[PN-2-3] ポスター:地域 2クライアントのニーズに寄り添った移乗方法の提案により外出が楽しみになった一事例
【はじめに】訪問リハビリテーション(以下, リハ)の役割として, 運動機能やADLのアプローチのみならず, 活動・参加に働きかけ, 生活空間の拡大, Quality of Lifeの向上を図ることが重視される. 重度の身体機能と知的障害により, リクライニング車椅子(以下, 車椅子)移乗への恐怖心が強く, 離床拒否に繋がっていた事例を担当した. クライアントのニーズに寄り添った移乗方法を検証し, 福祉用具を導入した結果, 離床拒否がなくなり, 対象者自身が外出という楽しみを見出すことができたため報告する. 発表に際し,本人・家族に同意を得た.
【事例紹介】30歳代後半の女性. 6歳で脳性麻痺(左片麻痺)と診断され, 36歳で上縦隔腫瘍を発症した. 複雑な説明の理解が難しく, 初めての経験に対する不安が強かった. 両親と同居中であり, 主介助者は母親で, 父親は日中仕事で不在だが介護に協力的であった. 本人は離床を拒否していたが, 両親は, 本人に楽しんで外出して欲しいと考えていた. 訪問看護, 訪問リハ, 通所リハ, 訪問診療を利用し, 車椅子, エアマットを使用していた. マンション住まいで, 物が多い環境であった.
【作業療法評価】身長165㎝, 体重60kgで大柄. 重度の左片麻痺に加え, 上縦隔腫瘍の影響で右上下肢にも軽度の麻痺を認めた. 左上肢と股関節に重度の拘縮, 脊柱の側弯を認め, 精神的な緊張や不安で左股関節の痙性が高まる傾向にあった. FIMは運動項目18点, 認知項目19点でADLは全介助であった. 体位変換や端座位は一人介助で可能も重介助で, 車椅子移乗は二人介助であった. 外出は週に2回の通所リハと2ヶ月に一度の受診のみであった.
【介入方法】重度の身体機能低下により, 車椅子移乗の介助量が増大していたが, 身体機能に見合った移乗介助が確立されず, 身体を持ち上げる無理な介助が継続されていた. その結果, 車椅子移乗に対する本人の恐怖感は増加し, 離床拒否が増えていた. 以上より, ヘルパーとの外出が可能となることを目標とし, 車椅子移乗の介助量が早期に軽減される必要があると考え, 福祉用具による代償的アプローチを行った.
【経過と結果】1. 代償方法の検証(介入当初〜1ヶ月):当初は介助量軽減と安全性を重視してリフト導入を検討したが, 設置スペースが十分でなく試供が難しいことから家族の受け入れが良くなかった. そこで, 現在の環境下でも試供が可能であったスライディングボードを訪問リハ時に使用したところ, 本人の恐怖心や不安感なく移乗ができ, すぐに導入に至った. 2. スライディングボードによる移乗練習(1〜2ヶ月):訪問リハ時に移乗練習を重ね, 自ら車椅子移乗を希望するようになった. 3. 家族・他職種への指導(2ヶ月〜):家族やヘルパーに対し, スライディングボードを使用した移乗方法と本人が安心する関わり方を伝達した. 結果, 介助者間で統一した移乗介助が可能となり, 外出に対して前向きな発言が増えた. 約半年後にヘルパーとの外出が実現し, 月1回の外出時の買い物や外食が本人の楽しみとなった.
【考察】福祉用具の選定において, 介護負担の軽減や身体機能の補完という観点だけでなく, 離床拒否の原因となっていた恐怖心や不安感, 本人や家族のニーズに寄り添った移乗方法を提案できたことが, 福祉用具の早急な導入や実生活における活用に繋がったと考えられる. 作業療法においては, その人にとって意味のある活動への参加に重点が置かれているが, 重度な身体機能により, 対象者自身が行いたい活動を見出せずにいた事例であった. 離床が活動や参加の促進のみならず, 対象者が行いたい活動を見つけるきっかけとなることから, 重度者への離床支援が重要であると考える.
【事例紹介】30歳代後半の女性. 6歳で脳性麻痺(左片麻痺)と診断され, 36歳で上縦隔腫瘍を発症した. 複雑な説明の理解が難しく, 初めての経験に対する不安が強かった. 両親と同居中であり, 主介助者は母親で, 父親は日中仕事で不在だが介護に協力的であった. 本人は離床を拒否していたが, 両親は, 本人に楽しんで外出して欲しいと考えていた. 訪問看護, 訪問リハ, 通所リハ, 訪問診療を利用し, 車椅子, エアマットを使用していた. マンション住まいで, 物が多い環境であった.
【作業療法評価】身長165㎝, 体重60kgで大柄. 重度の左片麻痺に加え, 上縦隔腫瘍の影響で右上下肢にも軽度の麻痺を認めた. 左上肢と股関節に重度の拘縮, 脊柱の側弯を認め, 精神的な緊張や不安で左股関節の痙性が高まる傾向にあった. FIMは運動項目18点, 認知項目19点でADLは全介助であった. 体位変換や端座位は一人介助で可能も重介助で, 車椅子移乗は二人介助であった. 外出は週に2回の通所リハと2ヶ月に一度の受診のみであった.
【介入方法】重度の身体機能低下により, 車椅子移乗の介助量が増大していたが, 身体機能に見合った移乗介助が確立されず, 身体を持ち上げる無理な介助が継続されていた. その結果, 車椅子移乗に対する本人の恐怖感は増加し, 離床拒否が増えていた. 以上より, ヘルパーとの外出が可能となることを目標とし, 車椅子移乗の介助量が早期に軽減される必要があると考え, 福祉用具による代償的アプローチを行った.
【経過と結果】1. 代償方法の検証(介入当初〜1ヶ月):当初は介助量軽減と安全性を重視してリフト導入を検討したが, 設置スペースが十分でなく試供が難しいことから家族の受け入れが良くなかった. そこで, 現在の環境下でも試供が可能であったスライディングボードを訪問リハ時に使用したところ, 本人の恐怖心や不安感なく移乗ができ, すぐに導入に至った. 2. スライディングボードによる移乗練習(1〜2ヶ月):訪問リハ時に移乗練習を重ね, 自ら車椅子移乗を希望するようになった. 3. 家族・他職種への指導(2ヶ月〜):家族やヘルパーに対し, スライディングボードを使用した移乗方法と本人が安心する関わり方を伝達した. 結果, 介助者間で統一した移乗介助が可能となり, 外出に対して前向きな発言が増えた. 約半年後にヘルパーとの外出が実現し, 月1回の外出時の買い物や外食が本人の楽しみとなった.
【考察】福祉用具の選定において, 介護負担の軽減や身体機能の補完という観点だけでなく, 離床拒否の原因となっていた恐怖心や不安感, 本人や家族のニーズに寄り添った移乗方法を提案できたことが, 福祉用具の早急な導入や実生活における活用に繋がったと考えられる. 作業療法においては, その人にとって意味のある活動への参加に重点が置かれているが, 重度な身体機能により, 対象者自身が行いたい活動を見出せずにいた事例であった. 離床が活動や参加の促進のみならず, 対象者が行いたい活動を見つけるきっかけとなることから, 重度者への離床支援が重要であると考える.