[PL-4-5] ポスター:援助機器 4背屈サポート型食事用自助具の再考
自助具づくりのあり方とは
【はじめに】頸髄損傷者において食具を把持するための自助具の形態は重要である.把持の形態によっては肩関節外転,内旋,肩甲骨の挙上といった非効率な動きを誘発し,肩の痛みの原因となりかねない.我々は今まで手関節の背屈が弱く,前腕回外位となりやすいC6A以上のレベルの場合には,市販の手関節サポーターにフセ企画のキャッチャーを付けたもので対応してきた.しかし,時間の経過とともに様々な問題点が浮かび上がり,今回これらを解決するため,企業の協力のもと再考し,新しい自助具を製品化したので紹介する.発表に際し利益相反はない.
【従来型の特徴と課題抽出】従来型は,背側と掌側に内蔵されたプラスティック素材のプレートで手関節背屈位を保持することができる市販のサポーターに,作業療法士が食具装着の為のキャッチャーと,ベルトに自分で装着ができるようリングを取り付け製作してきた.そして3指つまみに近い形となるように対象者に合わせ食具の角度を調整し,効率的な食事動作を実現してきた.その一方で以下の課題が明らかになった.①本体の素材が伸縮性のある薄いメッシュ素材で生地が弱く,破損しやすく縫製も行いにくい.②ベルトの構造により前腕の回外位が優位となり,刺す,すくう,口に運ぶなどの食具の操作時に支障をきたしやすい.③適切な装着には微調整が必要.④キャッチャーの交換には工具が必要.⑤マジックテープや生地の破損,汚れのいずれか1つでも発生した場合には新規の購入が必要.⑥修理は外来による作業療法士の対応が必要不可欠.⑦作製の際キャッチャーの位置や方向がセラピストによって差が生じ,以前のものを全く同じように再現することが難しい場合がある.以上の点を踏まえ再考した.
【作製経過と結果】まずは協力企業に製作目的,コンセプト,使用者の特徴などを伝え,製作する自助具のイメージの共有化を図った.次に本体の素材やサイズ,キャッチャーの取り付け,ベルトの構造と幅や長さについて検討した.検討に当たっては,今後の修理対応を誰もが簡単に行えるようシンプルな構造を目指し進めた.本体のベース部分の素材は手部にフィットする,手部の変形などが起こらない限り交換不要なものとなるように3mmの軟性ポリエチレンを使用した.長さは従来型の使用者に着用してもらい検討し決定した.加えてソフトな装着感と適度に洗浄して清潔感が保てるよう,通気性に優れた3Dファブリック素材のクッションパッドを,ベースの内側にマジックテープを付着し取り外しできるようにした.また通気性と軽量化を図るために,アライメントに影響しない場所に穴を開けた.ベルトは角菅を通して尺側から橈側へ締める構造とし,前腕の過度な回外が起きないよう工夫した.そして,長さ調整や交換ができるようにギボシボタンで取り外し可能なものにした.キャッチャーの固定はねじ止めにし,食具の固定の安定化を図るために根本は結束バンドで固定する方法とした.今後のメンテナンスの課題については,ベース部分を半永久的なものにし,修理頻度が多い箇所を,それぞれのタイミングで交換が行えるパーツタイプにしたことで解消することができた.
【まとめ】永続的に使用する自助具では今後のメンテナンスは必要不可欠なものである.自助具づくりのあり方としては,作業療法士の対応は最小限で,且つ修理前後で差が生じない誰もが行えるメンテナンスを念頭に考案することが重要であると考える.また企業との共同製作で素材や構造の決定には,製作目的,コンセプト,対象者のイメージの共有化が重要な鍵となると考える.今後は耐久性や利便性の検証を重ねていきたい.
【従来型の特徴と課題抽出】従来型は,背側と掌側に内蔵されたプラスティック素材のプレートで手関節背屈位を保持することができる市販のサポーターに,作業療法士が食具装着の為のキャッチャーと,ベルトに自分で装着ができるようリングを取り付け製作してきた.そして3指つまみに近い形となるように対象者に合わせ食具の角度を調整し,効率的な食事動作を実現してきた.その一方で以下の課題が明らかになった.①本体の素材が伸縮性のある薄いメッシュ素材で生地が弱く,破損しやすく縫製も行いにくい.②ベルトの構造により前腕の回外位が優位となり,刺す,すくう,口に運ぶなどの食具の操作時に支障をきたしやすい.③適切な装着には微調整が必要.④キャッチャーの交換には工具が必要.⑤マジックテープや生地の破損,汚れのいずれか1つでも発生した場合には新規の購入が必要.⑥修理は外来による作業療法士の対応が必要不可欠.⑦作製の際キャッチャーの位置や方向がセラピストによって差が生じ,以前のものを全く同じように再現することが難しい場合がある.以上の点を踏まえ再考した.
【作製経過と結果】まずは協力企業に製作目的,コンセプト,使用者の特徴などを伝え,製作する自助具のイメージの共有化を図った.次に本体の素材やサイズ,キャッチャーの取り付け,ベルトの構造と幅や長さについて検討した.検討に当たっては,今後の修理対応を誰もが簡単に行えるようシンプルな構造を目指し進めた.本体のベース部分の素材は手部にフィットする,手部の変形などが起こらない限り交換不要なものとなるように3mmの軟性ポリエチレンを使用した.長さは従来型の使用者に着用してもらい検討し決定した.加えてソフトな装着感と適度に洗浄して清潔感が保てるよう,通気性に優れた3Dファブリック素材のクッションパッドを,ベースの内側にマジックテープを付着し取り外しできるようにした.また通気性と軽量化を図るために,アライメントに影響しない場所に穴を開けた.ベルトは角菅を通して尺側から橈側へ締める構造とし,前腕の過度な回外が起きないよう工夫した.そして,長さ調整や交換ができるようにギボシボタンで取り外し可能なものにした.キャッチャーの固定はねじ止めにし,食具の固定の安定化を図るために根本は結束バンドで固定する方法とした.今後のメンテナンスの課題については,ベース部分を半永久的なものにし,修理頻度が多い箇所を,それぞれのタイミングで交換が行えるパーツタイプにしたことで解消することができた.
【まとめ】永続的に使用する自助具では今後のメンテナンスは必要不可欠なものである.自助具づくりのあり方としては,作業療法士の対応は最小限で,且つ修理前後で差が生じない誰もが行えるメンテナンスを念頭に考案することが重要であると考える.また企業との共同製作で素材や構造の決定には,製作目的,コンセプト,対象者のイメージの共有化が重要な鍵となると考える.今後は耐久性や利便性の検証を重ねていきたい.