[PM-2-3] ポスター:MTDLP 2生活行為向上マネジメントを用いて目標とする生活行為を獲得した脳卒中の一例
不安・うつ症状に着目して
【はじめに】
今回,左被殻出血を発症し,不安・うつ症状を呈した症例を担当した.不安・うつ症状はQOLを低下させる.在宅生活を目指す上で,不安・うつ症状の軽減は重要となる.生活行為向上マネジメント(MTDLP)はADL自立度やQOLが向上すると報告されている.また,不安・うつ症状の改善には,実現可能な目標設定を行い,回復段階に合わせて介入が推奨される.そこで,本症例に対して生活課題分析シートの要因分析をボードに掲示して可視化した介入を実施した.その結果,不安・うつ症状の軽減と目標とする生活行為を獲得し,在宅復帰できたため以下に報告する.本報告に関して本人の同意を得て実施した.
【症例紹介】
70歳代女性で都営団地の3階に娘と2人暮らしをしている.本症例は掃除にやりがいを持っていた.X日に左被殻出血発症し,急性期病院を経て,X+10日後,当院へ転院した.
【作業療法評価】
介入前は,FIM57点.Hospital Anxiety and Depression Scaleの Anxiety(HADS -A)16点,Depression(HADS -D)17点.Motor Activity Log(MAL)の Amount of Use(AOU)0.75点,Quality of Movement(QOM)0.67点であった.初回面接にて「早く家に帰りたい,掃除は継続して行いたい」という生活目標が挙がった.アセスメントシートから「3か月後,自宅で安全に身の回りの生活を行い,片手支持にてスティック掃除機で自室の掃除が出来る」を合意目標とした.MTDLPの自己評価は実行度3,満足度2であった.
【経過】
介入初期(X+10日~40日):X+20日よりMTDLPを開始した.右上下肢・体幹促通訓練,立位バランス訓練,ADL訓練(トイレ関連動作)を実施し,他職種に自主トレーニングの促しと獲得できた動作に対して正のフィードバックを依頼した.また,ADL動画の視聴からポジティブな声掛けを行った.X+40日時点でFIM89点.HADS-A15点,HADS-D14点で不眠・強い自宅退院願望,AOU1.58点,QOM1.67点,自己評価は実行度3,満足度2であった.
目標の可視化(X+41日~70日):X+47日より,生活課題分析シートの課題要因を抽出し,目標ボードを作成して床頭台に提示した.課題に対して「ある程度出来る」「1人で安全に出来る」の項目を表記し,自立度に応じてリハスタッフが印をつけた.介入初期の訓練に加え,IADLの掃除動作訓練を追加した.X+70日時点でFIM106点,HADS-A6点,HADS-D7点と不眠・自宅退院願望の軽減,AOU3.75点,QOM4点,自己評価は実行度と満足度共に8となった.
退院前(X+71日~108日):実環境を想定したADL・IADL訓練を実施した.自宅退院後,訪問リハ,通所リハを利用することとなり,生活行為申し送り表を作成した.
【最終評価】
介入の結果,車椅子自走→つたい歩き及び平地での杖歩行自立,FIMは57→110点になり臨床的最小重要変化量(MCID)の22点を上回った.HADS-Aは16→4点,HADS-Dは17→5点に改善した.AOUは0.75→4.3点,QOMは0.67→4.42点となりMCIDの1.0点を上回った.自己評価の実行度は3→9,満足度は2→9となった.
【考察】
本症例の結果から,生活課題分析シートにて抽出した目標の可視化は不安・うつ症状の軽減とMAL及びMTDLPの自己評価の改善に有効である可能性がある.
今回,左被殻出血を発症し,不安・うつ症状を呈した症例を担当した.不安・うつ症状はQOLを低下させる.在宅生活を目指す上で,不安・うつ症状の軽減は重要となる.生活行為向上マネジメント(MTDLP)はADL自立度やQOLが向上すると報告されている.また,不安・うつ症状の改善には,実現可能な目標設定を行い,回復段階に合わせて介入が推奨される.そこで,本症例に対して生活課題分析シートの要因分析をボードに掲示して可視化した介入を実施した.その結果,不安・うつ症状の軽減と目標とする生活行為を獲得し,在宅復帰できたため以下に報告する.本報告に関して本人の同意を得て実施した.
【症例紹介】
70歳代女性で都営団地の3階に娘と2人暮らしをしている.本症例は掃除にやりがいを持っていた.X日に左被殻出血発症し,急性期病院を経て,X+10日後,当院へ転院した.
【作業療法評価】
介入前は,FIM57点.Hospital Anxiety and Depression Scaleの Anxiety(HADS -A)16点,Depression(HADS -D)17点.Motor Activity Log(MAL)の Amount of Use(AOU)0.75点,Quality of Movement(QOM)0.67点であった.初回面接にて「早く家に帰りたい,掃除は継続して行いたい」という生活目標が挙がった.アセスメントシートから「3か月後,自宅で安全に身の回りの生活を行い,片手支持にてスティック掃除機で自室の掃除が出来る」を合意目標とした.MTDLPの自己評価は実行度3,満足度2であった.
【経過】
介入初期(X+10日~40日):X+20日よりMTDLPを開始した.右上下肢・体幹促通訓練,立位バランス訓練,ADL訓練(トイレ関連動作)を実施し,他職種に自主トレーニングの促しと獲得できた動作に対して正のフィードバックを依頼した.また,ADL動画の視聴からポジティブな声掛けを行った.X+40日時点でFIM89点.HADS-A15点,HADS-D14点で不眠・強い自宅退院願望,AOU1.58点,QOM1.67点,自己評価は実行度3,満足度2であった.
目標の可視化(X+41日~70日):X+47日より,生活課題分析シートの課題要因を抽出し,目標ボードを作成して床頭台に提示した.課題に対して「ある程度出来る」「1人で安全に出来る」の項目を表記し,自立度に応じてリハスタッフが印をつけた.介入初期の訓練に加え,IADLの掃除動作訓練を追加した.X+70日時点でFIM106点,HADS-A6点,HADS-D7点と不眠・自宅退院願望の軽減,AOU3.75点,QOM4点,自己評価は実行度と満足度共に8となった.
退院前(X+71日~108日):実環境を想定したADL・IADL訓練を実施した.自宅退院後,訪問リハ,通所リハを利用することとなり,生活行為申し送り表を作成した.
【最終評価】
介入の結果,車椅子自走→つたい歩き及び平地での杖歩行自立,FIMは57→110点になり臨床的最小重要変化量(MCID)の22点を上回った.HADS-Aは16→4点,HADS-Dは17→5点に改善した.AOUは0.75→4.3点,QOMは0.67→4.42点となりMCIDの1.0点を上回った.自己評価の実行度は3→9,満足度は2→9となった.
【考察】
本症例の結果から,生活課題分析シートにて抽出した目標の可視化は不安・うつ症状の軽減とMAL及びMTDLPの自己評価の改善に有効である可能性がある.