第56回日本作業療法学会

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ポスター

地域

[PN-11] ポスター:地域 11

Sat. Sep 17, 2022 3:30 PM - 4:30 PM ポスター会場 (イベントホール)

[PN-11-2] ポスター:地域 11訪問リハビリテーションにて他職種連携を図り,環境整備や適応訓練を実施することで早期にQOL改善が認められた一症例

川上 紘司1北山 朋宏1佐々木 夏美1 (1社会福祉法人 こうほうえん 錦海リハビリテーション病院 リハビリテーション技術部)

【はじめに】当院の訪問リハビリテーション(以下,訪問リハ)を導入の際,対象者やご家族,介護支援専門員(以下,CM),他職種と連携を図り,適時目標共有や情報交換を密に行った.訪問リハを介して,環境整備や適応訓練,家族指導等を行い,早期にQOL改善が認められた一症例について報告する.本報告に際し,当院倫理委員会及び本症例,ご家族に説明し同意を得ている.
【事例紹介】80代女性で要介護3.診断名:くも膜下出血,正常圧水頭症,脳血管性認知症,慢性心不全.当初他事業所の訪問リハを利用,日常生活動作(以下,ADL)改善あるが転倒リスクあり,ご家族の不安強く,終日利用の通所リハビリテーション(以下,DC)へと変更となる.しかし意欲低下がありDCは休み多く,再度ご家族の希望ありDCと併用し当院の訪問リハが利用開始となる.環境面,2階建1軒家,1階が居住空間,動線上には手すり等が以前より設置済.キーパーソンは同居の息子.
【評価】左片麻痺BrunnstromStage上下肢Ⅴ, MMT上下肢Ⅳ~Ⅴ,両膝関節可動域制限(+),感覚障害や疼痛なし.長谷川式簡易知能評価スケール20/30.BarthelIndex(以下,BI)60/100.食事・排泄自立,更衣一部介助,入浴はDC利用時実施.移動は車椅子自走,移乗自立.初期方針は,体調管理・適時環境整備行い,車椅子生活が安全に行えるとした.
【経過】ケアプランについてはCMを中心に適時目標共有し変更を行った.また介入時は,適時環境整備を行い,適応訓練や家族指導を中心に行った.1ヶ月目:ご家族が簡易浴槽を購入,自宅での入浴介助希望あり,方針変更し動作定着の為,訪問リハを週1回から2回へ変更,短期目標は簡易浴槽での入浴が行える,長期目標は既存浴室で入浴が行えるとした.2ヶ月目:終日DC利用定着とならず終了となり訪問リハが中心となるが,ご家族の介助で簡易浴槽入浴が可能となり短期目標は達成,今後は一緒に外出機会を増やしたいと意向があった.屋内自動ブレーキ付車椅子を使用していたが,普通型車椅子を提案・導入し車椅子自走,自動車移乗練習を行った.3ヶ月目:ご家族の見守りで自動車移乗が可能となり,屋内生活も安定してきた為,運動量維持の目的で短時間利用DCをご家族の自己送迎にて利用開始となった.また,環境整備を行い,既存浴室の入浴練習開始,ご家族の最小介助レベルで既存浴室入浴が可能となった.4ヶ月目:今後の意向を確認,玄関内段差昇降,車椅子昇降機を使用していたが,手すり付き昇降台,玄関外アプローチにも据え置きの横手すりを提案・導入した.手すりを使用し独力での昇降,歩行練習を行っていくとした.
【結果】 BI75/100.改善項目は,移乗,歩行,階段昇降,BIには汎化ないが,入浴も最小介助レベルとなった.外出機会が増え,自己送迎での短時間DC利用にもつながった.
【考察】対象者とご家族の意向が明確であった為,介入時,対象者の状態を確認し,介入方針が随時修正でき,課題共有を行うことができた.また,動作方法や福祉用具など環境整備を実場面でCMや福祉用具業者と協働し,時間経過による変化を捉えながら修正でき,効率的で安全な生活動作が短期間で可能になったと考える.2021年の介護報酬制度改訂では,福祉用具の貸与における作業療法士の参画が明記されている.また,金沢(2005)は,福祉住環境整備のセラピストの役割について,住宅改修および福祉用具導入意義の説明,予後予測,モニタリングと動作指導の必要性について述べている.在宅支援において,作業療法士は対象者の身体認知機能に合わせた専門性を幅広く活かすこと,対象者やご家族,他職種とコーディネーターとして積極的に地域連携を図っていくことが重要と考える.