第56回日本作業療法学会

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[PN-11] ポスター:地域 11

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-11-6] ポスター:地域 11笑いアプリケーションの活用によるストレス変化について

須崎 恭平2辻村 肇14滝本 将大1橋本 芳昭3松村 雅史1 (1大阪電気通信大学,2社会福祉法人 誠光福祉会,3株式会社 LASSIC,4びわこリハビリテーション専門職大学)

【はじめに】
我々のコミュニケーションに欠かせないものの一つに,笑顔がある.笑顔は,相手に安心と希望と活力を与える最強のコミュニケーションツールである.だが,近年の疫病による影響もあり人との交流が減少し,笑うことや会話など,顔の表情を動かす機会が減少している.笑いのストレス軽減効果は数多く報告されており1),笑う機会の減少によりストレスが蓄積しやすい状態となり,健康に悪影響を及ぼす可能性がある2).そこで,制限された生活でのストレス蓄積と顔の表情を動かす機会の減少に対し,ゲームアプリケーション(以下アプリ)「Smile Master」を使用しストレス軽減効果について検証することとした.
【対象と方法】
 対象者は6名(男性4名,女性2名,年齢は22歳〜82歳)で,事前に説明した後,アプリを実施してもらい,実施前後のストレス値を唾液アミラーゼモニターにて測定した.なお,アプリは辻村ら3)が開発した「Smile Master」を使用し,ストレス値は,ニプロ乾式臨床化学分析装置唾液アミラーゼモニターを使用し測定した.この研究をするにあたり,対象者より同意を得た上で本研究を実施した.本研究の内容と個人情報の取り扱いについては,大阪電気通信大学の承認を得て実施した.本研究に関するCOIはない.
【結果】
 ストレス値の全体の平均値はアプリ実施前後において,それぞれ60.5kIU/L,29.8kIU/Lであり,ストレス値の低下が認められた.参加者別においても,6名全員でストレス値の低下が見られ,低下率の平均は43.5%で,最高で58.2%(146kIU/L→61kIU/L),最低で25%(12kIU/L→9kIU/L)であった.
【考察】
 今回得られた結果は,先の辻村ら1)の報告を支持し,笑いのストレス軽減効果を示すものであると考えられる.対象者の年齢層も幅広かったが,若者から高齢者まで老若男女問わず一定の効果が得られた.近年,世界における笑いを用いた介入研究をまとめた報告4)では,笑い体験として,笑いヨガ(ラフターヨガ)という笑いとヨガを組み合わせた介入による研究が大半を占めているが,笑い体験の選択肢の一つとして,アプリ「Smile Master」の有用性が示された.
 今後は,サンプルサイズを大きくすることや,対照群を設けた前後比較研究をするなどし,アプリ「Smile Master」の更なる健康効果について調べていきたい.
【参考文献】
1)辻村 肇, 他:口腔咽頭音による笑いの長時間モニタリングとストレス低減効果.大阪電気通信大学 研究論集(自然科学編) 50,43-51,2015
2)津田 彰,他:ストレスはどのように健康を左右するのか その心理社会生物学的メカニズム.行動医学研究 7(2) :91-96,2001
3)辻村 肇,他:日常生活における笑いのアプリケーション開発 第一報.鳥取臨床科学研究会誌 13,2021
4)大平 哲也:笑いと身体的健康・疾病との関連についての近年の研究動向−2010年〜2020年の観察研究,介入研究を中心に−.笑い学研究 27,3-18,2020