第56回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-10] ポスター:地域 10

2022年9月17日(土) 14:30 〜 15:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-10-1] ポスター:地域 10認知症予防教室の効果の検討

参加者の意欲の分析から

林田 浩司1早坂 昇平2久保田 渚紗3福田 健一郎4 (1医療法人さざなみ 鈴木病院,2医療法人見松会 あきやま病院,3波佐見町役場長寿支援課,4医療法人栄寿会 真珠園療養所)

【はじめに】
 2006年の介護保険改正以降,市区町村による介護予防事業の取り組みが全国各地で開始されている.厚生労働省の調査(平成30年度)によると,全国での介護予防に資する住民主体の通いの場は年々増えており,認知症予防の場も年々増えている.我々も2018年度からA町において認知トレーニングを主体とした認知症予防教室(以下,教室)を実施しており,今回,高齢者に対する認知症予防プログラムの効果について,教室に対する姿勢や意欲から検討したため,以下に報告する.
【対象及び方法】
 対象はA町で開催されている教室に,開始時の2018年から2020年まで継続して参加している18名とした.内訳は男性4名,女性14名で平均年齢は73.3歳であった.教室は隔週で行なわれ,約90分実施している.内容は「ミニ講話」「動作性認知課題」「机上での認知課題」で構成され,教室終了時にホームワークとして認知課題を数題,配布している.評価方法としてファイブ・コグを用い,2018年および2020年に実施した.ファイブ・コグは高齢者用の集団認知機能検査として開発され,5つの認知課題から構成されており,杉山ら(2015)によって信頼性,妥当性が確認されている.併せて,2020年に自由記述式の質問紙調査も行ない,①教室に参加して効果があると感じることはどんなことですか,②継続して参加できている理由はなんですか,③「ミニ講話」「動作による認知症予防」「問題を解く認知症予防」のうち,どれが効果を感じますか,④教室に参加するようになって日常で変化したことはありますか,とした.なお,統計学的処理はStat Viewを使用し,Wilcoxonの符号付順位検定を行なった.対象者へは口頭にて説明し同意を得た.また,今調査による開示すべきCOIはない.
【結果】
教室は2年間で約40回実施し,対象者の平均参加回数は36.1回であった.認知機能の統計処理を行なった結果,2年後の認知機能は注意機能(p=0.04),記憶機能(p=0.03),言語機能(p=0.04)が有意に向上した.自由記述の回答を分析した結果,①については【物忘れが減った(3人)】,【脳が活性化した(3人)】が多く,②では【楽しい(8人)】,【みんなに会えて嬉しい(5人)】が多かった.③については【問題を解く認知症予防】,【どれも良い】の2つに回答が分かれた.④では【チャレンジする機会が増えた(4人)】,【楽しみが増えた(3人)】,【物忘れが減った(3人)】,【食事に関心を持つようになった(3人)】,【人との触れ合いを意識するようになった(2人)】であった.
【考察】
 今回の教室では認知機能が有意に向上し,また,自由記述の回答の結果,「楽しい」「人との触れ合い」が多くを占めた.山口ら(2010)は認知症予防において重要なのは何をするかではなく,どう取り組むかであると述べている.海馬の神経細胞の新生率は楽しく取り組むことで増加し(山口,2008),自発性も海馬の神経細胞の新生に関わっていることが報告されており(Cotmanら,2002),これらが隔週の実施にもかかわらず,今回の認知機能の向上に関係した可能性がある.さらに,山口ら(2010)は,人とコミュニケーションをとりながら活動を行なうことも重要としている.また,中高年の趣味で行なう知的活動と認知症発症の関連を調べたCarlsonら(2008)は,認知症進行遅延に効果があるのは活動に含まれる知的要素ではなく,社会性の要素であるとしており,人との触れ合いも奏効した可能性がある.