[PL-3-4] ポスター:援助機器 33Dプリンタ装具導入が手指の関節可動域拡大と拘縮緩和を促しセルフケア関連ADLを向上させた一例
【はじめに】
脳卒中後の痙縮はADLを制限しQOLを低下させる.痙縮に対する装具療法の適用は,近年の脳卒中ガイドラインにおいてグレードBと評され,その有用性が高く認識されている.今回,くも膜下出血発症後に意識障害が遷延し,経過中に手指拘縮が顕著となった患者に対し,3Dプリンタで作製した手指装具を治療に導入した一例を報告する.通常の機能訓練に加え,同手指装具の装着を実施したところ著明な拘縮緩和と関節可動域拡大が得られ,患者自身による食事・整容動作が促された.本報告は患者に同意を得ている.
【症例】
80代女性,右利き.くも膜下出血を発症し72病日目に当院へ転入院となる.当初より意識レベルが低く,JCS3桁でADLは全介助であった.治療初期は覚醒改善に向けた介入を実施.発症116病日目頃より覚醒が改善し,積極的な機能訓練が可能となる.装具導入開始時の評価は,Br-stage(左):上肢III手指III下肢III,手指(左)MAS3,関節可動域(左):PIP関節伸展示指-40°中指-70°環指-70°小指-70°,FIM18点,HDS-R11点.当該患者は,手指の筋緊張亢進により食事・整容の介助量が増大していた.
【方法】
患者の手指形状・サイズに合わせて3Dプリンタで作製した装具を段階付けして使用.治療経過中,関節可動域の変化に合わせて3Dプリンタ装具をドライヤーでモールディングを繰り返し調整した.加えて,上肢機能レベルに合わせて通常のADL訓練を行った.
【経過】
覚醒改善後,経鼻胃管の自己抜去防止目的で,訓練時以外の時間帯において,患者の両手にミトンが装着された.経過中に全身の筋緊張亢進や手指に筋性の関節可動域制限が顕在化した.本人からは「身だしなみを整えたい」,「小指と薬指が丸まって上手く掴めなく力を入れ難い」との発言があった.患者の要望に応えるため,3Dプリンタを使用し患者に合った手指装具を作製した.同装具はドライヤー等で熱を加えると変形可能で,手指関節可動域の変化に従い角度修正を加えた.手指運動の改善状況に合わせ,ワイピングや輪入れ等の機能訓練と手洗いや洗髪等のADL訓練を行った.
【結果】
手指の関節可動域は,PIP 関節伸展示指-10°中指-30°環指-30°小指-40°へ改善.MAS1,FIMは42点となり,食事・整容は最小介助にて可能となった.患者は日常生活においても積極的に上肢・手指を使用する頻度が増えた.患者からは「左手でしっかりと力を入れて動かすことができる」と好評であった.
【考察】
当該患者に対し,3Dプリンタ装具により筋緊張を制御しながら手指機能の段階に応じた運動療法を実施し,生活場面での手指使用を促した.手指伸展状態を日々の介入の際に確認し,3Dプリンタ装具に手指伸展角度の修正を加えた.痙性に対する通常の関節可動域訓練に加え,能動的,且つ,持続的な手指関節可動域の矯正が今回の好結果をもたらした.堀等は「中等度から重度の上肢運動麻痺に対する装具療法は,慣習的に行われてきた予防的な観点よりも,積極的に麻痺肢を使用する補助手段として位置付けることが重要である」と述べている.今回のアプローチが関節可動域の改善のみならず,日常生活上の成功体験から食事・整容動作において左手指の使用頻度を増大させ,更なる手指機能向上に至らせたものと推察する.
脳卒中後の痙縮はADLを制限しQOLを低下させる.痙縮に対する装具療法の適用は,近年の脳卒中ガイドラインにおいてグレードBと評され,その有用性が高く認識されている.今回,くも膜下出血発症後に意識障害が遷延し,経過中に手指拘縮が顕著となった患者に対し,3Dプリンタで作製した手指装具を治療に導入した一例を報告する.通常の機能訓練に加え,同手指装具の装着を実施したところ著明な拘縮緩和と関節可動域拡大が得られ,患者自身による食事・整容動作が促された.本報告は患者に同意を得ている.
【症例】
80代女性,右利き.くも膜下出血を発症し72病日目に当院へ転入院となる.当初より意識レベルが低く,JCS3桁でADLは全介助であった.治療初期は覚醒改善に向けた介入を実施.発症116病日目頃より覚醒が改善し,積極的な機能訓練が可能となる.装具導入開始時の評価は,Br-stage(左):上肢III手指III下肢III,手指(左)MAS3,関節可動域(左):PIP関節伸展示指-40°中指-70°環指-70°小指-70°,FIM18点,HDS-R11点.当該患者は,手指の筋緊張亢進により食事・整容の介助量が増大していた.
【方法】
患者の手指形状・サイズに合わせて3Dプリンタで作製した装具を段階付けして使用.治療経過中,関節可動域の変化に合わせて3Dプリンタ装具をドライヤーでモールディングを繰り返し調整した.加えて,上肢機能レベルに合わせて通常のADL訓練を行った.
【経過】
覚醒改善後,経鼻胃管の自己抜去防止目的で,訓練時以外の時間帯において,患者の両手にミトンが装着された.経過中に全身の筋緊張亢進や手指に筋性の関節可動域制限が顕在化した.本人からは「身だしなみを整えたい」,「小指と薬指が丸まって上手く掴めなく力を入れ難い」との発言があった.患者の要望に応えるため,3Dプリンタを使用し患者に合った手指装具を作製した.同装具はドライヤー等で熱を加えると変形可能で,手指関節可動域の変化に従い角度修正を加えた.手指運動の改善状況に合わせ,ワイピングや輪入れ等の機能訓練と手洗いや洗髪等のADL訓練を行った.
【結果】
手指の関節可動域は,PIP 関節伸展示指-10°中指-30°環指-30°小指-40°へ改善.MAS1,FIMは42点となり,食事・整容は最小介助にて可能となった.患者は日常生活においても積極的に上肢・手指を使用する頻度が増えた.患者からは「左手でしっかりと力を入れて動かすことができる」と好評であった.
【考察】
当該患者に対し,3Dプリンタ装具により筋緊張を制御しながら手指機能の段階に応じた運動療法を実施し,生活場面での手指使用を促した.手指伸展状態を日々の介入の際に確認し,3Dプリンタ装具に手指伸展角度の修正を加えた.痙性に対する通常の関節可動域訓練に加え,能動的,且つ,持続的な手指関節可動域の矯正が今回の好結果をもたらした.堀等は「中等度から重度の上肢運動麻痺に対する装具療法は,慣習的に行われてきた予防的な観点よりも,積極的に麻痺肢を使用する補助手段として位置付けることが重要である」と述べている.今回のアプローチが関節可動域の改善のみならず,日常生活上の成功体験から食事・整容動作において左手指の使用頻度を増大させ,更なる手指機能向上に至らせたものと推察する.