第56回日本作業療法学会

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[PN-11] ポスター:地域 11

2022年9月17日(土) 15:30 〜 16:30 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-11-8] ポスター:地域 11当院における病院から地域の移行に伴うリハビリテーション情報提供の課題についてのインタビュー調査

田代 徹1辰巳 茂樹1谷本 愛衣1高倉 明日香1 (1福岡リハビリテーション病院)

【はじめに】平成28年の診療報酬改定に伴いアウトカム評価が導入され,回復期リハビリテーション病棟の入院期間は短くなっている.それに伴いADLの回復に焦点を当てた関わりが中心となり,家事・外出・趣味・復職などの関わりは介護保険サービスや外来診療などを利用した支援で行われていると考えられる.そのため,入院中の退院計画は退院後の支援スタッフへの情報提供を見越して行われる必要があるが,先行研究では病院から地域へのtransitional careは困難であることが指摘されている1).今回,当法人内の居宅介護支援事業所と訪問看護ステーションのスタッフにインタビュー調査を行い,入院から在宅への移行に伴う情報提供についての現状や課題について調査をした.
【目的】本報告の目的は当院の地域移行の課題を明らかにし,その対策を検討することである.
【方法】対象は当院訪問事業所の作業療法士(以下OT),ケアマネージャー(以下ケアマネ),看護師に対して病院リハスタッフによるインタビューを行なった.インタビュー内容は先行文献を参考にインタビューガイドを作成した.インタビューは各職種別に行い,その内容を録画して文字に起こした.分析はSCAT(Step for Coding and Theorization)を用いて行い,理論的記述を行った.また,意味コードをSCATの理論記述を参考に各カテゴリーに分け,導き出される概念を抽出した.尚,本報告に関しては福岡リハビリテーション病院倫理審査委員会の承諾を得ている.
【結果】カテゴリーとして『職種の役割』『情報収集方法』『支援計画を立てる』『病院と地域の連携の課題』『連携促進のための対策』の5つのカテゴリーが抽出された.『職種の役割』では看護師とケアマネから生活視点の役割が述べられた.『情報収集方法』ではケアマネは多様な方法で情報収集を行い,OTと看護師は主にケアマネの情報を参照しながら情報収集を行なっていた.『支援計画を立てる』では支援計画書やケアプランを利用していた.『病院と地域の連携の課題』として,「在宅患者の現実への直面化」などの患者要因,「病院と地域の視点の違い」という人的要因,「退院支援の限界」という病院環境要因,「関係の未成熟による情報共有の阻害」などのスタッフ関係要因があった.『連携促進のための対策』として「早期の情報共有の重要性」や,「対面の情報共有による切れ目のない支援」など顔を合わせた関わりの必要性があった.
【考察】連携の課題として「患者要因」「人的要因」「病院環境要因」「スタッフ関係要因」が抽出された.「患者要因」では退院後の患者は病院と在宅の違いに失望する経験しており,情報提供が積極的に行われる必要性が指摘されている1).「人的要因」は教育などで病院スタッフの認識を変えていくことが必要だが2),「病院環境要因」では「退院支援の限界」があり,教育のみで病院スタッフがこの課題に視点を当てることは困難と考えられる.そのため,「スタッフ関係要因」にあるように病院と地域がそれぞれの役割を認識しながら,連携のための関係性を作るための取り組みが必要と考える.
【文献】
1) Chen L, Dongxia L, Chamberlain D, et all : Enablers and barriers in hospital-to-home transitional care for stroke survivors and caregivers: A systematic review. J Clin Nurs.1-22,2021
2) 岡本隆嗣,岡光孝,渡邊陽子,他:退院支援と退院後フォローアップ.総合リハ48(2)133-144,2020