[PN-10-3] ポスター:地域 10自営する理容室へ理容師としての復職を果たした脳卒中事例に対する作業療法経験
【はじめに】
脳卒中事例への就労支援について,作業療法士は必要な要因を模索し各種連携を図りながら関わることが必要とされ,多数の事例も報告されている.しかし,自営業を営む脳卒中事例の就労支援に関する報告はほとんどない.今回,自営する理容室へ理容師として復職を果たした橋出血事例を担当したため,その経過を報告する.
【事例紹介】
60代男性,発症前は自宅の1階部分で理容室を営み,妻と2人暮らしであった.左橋出血を発症し,約4か月間回復期病院でリハビリテーション(以下,リハビリ)を受けて自宅退院した.退院時,生活動作は見守りで可能であったが,継続したリハビリを要するため当事業所の訪問看護によるリハビリ(以下,訪問リハ)を開始した.
【作業療法評価】
Barthel Index(以下,BI)は80点で,歩行と階段昇降,入浴に減点を認めた.身体機能はBrunnstrom-recovery-stage(以下,Brs)が右上肢IV,右手指III,右下肢IV,表在感覚は上下肢軽度鈍麻,深部感覚は右手指のみ中等度鈍麻であった.手指機能は,MP関節を中心に可動域制限と手背に著明な浮腫があり,握りこみ時に疼痛が出現した.ペットボトルの蓋の開閉も困難であった.手指機能に対して「上手く動かせる感じがしない」といった改善を諦めるような発言があった.
【作業療法経過】
回復期病院退院直後から,週に3回(作業療法2回,理学療法1回)各40分の訪問リハを開始した.作業療法では,介入1~2か月目は手指機能の改善を図った.この時,事例が能動的にリハビリに取り組めるように,手指の変化を確認できる動画や練習成果物等の視覚的フィードバックを活用することを心掛けた.また,それを事例と妻にて確認しながら自主練習を毎日行うように提案した.その結果,右手指の可動域改善と浮腫軽減を認め,握りこみ動作時の疼痛が軽減し,ハサミで紙を裁断することが出来た.この頃から,理容師としての復職を意識するようになった.介入3~4か月目は理容ハサミ操作練習を行い,復職に向けた作業療法計画を組み立てた.また,この時期には外出機会が増え,その際に理容室の馴染み客などから「はやく復職して欲しい」といった声が届くようになった.そして,理容師としての復職を本格的に検討し始めた. 介入5か月目は主治医に復職の許可を得るため,ケアマネジャーと病院ソーシャルワーカーと連携し,主治医に対して動画を用いた情報共有を行った.その結果,主治医から「素晴らしいです」といった前向きな返答を得ることが出来,発症前と同様に理容師として仕事復帰を果たすことが出来た.
復職時の身体機能はBrsで右上肢VI,右手指V,右下肢V,右上下肢の表在・深部感覚共に軽度鈍麻であった.右手指の可動域制限と浮腫は改善し,握りこみ動作での疼痛は消失した.理容ハサミも円滑に操作可能となった.また,BIは歩行に改善があり85点となった.
【考察】
本事例の経過を振り返ると,介入1~2か月目は1)上肢機能の改善と「右手は動く」という実感を得てもらったこと,介入3~4か月目は2)家族や馴染み客から復職を願う声が届いたこと,介入5か月目は3)主治医が復職に対して肯定的な姿勢となったことの3点が重要であり,多方面からの支援が功を奏したものと考えられる.脳卒中事例の復職には職場環境や地域における他者との関わり,産業医の有無等が大切とされているが,自営業においても類似する視点からの支援が必要であることが示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】本発表に際して本人に口頭と文書にて説明し,同意を得た.
脳卒中事例への就労支援について,作業療法士は必要な要因を模索し各種連携を図りながら関わることが必要とされ,多数の事例も報告されている.しかし,自営業を営む脳卒中事例の就労支援に関する報告はほとんどない.今回,自営する理容室へ理容師として復職を果たした橋出血事例を担当したため,その経過を報告する.
【事例紹介】
60代男性,発症前は自宅の1階部分で理容室を営み,妻と2人暮らしであった.左橋出血を発症し,約4か月間回復期病院でリハビリテーション(以下,リハビリ)を受けて自宅退院した.退院時,生活動作は見守りで可能であったが,継続したリハビリを要するため当事業所の訪問看護によるリハビリ(以下,訪問リハ)を開始した.
【作業療法評価】
Barthel Index(以下,BI)は80点で,歩行と階段昇降,入浴に減点を認めた.身体機能はBrunnstrom-recovery-stage(以下,Brs)が右上肢IV,右手指III,右下肢IV,表在感覚は上下肢軽度鈍麻,深部感覚は右手指のみ中等度鈍麻であった.手指機能は,MP関節を中心に可動域制限と手背に著明な浮腫があり,握りこみ時に疼痛が出現した.ペットボトルの蓋の開閉も困難であった.手指機能に対して「上手く動かせる感じがしない」といった改善を諦めるような発言があった.
【作業療法経過】
回復期病院退院直後から,週に3回(作業療法2回,理学療法1回)各40分の訪問リハを開始した.作業療法では,介入1~2か月目は手指機能の改善を図った.この時,事例が能動的にリハビリに取り組めるように,手指の変化を確認できる動画や練習成果物等の視覚的フィードバックを活用することを心掛けた.また,それを事例と妻にて確認しながら自主練習を毎日行うように提案した.その結果,右手指の可動域改善と浮腫軽減を認め,握りこみ動作時の疼痛が軽減し,ハサミで紙を裁断することが出来た.この頃から,理容師としての復職を意識するようになった.介入3~4か月目は理容ハサミ操作練習を行い,復職に向けた作業療法計画を組み立てた.また,この時期には外出機会が増え,その際に理容室の馴染み客などから「はやく復職して欲しい」といった声が届くようになった.そして,理容師としての復職を本格的に検討し始めた. 介入5か月目は主治医に復職の許可を得るため,ケアマネジャーと病院ソーシャルワーカーと連携し,主治医に対して動画を用いた情報共有を行った.その結果,主治医から「素晴らしいです」といった前向きな返答を得ることが出来,発症前と同様に理容師として仕事復帰を果たすことが出来た.
復職時の身体機能はBrsで右上肢VI,右手指V,右下肢V,右上下肢の表在・深部感覚共に軽度鈍麻であった.右手指の可動域制限と浮腫は改善し,握りこみ動作での疼痛は消失した.理容ハサミも円滑に操作可能となった.また,BIは歩行に改善があり85点となった.
【考察】
本事例の経過を振り返ると,介入1~2か月目は1)上肢機能の改善と「右手は動く」という実感を得てもらったこと,介入3~4か月目は2)家族や馴染み客から復職を願う声が届いたこと,介入5か月目は3)主治医が復職に対して肯定的な姿勢となったことの3点が重要であり,多方面からの支援が功を奏したものと考えられる.脳卒中事例の復職には職場環境や地域における他者との関わり,産業医の有無等が大切とされているが,自営業においても類似する視点からの支援が必要であることが示唆された.
【倫理的配慮,説明と同意】本発表に際して本人に口頭と文書にて説明し,同意を得た.