すシステム(ゲーム)の開発を進めてきた.本稿では,新たに開発したシステムの概要紹介と,開発のきっかけとなったゲーム種目への印象や利用印象(手応え)等を把握することを目的に,システムの紹介と,高齢者からのゲーム種目等に関する印象調査および利用学生からの印象調査を通して考察する.本研究は,転倒予防に向けた楽しいアクティビティの一案として,人々の生活を支援する作業療法の領域においても意義ある活動であると考えられ,着手した.
【方法】ゲーム種目の印象調査は,シニアクラブに通う60~80歳代の自立高齢者43名(平均年齢79.9歳,男性18名,女性25名)を対象に,ゲームの知名度等に関するアンケート回答を頂いた(5段階評価,5点満点).利用印象調査は19~23歳の情報工学領域の学生11 名(平均年齢19.6歳,男性8名,女性3名)を対象に,著者らが開発してきた,既存開発のシステム(旧システム)と新たに開発したシステム(新システム)とを,使い方の説明等を受け5 分程度利用した後に,ゲームの楽しさ等に関するアンケート調査を多肢選択式で実施し回答を得た.本研究は,科研費(基盤研究C,No.21K11329)の助成を受け,東京工業高等専門学校「人を対象とする研究委員会」の承認の下実施した.
【結果・考察】開発している転倒予防システムは,利用者が楽しみながら転倒予防運動の継続的な実施を目指すシステムであり,HAI(Human-Agent Interaction)の概念に基づき,運動負荷の調整等の強化学習を適用したロボットとの対戦型ゲームを基盤に開発してきたものである.新システムは,じゃんけんグリコ型の対戦形式ゲームで,利用者と敵ロボットとの間にある代理ロボットを遠隔操作し,じゃんけんで勝った手の形の文字数だけ進み(代理ロボットを足踏み運動による遠隔操作で進め),早くゴールした方が勝ちというものであり,じゃんけん型ゲームである旧システムを活かしつつ提案したものである.
高齢者からの印象調査では,ゲームの知名度に関しては,旧システムの基礎となるどんじゃんけんゲームは平均1.85,新システム(じゃんけんグリコ)は平均2.97であり,新システムの知名度があることが伺えた.システムの遊び方の理解は新旧其々平均3.48,3.41でほぼ同値であり,システムとしての新旧システム導入の可能性がみられた.
利用学生からの印象調査からは,ゲームの楽しさについては72.7%が新システムという回答が得られ,新システム開発の手応えが得られた.一方,継続的な利用をしてみたいかにについては新システムが54.5%と新旧システムに大差は見られず,高齢者の遊び方の理解の結果状況同様に,新旧其々更なる工夫や導入等がしていけるといいと考えられた.また,利用学生の新旧システム利用の際の動作履歴も記録しており,その履歴データから各利用者の運動実施回数や運動量の状況の把握をすべく現在データ集計等を進めている.
今回の新システム利用(実証実験)は学生であり,本稿のような基礎的な調査での把握等をしつつも,高齢者の方への実証実験による状況把握等をしていき,システムの向上や当領域の更なる発展等に寄与できたらと考える.今後も使い易さや継続性,そして高齢の方々への展開や馴染み易い設定等を提案していきたいと考える.