[PL-4-4] ポスター:援助機器 4頸髄症術後C5麻痺を呈した関節リウマチ合併症症例に対してPSBを応用して食事動作向上を目指した症例
【はじめに】高位脊髄損傷者の食事動作自立に対し,ポータブルスプリングバランサー(以下;PSB)を使用した症例報告は多いが,頸髄症術後C5麻痺の症例に対する食事動作への作業療法報告は少ない.また,回復まで長期経過を要した症例に対しての作業療法報告が少ないのが現状である.今回,頸髄症術後にC5麻痺を呈した1症例に対してPSBを応用した訓練を行った結果,食事動作と上肢筋力の向上を認めたため,考察し報告する.なお,本報告は本人の同意を得ている.
【症例紹介】70歳代女性.夫と2人暮らし.要介護2.既往にSteinbrocker class Ⅲ相当の関節リウマチがあり,入院以前はトイレや更衣で夫の介助を必要としており,食事は左上肢を使用し自立していた.来院する1年前より巧緻性低下があり,箸やボタン操作が困難だった.5か月前に転倒してから歩行困難となり受診,頸椎症性脊髄症の診断となる.手術目的に当院へ入院し第2病日にC3-C6後方除圧固定術を施行し,第3病日にC5麻痺が出現した.
【作業療法評価(術後翌日)】ROM(右/左)は肩屈曲100/65,肩伸展45/35,肩外転90/90,肘屈曲75/100(可動性なし),前腕回内90/90,前腕回外90/90,手掌屈20/45,手背屈0/0.MMT(右/左)は肩屈曲4/1,肩伸展4/3,肩外転4/1,肩内転3/3,肩外旋4/1,肩内旋4/3,前腕回内4/4,前腕回外4/2.ADLはBarthel Index(以下;BI)で10点(排便10点),食事動作は,右上肢では肘関節拘縮により口元へのリーチが困難であり,左上肢挙上も困難なため全介助.主訴は「左手が動かない」,「誰かに食べさせてもらうご飯は美味しくない」とあり,悲観的な様子が見受けられた.
【介入の基本方針】本人より食事に対する思いが聞かれ,作業療法では食事動作向上に向けて作業療法アプローチを実践することとした.また左上肢の筋力低下に対して悲観的な様子も見受けられ,上肢機能訓練も並行して行い,上肢機能の向上も目指すこととした.
【作業療法実施計画】PSBの原理を利用して食事動作向上を目指す.また,食事場面での使用だけでなく,作業療法場面でも訓練として使用し,上肢筋力向上を促す.
【介入経過】第10病日よりPSBの作製を開始した.在宅での継続使用も視野に,点滴棒,セラバンド,滑り止めシートで簡易的に作製して調整を行った.左上肢が口元へ届くように肩屈曲,外転,外旋位で上肢を牽引し,肩伸展,内転,内旋動作を利用して上肢を下制させる運動を用いた結果,第17病日に一口大や固形食の自力摂取が可能となった.第23病日に自宅退院となり,本人のさらなる食事動作向上の希望もあったことから,訪問リハビリにて継続して食事動作訓練を行う方針となった.
【結果】 ROMは開始時と著変なく経過した.MMTは肩屈曲4/2,肩外転4/2,肩外旋4/2へ変化した.ADLはBIで40/100点(食事5点,トイレ5点,排尿10点,排便10点),食事動作はPSBを使用して左上肢にて一部自力摂取可能となった.本人からは「少しでも自分で食べられて嬉しい」と聞かれた.
【考察】頸髄症術後C5麻痺症例において,PSBの使用は食事動作向上の一助となった可能性がある.また,頸髄症術後C5麻痺を呈する原因は明らかになっていないが,今回短期介入にて上肢筋力向上の結果を得ることができた.以上からPSBを訓練に用いることは,上肢筋力回復の促進につながる可能性が示唆された.さらに,今回の症例は先行研究で示されているPSBの適応条件の範囲外であったが,残存機能を活用して代償することで使用可能であった.このことから,PSBの適応条件の範囲外であっても,残存機能をアセスメントして代償手段を活用することで,PSBを導入できる可能性が示唆された.
【症例紹介】70歳代女性.夫と2人暮らし.要介護2.既往にSteinbrocker class Ⅲ相当の関節リウマチがあり,入院以前はトイレや更衣で夫の介助を必要としており,食事は左上肢を使用し自立していた.来院する1年前より巧緻性低下があり,箸やボタン操作が困難だった.5か月前に転倒してから歩行困難となり受診,頸椎症性脊髄症の診断となる.手術目的に当院へ入院し第2病日にC3-C6後方除圧固定術を施行し,第3病日にC5麻痺が出現した.
【作業療法評価(術後翌日)】ROM(右/左)は肩屈曲100/65,肩伸展45/35,肩外転90/90,肘屈曲75/100(可動性なし),前腕回内90/90,前腕回外90/90,手掌屈20/45,手背屈0/0.MMT(右/左)は肩屈曲4/1,肩伸展4/3,肩外転4/1,肩内転3/3,肩外旋4/1,肩内旋4/3,前腕回内4/4,前腕回外4/2.ADLはBarthel Index(以下;BI)で10点(排便10点),食事動作は,右上肢では肘関節拘縮により口元へのリーチが困難であり,左上肢挙上も困難なため全介助.主訴は「左手が動かない」,「誰かに食べさせてもらうご飯は美味しくない」とあり,悲観的な様子が見受けられた.
【介入の基本方針】本人より食事に対する思いが聞かれ,作業療法では食事動作向上に向けて作業療法アプローチを実践することとした.また左上肢の筋力低下に対して悲観的な様子も見受けられ,上肢機能訓練も並行して行い,上肢機能の向上も目指すこととした.
【作業療法実施計画】PSBの原理を利用して食事動作向上を目指す.また,食事場面での使用だけでなく,作業療法場面でも訓練として使用し,上肢筋力向上を促す.
【介入経過】第10病日よりPSBの作製を開始した.在宅での継続使用も視野に,点滴棒,セラバンド,滑り止めシートで簡易的に作製して調整を行った.左上肢が口元へ届くように肩屈曲,外転,外旋位で上肢を牽引し,肩伸展,内転,内旋動作を利用して上肢を下制させる運動を用いた結果,第17病日に一口大や固形食の自力摂取が可能となった.第23病日に自宅退院となり,本人のさらなる食事動作向上の希望もあったことから,訪問リハビリにて継続して食事動作訓練を行う方針となった.
【結果】 ROMは開始時と著変なく経過した.MMTは肩屈曲4/2,肩外転4/2,肩外旋4/2へ変化した.ADLはBIで40/100点(食事5点,トイレ5点,排尿10点,排便10点),食事動作はPSBを使用して左上肢にて一部自力摂取可能となった.本人からは「少しでも自分で食べられて嬉しい」と聞かれた.
【考察】頸髄症術後C5麻痺症例において,PSBの使用は食事動作向上の一助となった可能性がある.また,頸髄症術後C5麻痺を呈する原因は明らかになっていないが,今回短期介入にて上肢筋力向上の結果を得ることができた.以上からPSBを訓練に用いることは,上肢筋力回復の促進につながる可能性が示唆された.さらに,今回の症例は先行研究で示されているPSBの適応条件の範囲外であったが,残存機能を活用して代償することで使用可能であった.このことから,PSBの適応条件の範囲外であっても,残存機能をアセスメントして代償手段を活用することで,PSBを導入できる可能性が示唆された.