[PN-3-5] ポスター:地域 3地域在住高齢者を対象とした作業療法実践としての単回介護予防事業前後における,生活満足度の変化と関連要因
【はじめに】介護予防・日常生活支援総合支援事業では,地域における介護予防の取組を強化するため,通いの場等へのリハビリテーション専門職等の関与を促している.先行研究では,作業療法分野での地域在住高齢者の健康や幸福を促進する集団プログラムが開発され,意味ある作業への参加促進がQOLを向上させることが報告されている.しかし,いずれのプログラムもセッション回数が多く,前期高齢者を対象とした意欲の高い集団の報告にとどまっている.そのため,COVID-19禍で頻回な集団プログラムの開催が困難となった現状で,単回参加や対象者の設定をせず同様に効果が見込める健康増進作業療法プログラムが明らかになれば,通いの場で作業療法士が実践可能なプログラムの一助になると期待される.
【目的】地域在住高齢者を対象とした,作業療法実践の単回プログラムの検討と,生活満足度に与える影響を明らかにする.
【方法】介護予防センターへ通う地域在住高齢者を対象に, 福島県作業療法士協会作成「おうち時間見直してみませんか?」のパンフレットを使用し約1時間の講座を実施した.パンフレットにある作業療法的視点の説明,作業バランス自己診断(以下,SAOB),および活動シートの実施を演者が解説した.調査は,講座開始時に基本属性(年齢,性別,老研式活動能力指標の社会的ADL4項目)と生活満足度100点法を,講座中にSAOB,講座終了時に日頃の活動満足度尺度の測定,ならびに講座プログラムの評価(興味の有無,理解度,良し悪し,実生活で役立つか)を4件法で行った.追跡調査として講座3ヶ月後に,生活満足度100点法,SAOB,日頃の活動満足度尺度,ライフイベントの有無を調査した.また以下の6項目(生活を振り返る機会,パンフレットの振り返り,SAOBや活動シートを実施したか,時間の使い方に変化があったか,活動シートの9項目を意識したか)を4件法で調査した.本研究は,東京都立大学研究倫理委員会より承認を受けた.講座実施時と追跡調査時の各項目を比較するとともに,それらの変化量とその他変数との関係を分析した.
【結果】対象者は35名(年齢平均79.2±6.8歳,男性20%)であった.老研式活動能力指標の社会的ADL4項目平均は3.4±0.8点,生活満足度平均74.9±15.9点,日頃の活動満足度平均14.8±4.4点であった.プログラム評価の最頻値は,いずれも4であった.生活満足度と活動満足度の前後比較において有意差は認められず,活動満足度の変化量とSAOBのマイナス型には中等度の負の相関が認められた(r-0.456,p<0.05).また,追跡調査のSAOBや活動シートをやる機会(r0.349),活動シートの項目意識(r0.369),ライフイベント(r-0.359)と生活満足度の変化量は相関上で有意傾向が見られた(p<0.1) .
【考察】プログラムについて,内容の評価は高く単回でも分かり易い内容だったと考える.本研究は,プログラムが生活満足度に与える効果を明らかにすることであったが,前後比較で有意な差を示さなかった.これは,対象に満足度が上昇した群と下降した群が混在していた可能性が考えられた.満足度の変化量との相関分析の結果から,このような講座を実施する際は,SAOBにおいてマイナス型となる対象者には注意が必要であり,対象者の特定にSAOBが有用であると考える.したがって,マイナス型の対象者に対しては,行政と連携し,講座への参加を促すよりもセンター内の活動で義務・願望となる活動を提供するなどの対応が望ましいと考えられた.また,活動シートを宿題とする等の工夫により,単回でも効果のある講座となる可能性が示唆された.今回の結果から,SAOBや活動シートの実施と活動シートの9項目を生活で意識するよう強調すべきだと考えられた.
【目的】地域在住高齢者を対象とした,作業療法実践の単回プログラムの検討と,生活満足度に与える影響を明らかにする.
【方法】介護予防センターへ通う地域在住高齢者を対象に, 福島県作業療法士協会作成「おうち時間見直してみませんか?」のパンフレットを使用し約1時間の講座を実施した.パンフレットにある作業療法的視点の説明,作業バランス自己診断(以下,SAOB),および活動シートの実施を演者が解説した.調査は,講座開始時に基本属性(年齢,性別,老研式活動能力指標の社会的ADL4項目)と生活満足度100点法を,講座中にSAOB,講座終了時に日頃の活動満足度尺度の測定,ならびに講座プログラムの評価(興味の有無,理解度,良し悪し,実生活で役立つか)を4件法で行った.追跡調査として講座3ヶ月後に,生活満足度100点法,SAOB,日頃の活動満足度尺度,ライフイベントの有無を調査した.また以下の6項目(生活を振り返る機会,パンフレットの振り返り,SAOBや活動シートを実施したか,時間の使い方に変化があったか,活動シートの9項目を意識したか)を4件法で調査した.本研究は,東京都立大学研究倫理委員会より承認を受けた.講座実施時と追跡調査時の各項目を比較するとともに,それらの変化量とその他変数との関係を分析した.
【結果】対象者は35名(年齢平均79.2±6.8歳,男性20%)であった.老研式活動能力指標の社会的ADL4項目平均は3.4±0.8点,生活満足度平均74.9±15.9点,日頃の活動満足度平均14.8±4.4点であった.プログラム評価の最頻値は,いずれも4であった.生活満足度と活動満足度の前後比較において有意差は認められず,活動満足度の変化量とSAOBのマイナス型には中等度の負の相関が認められた(r-0.456,p<0.05).また,追跡調査のSAOBや活動シートをやる機会(r0.349),活動シートの項目意識(r0.369),ライフイベント(r-0.359)と生活満足度の変化量は相関上で有意傾向が見られた(p<0.1) .
【考察】プログラムについて,内容の評価は高く単回でも分かり易い内容だったと考える.本研究は,プログラムが生活満足度に与える効果を明らかにすることであったが,前後比較で有意な差を示さなかった.これは,対象に満足度が上昇した群と下降した群が混在していた可能性が考えられた.満足度の変化量との相関分析の結果から,このような講座を実施する際は,SAOBにおいてマイナス型となる対象者には注意が必要であり,対象者の特定にSAOBが有用であると考える.したがって,マイナス型の対象者に対しては,行政と連携し,講座への参加を促すよりもセンター内の活動で義務・願望となる活動を提供するなどの対応が望ましいと考えられた.また,活動シートを宿題とする等の工夫により,単回でも効果のある講座となる可能性が示唆された.今回の結果から,SAOBや活動シートの実施と活動シートの9項目を生活で意識するよう強調すべきだと考えられた.