[PN-1-1] ポスター:地域 1新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における通所リハビリ利用者の身体・心理・社会参加状況の変化
はじめに
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的な広がりをみせ,日本では2020年4月7日には政府が7都府県に緊急事態宣言を発令し,4月16日にはそれが全国に拡大された.2020年3月27日に日本老年医学会・全国老人保健施設協会から施設職員や利用者に感染予防の注意喚起がされ,施設を自主休業したり自主的にを休む利用者も多かった.
今回,2020年4月16日から5月25日の緊急事態宣言発令中も自主的に通所リハを休まず利用していた対象者に対して,流行前(2019年12月から2020年2月)と流行初期(2020年7月から2020年12月)の身体・心理・社会参加状況の変化について検討することを目的に健康調査を実施した.
方法
研究参加者は兵庫県A市の通所リハ利用者140名を選択した.研究参加者は2019年12月から2020年2月の2ケ月間でアンケートに返答のあった者であり,そのうち,2020年4月16日から5月25日の緊急事態宣言発令中および解除後も通所リハを中断しなかった利用者97名に対して,2020年7月から2020年11月の4ケ月間に再度アンケートを実施した.通所リハを途中で中断した者7名を除いた90名を分析対象とした.対象者90名の要介護度は要支援Ⅰが50名,要支援Ⅱが40名であり,通所リハ利用回数は週に2回の利用者とした.
調査項目はBMI,基本チェックリスト,老年期うつ病尺度(GDS-S-J)社会関連性指標,社会活動性指標,食事形態,食品摂取多様性得点とした.
本研究は兵庫県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:220).
結果
参加者全体の平均年齢は80.9±7.5歳であった.流行前より流行初期の方が,基本チェックリスト(P<.001)とGDS-S-J(P<.05)の平均値が有意に高くなっていた.それ以外の項目値は有意差はみられなかった. 基本チェックリストの得点は,流行前は7.43±4.12点であったが,流行初期は8.38±3.94であり,流行初期で「フレイル該当」に相当する結果となった.基本チェックリストの下位項目は流行前より流行初期でうつ(P<.001)の平均値が有意に高かった.
考察
流行前と比べて流行初期は基本チェックリストとGDS-S-Jの得点において有意に高くなっていた.また,基本チェックリストの下位項目では「うつ」項目の得点において有意な高まりを認め,身体機能より精神面の問題が示唆された.
基本チェックリストの平均値は,流行前は8点以下であったが,流行初期は8点を超え「フレイル該当」に相当する結果となった.また,下位項目は流行前と比べて流行初期ではうつ項目で有意に点数が増加していた.本研究参加者が流行初期にフレイル該当に移行した要因として,身体的要因よりも心理・社会的要因との関連が示唆された.GirdharらのCOVID-19流行下での研究において,高齢者は身体面より精神面に問題が生じたと報告しており,本研究においても同様の知見が得られた.流行初期においても通所リハを継続していた利用者は,感染予防をしながら筋力強化訓練や歩行練習等の身体機能を維持向上する内容の訓練を実施しており,身体機能は保たれていたものと考える.一方で,本研究参加者はCOVID-19感染拡大にかかわらず,そもそも社会との関わりは限定的であったことが推察される.そうした中において,施設の環境が感染予防の観点から利用者間は一定の距離を保ち,利用者同士の関わりを極力避けるような対策が取られていたため,利用者間同士の交流の機会は減少し,研究参加者の心理・精神面の低下に繋がったものと考える.
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界的な広がりをみせ,日本では2020年4月7日には政府が7都府県に緊急事態宣言を発令し,4月16日にはそれが全国に拡大された.2020年3月27日に日本老年医学会・全国老人保健施設協会から施設職員や利用者に感染予防の注意喚起がされ,施設を自主休業したり自主的にを休む利用者も多かった.
今回,2020年4月16日から5月25日の緊急事態宣言発令中も自主的に通所リハを休まず利用していた対象者に対して,流行前(2019年12月から2020年2月)と流行初期(2020年7月から2020年12月)の身体・心理・社会参加状況の変化について検討することを目的に健康調査を実施した.
方法
研究参加者は兵庫県A市の通所リハ利用者140名を選択した.研究参加者は2019年12月から2020年2月の2ケ月間でアンケートに返答のあった者であり,そのうち,2020年4月16日から5月25日の緊急事態宣言発令中および解除後も通所リハを中断しなかった利用者97名に対して,2020年7月から2020年11月の4ケ月間に再度アンケートを実施した.通所リハを途中で中断した者7名を除いた90名を分析対象とした.対象者90名の要介護度は要支援Ⅰが50名,要支援Ⅱが40名であり,通所リハ利用回数は週に2回の利用者とした.
調査項目はBMI,基本チェックリスト,老年期うつ病尺度(GDS-S-J)社会関連性指標,社会活動性指標,食事形態,食品摂取多様性得点とした.
本研究は兵庫県立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号:220).
結果
参加者全体の平均年齢は80.9±7.5歳であった.流行前より流行初期の方が,基本チェックリスト(P<.001)とGDS-S-J(P<.05)の平均値が有意に高くなっていた.それ以外の項目値は有意差はみられなかった. 基本チェックリストの得点は,流行前は7.43±4.12点であったが,流行初期は8.38±3.94であり,流行初期で「フレイル該当」に相当する結果となった.基本チェックリストの下位項目は流行前より流行初期でうつ(P<.001)の平均値が有意に高かった.
考察
流行前と比べて流行初期は基本チェックリストとGDS-S-Jの得点において有意に高くなっていた.また,基本チェックリストの下位項目では「うつ」項目の得点において有意な高まりを認め,身体機能より精神面の問題が示唆された.
基本チェックリストの平均値は,流行前は8点以下であったが,流行初期は8点を超え「フレイル該当」に相当する結果となった.また,下位項目は流行前と比べて流行初期ではうつ項目で有意に点数が増加していた.本研究参加者が流行初期にフレイル該当に移行した要因として,身体的要因よりも心理・社会的要因との関連が示唆された.GirdharらのCOVID-19流行下での研究において,高齢者は身体面より精神面に問題が生じたと報告しており,本研究においても同様の知見が得られた.流行初期においても通所リハを継続していた利用者は,感染予防をしながら筋力強化訓練や歩行練習等の身体機能を維持向上する内容の訓練を実施しており,身体機能は保たれていたものと考える.一方で,本研究参加者はCOVID-19感染拡大にかかわらず,そもそも社会との関わりは限定的であったことが推察される.そうした中において,施設の環境が感染予防の観点から利用者間は一定の距離を保ち,利用者同士の関わりを極力避けるような対策が取られていたため,利用者間同士の交流の機会は減少し,研究参加者の心理・精神面の低下に繋がったものと考える.