[PN-3-8] ポスター:地域 3マスク着脱自助具作製により外出頻度の増加を支援した訪問リハビリテーションの事例
【はじめに】関節リウマチ診断後より約12年経過している対象者(以下CL)を訪問作業療法にて担当した.CLは両側上肢のリーチ範囲の制限,手指巧緻運動障害により,新型コロナウイルス予防のための不織布マスク着用が自力で行えず,外出頻度が減少していた.本CLに対し,マスク着脱のための自助具を作製したことで,マスク着脱動作が自立し,外出頻度の増加につながったため報告する.本報告に際してCLから同意を得ている.また,COI関係にある企業等はない.
【事例紹介】CLは80代女性であり,独居生活をしていた.介護保険は要介護3を取得している.X-12年に関節リウマチ,シェーグレン症候群と診断され,長年病院で通院リハビリテーション(温熱療法と機能訓練)を利用していたが,自宅生活動作の改善のため,訪問看護ステーションからのリハビリテーションへ移行.X年Y月訪問作業療法(1/W)開始となる.
【作業療法評価】CLのADLは食事動作とトイレ動作は自立していたが,両側上肢のリーチ範囲の制限や筋力低下,手指巧緻運動障害により,入浴動作や起床時の整容動作,更衣動作に介助が必要であり毎日ヘルパーを利用していた.自宅内外歩行は独歩であった.外出は,新型コロナウイルス流行前はデパートや近所の店での買い物などで頻繁に行っていたが,新型コロナウイルス流行後マスク着用が必須となり,元々持っていた2連かぎ型フック付リーチャー(以下,リーチャー)では自身でマスク着用ができず,外出頻度が減少していた.CLからは「マスクが着けられず,好きな時間に外出できない」との話が聞かれ,朝のヘルパーにマスク装着をしてもらえる午前中のみ外出をしているとのことであった.マスク装着後のズレは自身で直しにくく,不織布マスクの形が崩れないようマスク装着型のプラスチックインナーマスクを使用していた.マスクを外す操作はリーチャーにて実施可能であった. CLはプラスチックマウスシールドやフェイスシールドの使用は望んでおらず,見た目が気にならない一般的な不織布マスクの使用を希望していた.身体機能は,自動ROM(度,右/左)肩関節屈曲40/90,肘関節屈曲100/95,肘関節伸展-60/-80,手関節背屈は30/40で強直.両側ともに顔面,耳へのリーチ不可.両側手指尺側変形,母指ボタン穴変形があり細かいものをつまむ操作が困難であった. MMTは両側上肢2~3レベルであった.
【介入経過・結果】今回,CLのリーチ範囲と手指巧緻運動を補う,マスク着脱自助具を考案した.アルミ丸棒でマスクのゴム紐が引っ掛かるよう加工した二股フックを,軽量な竹の支柱の左右に接着したものを作製.装着操作方法はインナーマスクを付けた不織布マスクのゴム紐を始めに左右の二股フックに掛け,竹の支柱で一側ずつ耳にかけることとした.適宜CLの操作を評価し,竹の支柱の太さや二股フックの向き,角度を調整した.Y+2月に完成した自助具をCLに提供し,操作の自主練習を依頼.翌週には約1分半でマスクを装着する操作が行えるようになり,マスクを外す操作も竹の支柱部分で可能となった.CLからは「自由に外出できるようになった」と笑顔で話が聞かれ,外出頻度の増加がみられた.
【考察】新型コロナウイルスの流行により現代社会において「外出時のマスク着用」という新たな習慣が求められている.今回,CLの希望を踏まえ,CLに適した自助具の作製,提供をしたことで,「好きな時間に外出する」という作業が再獲得でき,CLの生活の質の向上を支援できたのではないかと示唆された.
【事例紹介】CLは80代女性であり,独居生活をしていた.介護保険は要介護3を取得している.X-12年に関節リウマチ,シェーグレン症候群と診断され,長年病院で通院リハビリテーション(温熱療法と機能訓練)を利用していたが,自宅生活動作の改善のため,訪問看護ステーションからのリハビリテーションへ移行.X年Y月訪問作業療法(1/W)開始となる.
【作業療法評価】CLのADLは食事動作とトイレ動作は自立していたが,両側上肢のリーチ範囲の制限や筋力低下,手指巧緻運動障害により,入浴動作や起床時の整容動作,更衣動作に介助が必要であり毎日ヘルパーを利用していた.自宅内外歩行は独歩であった.外出は,新型コロナウイルス流行前はデパートや近所の店での買い物などで頻繁に行っていたが,新型コロナウイルス流行後マスク着用が必須となり,元々持っていた2連かぎ型フック付リーチャー(以下,リーチャー)では自身でマスク着用ができず,外出頻度が減少していた.CLからは「マスクが着けられず,好きな時間に外出できない」との話が聞かれ,朝のヘルパーにマスク装着をしてもらえる午前中のみ外出をしているとのことであった.マスク装着後のズレは自身で直しにくく,不織布マスクの形が崩れないようマスク装着型のプラスチックインナーマスクを使用していた.マスクを外す操作はリーチャーにて実施可能であった. CLはプラスチックマウスシールドやフェイスシールドの使用は望んでおらず,見た目が気にならない一般的な不織布マスクの使用を希望していた.身体機能は,自動ROM(度,右/左)肩関節屈曲40/90,肘関節屈曲100/95,肘関節伸展-60/-80,手関節背屈は30/40で強直.両側ともに顔面,耳へのリーチ不可.両側手指尺側変形,母指ボタン穴変形があり細かいものをつまむ操作が困難であった. MMTは両側上肢2~3レベルであった.
【介入経過・結果】今回,CLのリーチ範囲と手指巧緻運動を補う,マスク着脱自助具を考案した.アルミ丸棒でマスクのゴム紐が引っ掛かるよう加工した二股フックを,軽量な竹の支柱の左右に接着したものを作製.装着操作方法はインナーマスクを付けた不織布マスクのゴム紐を始めに左右の二股フックに掛け,竹の支柱で一側ずつ耳にかけることとした.適宜CLの操作を評価し,竹の支柱の太さや二股フックの向き,角度を調整した.Y+2月に完成した自助具をCLに提供し,操作の自主練習を依頼.翌週には約1分半でマスクを装着する操作が行えるようになり,マスクを外す操作も竹の支柱部分で可能となった.CLからは「自由に外出できるようになった」と笑顔で話が聞かれ,外出頻度の増加がみられた.
【考察】新型コロナウイルスの流行により現代社会において「外出時のマスク着用」という新たな習慣が求められている.今回,CLの希望を踏まえ,CLに適した自助具の作製,提供をしたことで,「好きな時間に外出する」という作業が再獲得でき,CLの生活の質の向上を支援できたのではないかと示唆された.