第56回日本作業療法学会

講演情報

ポスター

地域

[PN-2] ポスター:地域 2

2022年9月16日(金) 13:00 〜 14:00 ポスター会場 (イベントホール)

[PN-2-5] ポスター:地域 2認知症の人を介護する家族主介護者のエンパワメントを高めるための支援の検討

心理教育介入の予備的研究

菅沼 一平1瀬川 大2上城 憲司3岡田 進一4 (1京都橘大学,2大和大学,3宝塚医療大学,4大阪市立大学)

<はじめに>本研究では家族主介護者の介護に対するエンパワメントをアウトカムとし,心理教育の介入効果を検証することとした.<対象と調査項目>本学で開催している「家族介護教室」に参加した家族主介護者30名を対象とした.調査項目は,家族主介護者および被介護者の年齢,性別,続柄,同居人数,被介護者の1週間当たりのサービス利用数,認知症の診断を受けてからの期間(月),介護期間(月),被介護者の行動と心理症状(Behavioral Psychological Symptoms of Dementia :以下,BPSD)の頻度を評価するDementia Behavior Disturbance Scale 13項目版(DBD13)を調査項目に挙げた.アウトカムとするエンパワメントの調査については,認知症の人の家族介護者のためのエンパワメント評価尺度(Empowerment Assessment Scale for Principal Family Caregivers of Persons with Dementia:以下,EASFCD)を使用して調査した.EASFCDは質問紙の尺度で,【因子1:介護への否定的感情】【因子2:介護の知識・技術に関する自己効力感】【因子3:介護に対する意識・結果・期待】【因子4:介護へ肯定的感情】【因子5:介護者との関係性】【因子6:相談相手の有無と情動的サポート】の6因子33項目の質問項目で構成される.各質問に対する回答は,「とてもそう思う(4点)」-「全くそう思わない(1点)」の4件法である.合計132点満点であり,点数が高いほど家族主介護者がエンパワメントされている状態を示す.調査期間は,2019年8月1日から12月31日までとした.<介入>心理教育プログラムは1セッションにつき座学30分,グループワーク90分の合計120分として,合計4セッション行った.グループワークでは,1グループにつき,家族主介護者4~5人,専門職が1~2名とした.専門職がファシリテーターとなり,介護で負担に感じていることやBPSDへの対応について討議した. 4週間に1回1セッション実施し,16週間(4か月)で4セッションの介入すべてが終了することとした.<研究デザイン>研究開始1か月前の事前説明会で,調査項目を記した質問紙への記入を依頼した(1次調査).次に,研究開始時に同様の質問紙調査を実施した(2次調査).介入期間16週間を経て,同様の質問紙を参加者へ郵送し,調査を実施した(3次調査).1次調査と2次調査の期間を「ベースライン期」,2次調査と3次調査の期間を「介入期」としてEASFCD総得点と各因子得点の推移を見た.<分析>第1次調査,第2次調査,第3次調査におけるEASFCD各因子の得点および総得点に対し,1元配置分散分析後,多重比較検定を行った.<倫理的配慮>大和大学保健医療学部倫理委員会の承認を得た(承認番号49).対象者に対しては,口頭および文書にて,調査の目的,個人情報保護の方針等について説明し,同意と承諾を得た.<結果>最終的な分析対象者は24名であった.介入期において【因子2:介護の知識・技術に関する自己効力感】(p=0.039)と【因子4:介護への肯定的感情】(p=0.002)の得点が有意に向上し,EASFCD総得点(p=0.000)においても有意な向上を示した.<考察>心理教育のグループワークでピアカウンセリング効果を得ながら,同時に,他家族主介護者の介護上の工夫などの話を聞くことで,新たな知識や気づきを得て,介護に向けて肯定的な変化をもたらしたと考える.また,グループワークで,他家族主介護者や専門職の意見や助言が在宅介護における実践の動機づけとなり,自己効力感の向上につながったと推察する.<結語>以上の作用から,家族主介護者はエンパワー状態へ兆し見せ,EASFCDの総得点が向上した.