[PM-3-3] ポスター:MTDLP 3ギランバレー症候群を合併した高齢血液透析患者の退院支援
【はじめに】ギランバレー症候群(以下,GBS)は,自己免疫性機序による急性発症する多発性神経炎である.GBSに対する作業療法の報告例は散見されるが,GBSを合併した血液透析患者に対する作業療法の報告は少ない.今回,血液透析中GBS患者に生活行為向上マネジメントを用い支援した結果,自宅退院と透析通院の再開に繋がったため報告する.なお,発表に際し,本人に文書および口頭で説明し,同意を得ている.
【事例紹介】A氏は70歳代の男性である.現病歴はX年Y月Z日,高熱と下痢症状と下肢の脱力からA病院へ救急搬送されGBSと診断される.免疫グロブリン静注療法(以下,IVIg)を実施し,Y+2月に当院へ転院となった.既往歴に慢性腎不全(X-1年,当院で透析開始)がある.Hughesの重症度分類はGrade4,要介護度は4,GBS発症前のADLは自立していた.家族構成は妻と二人暮らしで,性格は亭主関白気質である.妻は協力的だが,精神的に不安定な面があった.医師から長期入院を勧められたが,妻の生活を不安視し退院を強く望んでいた.
【作業療法評価】本人の希望は「どんな形でもいいので身の回りの事ができるようになりたい」であった.MMTは体幹3,両上肢3,両下肢近位筋2・遠位筋1で,感覚は手袋靴下型の異常感覚があり,耐久性は低下していた.HDS-Rは22点,FIMは62点(運動29点,認知33点)でトイレ動作はオムツと尿器を併用していた.自宅環境はバリアフリーだが,トイレは狭小である.合意目標は「ひとりで排泄を行い,介護タクシーを利用して透析通院できる」とした.実行度・満足度は1であった.
【作業療法計画】GBSは強い負荷量の運動は末梢神経障害の増悪因子となり筋力低下のリスクがある(眞野行生/1991).A氏は週3回の血液透析を試行している点も考慮すると,治療的・代償的アプローチを並行していく必要があると考えた.OT計画は実施期間3ヵ月,頻度1回40分(透析日は20分),週5回とした.プログラムはROM運動,筋力増強運動,基本動作練習,ADL練習,車いす自走練習をOTとPTが実施する.病棟スタッフはトイレ動作を繰り返し練習する.各練習は運動量を把握調整し漸増していく.退院前にMSW,ケアマネジャーと住環境・サービス調整を行い,自宅退院と透析通院の再開を目指すこととした.
【経過】第1期(Y+2月)は易疲労性が顕著で,バイタルサインに注意しながら軽負荷運動から開始した.第2期(Y+3月)は車いす自走,側方移乗,臀部清拭を習得し,1人介助でトイレ動作が可能となった.過負荷となり始めていたため,適宜運動量指導を行った.第3期(Y+4月)は自宅トイレの移動を想定し,伝い歩き練習を開始した.また透析時の病院内移動を想定して,透析室までの移動やエレベーターの乗降練習を行った.またA氏の体調不良時に備え,妻へ介助指導を行い,在宅生活に対する不安は軽減した.
【結果】MMTは体幹・上肢4,下肢近位筋3,下肢遠位筋2+~3,FIMは93点(トイレ動作6点),伝い歩きは5m程可能となった.住環境・サービス調整し,自宅は車いす生活,透析通院は介護タクシーを利用し可能となった.自己評価は実行度6,満足度7へ向上した.退院後は訪問リハを継続し,6ヶ月後の調査では屋外歩行器歩行自立となった.
【考察】GBSにおけるリハは,筋力の改善を目的とした理学療法のみではなく,作業療法,心理的支持など,個々の患者の状態に応じた多面的なケアが重要である(ギランバレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2013).本事例は,IVIgの奏功に加え,疲労度に応じたリハ負荷量の調整,早期から代償手段の獲得,本人・妻への指導と住環境調整が自己評価の向上に繋がったと考える.
【事例紹介】A氏は70歳代の男性である.現病歴はX年Y月Z日,高熱と下痢症状と下肢の脱力からA病院へ救急搬送されGBSと診断される.免疫グロブリン静注療法(以下,IVIg)を実施し,Y+2月に当院へ転院となった.既往歴に慢性腎不全(X-1年,当院で透析開始)がある.Hughesの重症度分類はGrade4,要介護度は4,GBS発症前のADLは自立していた.家族構成は妻と二人暮らしで,性格は亭主関白気質である.妻は協力的だが,精神的に不安定な面があった.医師から長期入院を勧められたが,妻の生活を不安視し退院を強く望んでいた.
【作業療法評価】本人の希望は「どんな形でもいいので身の回りの事ができるようになりたい」であった.MMTは体幹3,両上肢3,両下肢近位筋2・遠位筋1で,感覚は手袋靴下型の異常感覚があり,耐久性は低下していた.HDS-Rは22点,FIMは62点(運動29点,認知33点)でトイレ動作はオムツと尿器を併用していた.自宅環境はバリアフリーだが,トイレは狭小である.合意目標は「ひとりで排泄を行い,介護タクシーを利用して透析通院できる」とした.実行度・満足度は1であった.
【作業療法計画】GBSは強い負荷量の運動は末梢神経障害の増悪因子となり筋力低下のリスクがある(眞野行生/1991).A氏は週3回の血液透析を試行している点も考慮すると,治療的・代償的アプローチを並行していく必要があると考えた.OT計画は実施期間3ヵ月,頻度1回40分(透析日は20分),週5回とした.プログラムはROM運動,筋力増強運動,基本動作練習,ADL練習,車いす自走練習をOTとPTが実施する.病棟スタッフはトイレ動作を繰り返し練習する.各練習は運動量を把握調整し漸増していく.退院前にMSW,ケアマネジャーと住環境・サービス調整を行い,自宅退院と透析通院の再開を目指すこととした.
【経過】第1期(Y+2月)は易疲労性が顕著で,バイタルサインに注意しながら軽負荷運動から開始した.第2期(Y+3月)は車いす自走,側方移乗,臀部清拭を習得し,1人介助でトイレ動作が可能となった.過負荷となり始めていたため,適宜運動量指導を行った.第3期(Y+4月)は自宅トイレの移動を想定し,伝い歩き練習を開始した.また透析時の病院内移動を想定して,透析室までの移動やエレベーターの乗降練習を行った.またA氏の体調不良時に備え,妻へ介助指導を行い,在宅生活に対する不安は軽減した.
【結果】MMTは体幹・上肢4,下肢近位筋3,下肢遠位筋2+~3,FIMは93点(トイレ動作6点),伝い歩きは5m程可能となった.住環境・サービス調整し,自宅は車いす生活,透析通院は介護タクシーを利用し可能となった.自己評価は実行度6,満足度7へ向上した.退院後は訪問リハを継続し,6ヶ月後の調査では屋外歩行器歩行自立となった.
【考察】GBSにおけるリハは,筋力の改善を目的とした理学療法のみではなく,作業療法,心理的支持など,個々の患者の状態に応じた多面的なケアが重要である(ギランバレー症候群,フィッシャー症候群診療ガイドライン2013).本事例は,IVIgの奏功に加え,疲労度に応じたリハ負荷量の調整,早期から代償手段の獲得,本人・妻への指導と住環境調整が自己評価の向上に繋がったと考える.