第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

援助機器

[PL-3] ポスター:援助機器 3

2022年9月17日(土) 10:30 〜 11:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PL-3-5] ポスター:援助機器 3座位保持困難の患者に対する座位保持装置の作製について

活動と参加に着目して

早坂 昇平1末田 修司1下田 勝政2葉室 篤1 (1見松会 あきやま病院,2株式会社SEEDS)

1.はじめに
座位保持障害を要する高齢者にとって, 移動時の姿勢の選定は非常に重要である.座位保持が困難になると離床する機会が減り自室で過ごす時間が長くなる.既存のリクライニング·モジュール型車椅子などを駆使しても座位保持が困難で活動制限や参加制限に直結してしまう高齢者も多い,今回,自力座位保持が困難な若年性認知症者に対して, 離床を目的とし座位保持の安定性を確保する為に本人に適合した座位保持装置を作製し活動,参加の拡大を目指し関わった. その有効性を検討したので報告する.
2. 症例紹介
患者:62歳,男性
病名:若年性認知症(アルツイマー病)
3. 倫理的配慮
本研究について家族に文章で同意を得た.
4. 作業療法評価
精神状態: MMSE-J1 点.
座位能力: Hoffer 座位能力分類3.
皮膚状態:ブレーデンスケール 13点. OH スケール7点.
離床時間:食事のみ1食約30分,1日合計約 90分.
5. 作製の実際
 座位保持装置を作製するに当たり重症心身障害児向けに座位保持装置や車椅子の作製を手掛けている(株) SEEDS に協力してもらい作製する事とした.初回は身体支持部の採型(以下,採型)にて本人の身体のアライメントを評価した. 採型とは,本人に専用の機械(シミュレーター)に座ってもらい,問題点などを抽油出する作業である.この 3D データをもとにウレタンフォームを削り出し,座位保持クッションを作製した.
6.結果
車椅子に安定して座る事ができるようになり, 集団訓練や日常生活活動に参加する機会が増えた.作製以前は約90分であった離床時間も集団訓練に参加する機会も増加し約 240分に増えた.
7.考察
本症例のように既存の車椅子が適合できない場合,ベッドから離床する機会の減少が懸念される. 本人の身体に適合した座位保持装置を作製し離床する機会が増えることで, 本人の持つ能力や ADL· QOL の向上に繋がるのではないかと考え作製した.
今回,このように作業療法士が介入した事によりシーティングエンジニアや福祉用具専門相談員のノウハウもかりつつ他職種と連携し本人の身体に適合した座位保持装置を作製する事で離床時間も作製前の90分から 240分へと大幅に増加し, 活動に参加する機会も増えた. 認知症高齢者は,長期間のベッド上生活により廃用症候群を伴う全身の機能低下を招いてしまう.廃用症候群予防のみならず, 認知機能低下予防の観点からも離床する事は非常に重要であり,各専門職が役割を把握し包括的に本人と関わる必要がある. 2018年より地域包括ケアシステムが始動している.入院期間の短縮や在宅への退院が重視されており環境を調整し離床が可能になるという事はその後の展望にも大きく関係してくる.