第56回日本作業療法学会

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[PN-1] ポスター:地域 1

2022年9月16日(金) 12:00 〜 13:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-1-4] ポスター:地域 1福島県作業療法士会によるコロナ禍における県民の作業,健康支援の取り組み

川又 寛徳12五百川 和明12澄川 幸志12藤田 貴昭12 (1福島県立医科大学保健科学部作業療法学科,2福島県作業療法士会コロナ禍における県民の健康支援検討委員会)

【背景】新型コロナウイルス感染症は,またたく間に世界中に拡大した.わが国でも,感染拡大防止のため,いわゆる三密の回避や,外出自粛等の行動変容が要請され,学校生活や社会生活全般に大きな制限が加えられた.同じような状況で思い出されるのは,2011年に発生した東日本大震災および,原子力災害の経験であった.福島県はこの災害によって大きな被害を受け,福島県民(以下,県民)は,社会生活に大きな制限を受けた.これら社会生活の制限は,自分にとって大切な作業に関わる権利が侵害されている状態,つまり「作業的不公正」の状態であるととらえることができた.新型コロナウイルス感染症が流行しているコロナ禍においても,県民が東日本大震災時と同様の「作業的不公正」の状態に置かれることが危惧された.
【目的】本報告の目的は,コロナ禍において福島県作業療法士会(以下,県士会)が実践した,県民の作業,そして健康支援の取り組みを報告し,今後の課題について検討することである.
【経過】2020年3月中旬,演者らは県民が東日本大震災時と同様の「作業的不公正」の状態に置かれるのではないかという問題意識を持ち,県士会として県民の健康に貢献できることを検討した.検討に際して,日本作業療法士協会をはじめ,各県,各国の作業療法士協会のホームページを確認した.それらを参考に,福島県の状況に鑑み,演者間で県民に必要な健康情報を作業の視点で検討し,1.習慣・日課,2.役割・交流,3.運動・栄養,4.余暇・趣味,5.仕事・学習環境,6.休息・睡眠の6項目に整理した.以上をもとに,制限下においても,少しでも自分にとって大事な作業に関わり,その作業を通して健康を維持するためのポイントをまとめたリーフレットを作成し,そのリーフレットを活用し,地域の作業療法士,行政や保健師,マスコミを通して地域住民にアプローチする戦略を立てた.同年4月上旬,作成したリーフレットを県士会のホームページに掲載し,PDFで自由にダウンロードできるようにした.リーフレット公表と同時に,県士会員約1000名に対し,身近なところでリーフレットを活用してほしい旨,県士会のメーリングリストで連絡した.同年4月下旬,保健師等の関心が寄せられたことを受け,保健師等が,保健活動においてリーフレットを用いることができるよう,上述の6項目について詳細な解説を追加し,内容を補足する冊子の作成を開始した.同年5月下旬,完成した冊子とリーフレットを県内の保健福祉事務所,市町村保健センター,社会福祉協議会,新聞社などに対し,合計約100部を配布した.リーフレットで提案したポイントの一部が,県政広報番組で取りあげられた.また県内のある自治体保健師から,リーフレットと冊子に基づく住民に対する健康教室開催の依頼があり,講習会を開催した.
【まとめ】コロナ禍における作業を支援するため,県士会では県民に対して作業を通した健康支援を目的とするリーフレット,冊子の作成を行い,それらを活用して各種活動を行なった.この取り組みを通して,新型コロナウイルス感染症の収束後においてもさまざまな人や団体と協業することで作業を通して住民の健康を支援することができると考えられた.県内の作業療法士や保健師がリーフレットや冊子をどのように活用したか,県民に対する保健活動にどのように用いられたか検証することが今後の課題である.