第56回日本作業療法学会

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[PN-2] ポスター:地域 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-2-4] ポスター:地域 2地域在住世帯の家事の分担とこれに関わる負担感・生活満足度に関する実態調査

岩崎 也生子1近藤 知子1 (1杏林大学保健学部作業療法学科)

【はじめに】家事は,人が生活し,家庭を維持して行く上で不可欠であり(Shannon,2020),作業療法においても地域での自立や,役割の獲得・維持において重要であると認識されてきた.家事の形態や,家事に対する価値観は,時代と共に変化するとされ,今日では,女性の就業率の増加,世帯の高齢化,単身世帯の増加(内閣府, 2017),テクノロジーの変化などにより,家事の担い手や家事の量が著しく変化している.家事に関しては,不平等感や(Artis, 2003),うつなどの精神的問題(Bird, 1999)を生じるなどの先行研究がある.しかし,現状で,家事の実態が十分に明らかにされているわけではない.家事の実態を知ることは,家事に関わる問題やニーズの抽出,家族間での連携の可能性など,作業療法士が効果的な家事支援を行う上で有用な情報源になり得る.そこで本研究では,家事の中でも,食事の準備,掃除,洗濯,買い物等の9つの作業の作業に焦点を当て,これらの作業の工程を明確にした上で,実施者と実施の際の負担感について調べ,ライフステージ,家事量の男女差,妻の就労状況,生活満足度,負担感との関連を明らかにした.
【方法】対象は,地域在住の健常者,約100世帯.家族構成・家事活動表,負担感,生活満足度に関する自記式質問紙調査を実施した.家事活動表の作成にあたっては,経験年数20年以上の作業療法士2名と家事の専門家2名にて,国際社会調査プログラム (Crompton et al. 2005)の家事分類を基に各家事の工程を細分化し,9課題72項目からなる調査用紙を作成した.分析は,1)ライフステージと家事量(個数),負担感,重要度,生活満足度の相違,2)男女別にみた家事量(個数)の相違,3)妻の職業と家事量(個数),負担感,重要度,生活満足度との相違,4)生活満足度,家事負担感と家事の量,家事分担について,記述的統計,t検定,一元配置分散分析,相関検定を行った(p<0.05).本研究は,杏林大学倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】57 世帯,179 名より回答が得られた(回収率57%).平均世帯人数は3.2人,平均年齢は36.8歳であった.ライフステージ別の内訳は,1)夫婦のみの世帯(11世帯,13%),2)子育て世帯(30世帯,55%),3)高齢者世帯(10世帯,19%)で,家事量に差はなく,夫婦のみ世帯に比べて高齢者世帯での負担感が強かった(p<0.05).妻の就労状況は,①フルタイム(21名,39%),②パートタイム(17名,31%),③専業主婦(15名,28%)で,フルタイムの女性の家事量はパートタイムや専業主婦世帯と比較し少なく,フルタイムの妻を持つ夫は家事の実施量が多くなる傾向があった(p<0.05).各世帯の平均家事個数は78±14.53個で,女性が多い事が確認された(男性19±17.85回,女性59±15.39回,p<0.05).生活満足度は,家事時間や家事量(個数)や家事への興味・重要度との相関はなく,役割分担の満足度との相関がみられた(r=0.353).家事全体の負担感は,興味との逆相関(r=-0.331-0.497)がみられた.
【考察】本研究では,家事を「見える化」した上で,実施個数を家事量として定量的に調査した.全体の家事量はライフステージ間で差はないが,負担感は高齢世帯で増加しており,この世帯への関与が求められる.性差では,妻の就業状況により夫との家事分担が進んでいるものの,全体的には女性の家事量が3倍近くあった.役割分担と生活満足度に相関がみられた事から,家事の負荷量の調整や,家族間での協業を視野に入れた介入が求められる可能性がある.