第56回日本作業療法学会

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[PN-11] ポスター:地域 11

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-11-7] ポスター:地域 11未知の余暇活動の経験が与える影響

中田 梨紗子1宮崎 宏興1 (1いねいぶる たつの市地域活動・相談支援センター)

【序論】
日常生活を送る上で,バリアを感じることの多い身体障害者にとっては,余暇活動においても消極的となりがちである.特に未経験の余暇活動には物理的バリアや意識上の
バリアを感じやすいとも言われている.今回,脊髄損傷を受傷後,車いすでの生活となったA氏が,自然環境の中で行われる余暇活動に同行した.それまで未経験の活動に消極的であったA氏から,積極的に楽しむ様子がうかがわれた.筆者らは,新たな余暇活動への挑戦がA氏にどのような意識の変化をもたらすのか疑問に思った.
【目的】
今回,誰もが楽しめるように開発されたユニバーサルスタンド・アップ・パドルボード(以下,ユニバーサルSUP)や,チェアスキーに挑戦した身体障害者へ関与する機会を得た.新たな余暇活動に挑戦することは,その本人にどのような意識の変化をもたらすのか,また,どのような要因が影響するのか調査し考察する.
【事例紹介】
A氏.20代男性.4年前スノーボードでの転倒が原因で腰髄完全損傷(L1以下損傷).ADL自立.現在は受傷前から勤めている企業に復帰し就労中.妻と二人暮らし.なお,報告に対して事例の同意を得ている.
【方法】
ユニバーサルSUPとチェアスキー実施後にそれぞれインタビューを行い,その内容をKJ法でまとめた.
【結果】
2つのインタビューから①自然環境へのバリア,②社会環境へのバリア,③挑戦への妨げ,④大好きな余暇活動を続けたい,⑤メンターやピアの存在,⑥障害があっても楽しめる,⑦楽しむことに積極的になる,という概念が抽出された.また,これらの概念の下位項目として,①:自然はバリアが強い,雪原のバリア,海への否定的なイメージ②:スキー場の人工的なバリア,社会のバリア,既存の余暇活動に対するバリア③:タブー視されていること,生来のパーソナリティー④:チェアスキーを続けたい,大好きな余暇活動をやりたい,余暇活動の魅力,雪原を懐かしむ気持ち⑤:仲間の安心感,ピアから影響を受ける,ピアの心の支え,メンターから影響を受ける,チェアスキー講習会の一員となった⑥:障害があってもニュースポーツに挑戦できた,未経験の余暇活動を楽しめた⑦:習得に至るチャレンジ,不可能だと思っていたことが可能となった,やりたいことをやれる方法を探す,興味のある余暇活動をやりたい,が挙げられた.
【考察】
今回,脊髄損傷を受傷後,車いす生活となったA氏が初めて自然環境で余暇活動を行う場に同行することができた.バリアには物理的,制度的,文化情報的,意識上のバリアに分けられるが,海や雪山では,自然環境への物理的バリアが多く,「できない」イメージが先行しやりたいことに挑戦する気持ちが萎えるといった意識上のバリアとなったと考える.しかし,2つの余暇活動を行うにあたり障害の特性に合わせて道具をカスタマイズすることや,種目としてパラスポーツを選択したことで,物理的バリアを取り除けるように工夫を行った.これにより,障害があっても楽しめると感じることができたのではないかと考える.また,楽しむことに積極的な様子が見られたのはメンターやピアの存在が影響しており,これが意識上のバリアを減少させる要因になったのではないだろうか.未経験の余暇活動ができたことで,不可能だと思っていたことが可能になる,障害があっても新しいことに挑戦できる,という意識の変化に繋がり,継続的な参加に影響したと考えられる.